最弱の英雄
一章 15話 「自己紹介と名前決め」
『それはよかったよ、じゃあまずは、お互い自己紹介しようか』
と声の主が言った瞬間、またしてもライトに急激な眠気が襲ってきた。
「な、なんだ…また眠く…」
『あぁ、安心してくれていいよ、ちょっと君の意識をこっちに持ってくるだけだから』
意味不明な事を言う声の主に反論する間もなく、ライトは眠気に負け、眼を閉じた。
次にライトが眼を開けた場所は、辺りに何もない真っ白な場所だった。
「ど、どこだここは…」
「ここは簡単に言うと、ボクが作った精神世界だよ」
急にライトの後ろから声がしたので、振り向いてみると、そこに居たのは白い肌に長く白い髪を持つライトと同い年くらいの女性だった。
女性はライトと目があうと薄く笑い手を上げて
「やぁ、ようこそ、ボクの世界へ。 歓迎するよ、井綱 雷斗」
「お、お前…まさか、声の奴か? 」
「”声の奴”か、なかなか面白い呼び名だね、そうだよ、ボクが君に話しかけていた声の正体だ、驚いたかな? 」
「あぁ、まさかお前が女だったとは思わなかったぜ」
「ふふふ、ちょっと予想した答えとは違ったけど、驚いてくれたならよかったよ」
口に手を当て上品に笑った後、女性は「さて…」と前置きをして
「自己紹介、だったね」
急に真面目な雰囲気になったのでライトも気を引き締める
「あぁ、お前が何者なのかを知りたい」
「…いいよ、教えてあげよう、まず初めに言うけど、今からボクが言うことは全て本当の事だから、できれば疑わないでほしい」
「? あ、あぁ、分かった」
「ではまず、ボクの名前だが、名前は持っていない、趣味も特技もない、性別は見ての通り女性だよ」
「………は?」
「疑わないでほしい」と言うからにはどんな事を言われるのか、と身構えていたが、まかの言葉にライトは唖然とするしかなかった。
「名前が無いって…ふざけてんのか? それとも、俺なんかには名乗る名前は無いってことか?」
「言ったはずだよ井綱 雷斗、ボクが言うことは全て本当の事だ、ボクには名前が与えられてないんだよ」
ライトの強気な言葉に女性は真面目にライトの眼をしっかり見て答える、ライトはその言葉に偽りは無いと悟った。
「…どうやら分かってくれたようだね、じゃあ次は君の番だよ」
「あぁ、俺は井綱 雷斗だ」
この場に沈黙の時間が流れる、ライトの自己紹介を微笑みながら待っていた女性はどんどんその顔を困惑した顔に変えて
「……あ、あれ? それだけかい? 」
「しょうがないだろ、自己紹介なんてする友達居なかったんだよ、学年が上がるごとにある最初の自己紹介だけが俺がクラスで喋る最初で最後の機会だったんだ」
それを聞いた女性は苦笑いをして
「そ、それは嫌な思い出だね…」
「あぁ、特にクラスで地位のある奴なんかは誰かが自己紹介してる時でさえ喋りやがるからな、人前で緊張して声が小さくなる奴なんか何も聞こえずに先生から「ゴメンね、もうちょっと大きな声でお願いできるかな?」て言われる可哀想な奴が居たんだ、それが俺だ」
「やっぱり君だったのかい…」
「それにな、あいつら…」
「も、もういいから! 聞いてる方も悲しくなってくるよ」
手を前に出し慌てながら言う女性にライトは正気に戻り、先程の会話へと話へと戻す
「えっと、そんな訳で俺の自己紹介は以上だ」
「うん…もう何も言わないよ、さて、じゃあ次はお互いに聞きたい事を話し合おうか」
「質問タイムか」
「うん、じゃあまずは君からボクに質問していいよ」
「よし、じゃあ…お前は何者なんだ? なんで俺に話しかけてきた?」
「まぁその質問が来るのは分かってたよ、まずは、ボクが何者なのかについてだけど、簡単に言うと、ボクは君の”力”そのものなんだ」
「…は? 力ってどういう事だよ」
「言った通りだよ、ボクは君の能力…”電撃”の能力だ」
「電撃…? 」
ライトは彼女が何を言っているのか理解出来なかった、いや、頭では理解出来てはいるのだ、つまりこの彼女は、自分はライトが神を名乗る老人から与えられた能力だという事を言っているのだ、簡単な事だが理解するのは難しい、何故なら、彼女が言った事を信じるという事は
「お前…人間じゃないのか? 」
そう口にした瞬間、一瞬だが彼女の顔が悲しそうな顔をしたのをライトは見逃さなかったが、口には出さなかった。
彼女はすぐに表情を元に戻し
「気づいてなかったのかい? 君の頭に直接話しかける事ができて、君をこのような空間に連れてくる事が出来る者が、人間なわけが無いだろう?」
「なら…俺にあの光景を見せてたのは…」
「あの光景?」
「とぼけんなよ、俺に元居た世界で死んだ時の光景を見せてたのはお前じゃないのか?」
ライトは女性が「ボクは君の能力だ」と言った時から、ライトに死んだ時の事を見せて居たのは目の前の女性だと思っていた。
だが目の前の女性の反応は思っていた物とは全然違っていた、女性は眼を大きくして驚いていた。
「今…君は、向こうの世界で”死んだ”と言ったのか?」
「あ、あぁ、そんで死んだ後に神を名乗る人から能力貰ってこの世界に来たんだよ、聞いてねぇのか?」
「ボ、ボクは、君が能力を間違った使い方をしないように見張る為と君の”能力”としてサポート出来るようにと生み出されただけだよ」
「え、そうなの?」
意外な答えにライトは唖然とする、ライトはこれまでこの女性と普通に会話してるように見えたが、常に警戒していたのだが、それは無意味だったようだ。
「でも、それなら君が能力を使おうとした時にあんなに取り乱していたのも納得出来るな…」
「あぁ、どうやら俺は死んだ時の事がトラウマになっちまってるらしいんだ、それが電気による死だったから余計にな」
「ちなみに、その死因について聞いても構わないかな…? も、もちろん、言いたくないなら別に構わないが」
「スタンガン二個で電流を浴びせ続けられた事による感電死」
思い出しただけで吐き気がする事なのに、それを口に出した瞬間、またあの光景がフラッシュバックする、なんとか吐き気がするのを堪えながら目の前の女性を見ると、女性はすごく驚いた顔をしていた。
「ま、まさかそこまでとは思わなかったよ…話してくれてありがとう」
「あぁ…思い出すだけでめっちゃキツイから、もうこの話は勘弁してくれよな」
「もちろんだよ、ボクもそこまで鬼じゃない」
「サンキューな、そんじゃ、次はお前の番だぞ、質問あるか?」
「うん、じゃあ1つだけ…」
ライトはどんな事を聞かれるのか身構えた、女性はライトを真っ直ぐ見つめて
「君はボクを…”電撃”の能力を使って人を傷つけようとはしないかい?」
「どういう事だ?」
「言葉の通りだよ、君は、与えられたこの能力を使って、罪のない人を傷つけたりはしないと誓えるかい?」
確かにいきなり超能力を渡されたら、誰かを傷つけようと思う奴も居るだろう、そして、1度誰かを傷つけてしまったら、そこからは歯止めが効かなくなる、そしてやがては、あの忌々しい男のような殺人鬼に成り果ててしまうだろう、だから、ライトはこの質問をされた時、なんだそんなことか、と思った。
何故なら、ライトはこの能力を渡された時点で、この能力をどのように使うかを決めていたからだ、だからライトは笑って答える
「あぁ、誓うよ、俺は絶対にあんな殺人鬼にはならない、誰かを護る為に、この能力を使う」
そう答えると、女性はライトが見た中で1番の笑顔で
「それは、よかった」
その笑顔に、ライトは思わず見惚れてしまっていた。
「さて…もう自己紹介は終わりにしようか、君がどんな人間なのかを知る事が出来たしね」
「あぁ、そうだな、それじゃあ、これからよろしく頼む」
ライトが握手をしようと手を前に出すと、女性も同じく手を前に…出さなかった
「悪いけど、この空間ではまだ握手は出来ないよ」
「ど、どういう…」
言葉を言い切る前に、また急激な眠気が襲ってきた、そしてライトはそれに抗う事ができずに、眼を閉じた。
「………」
ライトが眼を覚ますと、もう朝日が見えて明るくなっていた。
「あいつ…急に戻しやがって…どういうつもりだよ…」
そんな愚痴をこぼしていると、突然ライトの右腕が凄まじい光を放った、その眩しさにライトは思わず眼を瞑ってしまう、そして、眼を開けると、目の前には先程見たばかりの人物が立っていた。
その人物は薄く微笑むと
「やぁ、驚いたかい?」
「あ、当たり前だろ…お前、外に出れたのかよ」
「いろいろと条件があってね、もうその条件もクリアしたから、自由に外に出れるのさ」
「へぇ…だから握手しなかったのか」
「うん、どんな反応するか気になってね」
悪びれもなく悪戯が成功した子供のように笑う女性に、ライトは先程のように手を前に出す
「これからよろしくな、えっと……やっぱり名前が無いと不便だぞ」
「え…今更名前かい? でもそんな事言われても無いものは無いしね……そうだ、君が考えてくれないかな?」
「え⁉︎ なんで俺が⁉︎」
「ボクが居ないと君は能力を使えないんだよ?つまりは君に能力を与えたのはボクでもあるんだよ、ボクだけ君に何かを与えるのは不公平だとは思わないかい?」
「そんな強引すぎだろ…」
「聞こえないなぁ〜」
わざとらしく両耳に手を当て笑いながら言う女性にライトは溜息をついて真剣に名前について考える、考える為にふと上を向くと青空が広がっていた。
「空か…何考えてるか分からないって所は似てるかもな」
雨が降ったり、雷が鳴ったりと、空の事は誰にも予想が出来ず、何を考えているか分からない、そして、何を考えているか分からないのは、彼女にとってはピッタリだ。
ライトは微笑み、まだ耳を塞いでいる白髪の女性に声をかける。
「おーい、思いつい…」
「聞こえないなぁ〜」
またしても先程と同じく聞こえないフリをする女性にライトはイラっとするが、ここは1つ仕返しをしてやろうと思い、悪い笑みを浮かべる
「あーあ、せっかく名前考えたのになー、聞こえてないならしょうがないなー、もうこの際だから男っぽい名前でも文句は言われないかなー」
ライトがそう言った瞬間、女性は耳から手を離し、慌てながら
「す、すまない! ちょっと悪戯したかっただけで…その…出来れば女の子っぽい名前にしては貰えないだろうか!」
思った以上に慌てた様子の女性にライトは笑いながら
「分かってるよ、ちょっとした仕返しだ、ちゃんとした名前なら考えたよ、気に入らなかったら言ってくれよ?」
「分かった、どんな名前なんだい?」
ライトは頬を掻きながら
「なんか照れくさいな…えっと、”ソラ”ってのはどうだ?」
「…………………………」
「あ、あれ? 気に入らなかったか?」
無言の女性にライトは不安になるが、女性は小さく何かを呟いている
「……ソラ……ソラ……ソラ……ソラか」
何度も確かめるように同じ言葉を繰り返す女性は、次には笑顔になって
「ソラか、気に入ったよ、これからボクの名前はソラだ!」
どうやら気に入ったようでライトはホッとする、そして、女性…ソラはライトに向かって手を前に出す
「改めて、これからよろしく頼むよ、ライト」
微笑みながら言うソラにライトも微笑み、同じように手を前に出し
「あぁ、こちらこそよろしくな、ソラ!」
握手をした。
「ん…? もう朝日が見えてるって事は……」
そこまで考えてライトはとんでもない事に気づく
「やばい! アイリスが心配しちまう!」
その後もうすっかり朝になっていて、ライトとソラは慌てて宿に戻ったら、必死になってライトを捜していたらしいアイリスに見つかり、ライトはアイリスにすごく叱られ、それを見ていたソラは大爆笑していた。
どうやらアイリスはライトが居ない事に本気で焦ったらしく、宿にもう一泊泊まる事にしていたらしい。
それを聞いたライトはアイリスにソラの事を話すのを忘れてしまい、ライトとソラは部屋へと戻り二度寝をした。
と声の主が言った瞬間、またしてもライトに急激な眠気が襲ってきた。
「な、なんだ…また眠く…」
『あぁ、安心してくれていいよ、ちょっと君の意識をこっちに持ってくるだけだから』
意味不明な事を言う声の主に反論する間もなく、ライトは眠気に負け、眼を閉じた。
次にライトが眼を開けた場所は、辺りに何もない真っ白な場所だった。
「ど、どこだここは…」
「ここは簡単に言うと、ボクが作った精神世界だよ」
急にライトの後ろから声がしたので、振り向いてみると、そこに居たのは白い肌に長く白い髪を持つライトと同い年くらいの女性だった。
女性はライトと目があうと薄く笑い手を上げて
「やぁ、ようこそ、ボクの世界へ。 歓迎するよ、井綱 雷斗」
「お、お前…まさか、声の奴か? 」
「”声の奴”か、なかなか面白い呼び名だね、そうだよ、ボクが君に話しかけていた声の正体だ、驚いたかな? 」
「あぁ、まさかお前が女だったとは思わなかったぜ」
「ふふふ、ちょっと予想した答えとは違ったけど、驚いてくれたならよかったよ」
口に手を当て上品に笑った後、女性は「さて…」と前置きをして
「自己紹介、だったね」
急に真面目な雰囲気になったのでライトも気を引き締める
「あぁ、お前が何者なのかを知りたい」
「…いいよ、教えてあげよう、まず初めに言うけど、今からボクが言うことは全て本当の事だから、できれば疑わないでほしい」
「? あ、あぁ、分かった」
「ではまず、ボクの名前だが、名前は持っていない、趣味も特技もない、性別は見ての通り女性だよ」
「………は?」
「疑わないでほしい」と言うからにはどんな事を言われるのか、と身構えていたが、まかの言葉にライトは唖然とするしかなかった。
「名前が無いって…ふざけてんのか? それとも、俺なんかには名乗る名前は無いってことか?」
「言ったはずだよ井綱 雷斗、ボクが言うことは全て本当の事だ、ボクには名前が与えられてないんだよ」
ライトの強気な言葉に女性は真面目にライトの眼をしっかり見て答える、ライトはその言葉に偽りは無いと悟った。
「…どうやら分かってくれたようだね、じゃあ次は君の番だよ」
「あぁ、俺は井綱 雷斗だ」
この場に沈黙の時間が流れる、ライトの自己紹介を微笑みながら待っていた女性はどんどんその顔を困惑した顔に変えて
「……あ、あれ? それだけかい? 」
「しょうがないだろ、自己紹介なんてする友達居なかったんだよ、学年が上がるごとにある最初の自己紹介だけが俺がクラスで喋る最初で最後の機会だったんだ」
それを聞いた女性は苦笑いをして
「そ、それは嫌な思い出だね…」
「あぁ、特にクラスで地位のある奴なんかは誰かが自己紹介してる時でさえ喋りやがるからな、人前で緊張して声が小さくなる奴なんか何も聞こえずに先生から「ゴメンね、もうちょっと大きな声でお願いできるかな?」て言われる可哀想な奴が居たんだ、それが俺だ」
「やっぱり君だったのかい…」
「それにな、あいつら…」
「も、もういいから! 聞いてる方も悲しくなってくるよ」
手を前に出し慌てながら言う女性にライトは正気に戻り、先程の会話へと話へと戻す
「えっと、そんな訳で俺の自己紹介は以上だ」
「うん…もう何も言わないよ、さて、じゃあ次はお互いに聞きたい事を話し合おうか」
「質問タイムか」
「うん、じゃあまずは君からボクに質問していいよ」
「よし、じゃあ…お前は何者なんだ? なんで俺に話しかけてきた?」
「まぁその質問が来るのは分かってたよ、まずは、ボクが何者なのかについてだけど、簡単に言うと、ボクは君の”力”そのものなんだ」
「…は? 力ってどういう事だよ」
「言った通りだよ、ボクは君の能力…”電撃”の能力だ」
「電撃…? 」
ライトは彼女が何を言っているのか理解出来なかった、いや、頭では理解出来てはいるのだ、つまりこの彼女は、自分はライトが神を名乗る老人から与えられた能力だという事を言っているのだ、簡単な事だが理解するのは難しい、何故なら、彼女が言った事を信じるという事は
「お前…人間じゃないのか? 」
そう口にした瞬間、一瞬だが彼女の顔が悲しそうな顔をしたのをライトは見逃さなかったが、口には出さなかった。
彼女はすぐに表情を元に戻し
「気づいてなかったのかい? 君の頭に直接話しかける事ができて、君をこのような空間に連れてくる事が出来る者が、人間なわけが無いだろう?」
「なら…俺にあの光景を見せてたのは…」
「あの光景?」
「とぼけんなよ、俺に元居た世界で死んだ時の光景を見せてたのはお前じゃないのか?」
ライトは女性が「ボクは君の能力だ」と言った時から、ライトに死んだ時の事を見せて居たのは目の前の女性だと思っていた。
だが目の前の女性の反応は思っていた物とは全然違っていた、女性は眼を大きくして驚いていた。
「今…君は、向こうの世界で”死んだ”と言ったのか?」
「あ、あぁ、そんで死んだ後に神を名乗る人から能力貰ってこの世界に来たんだよ、聞いてねぇのか?」
「ボ、ボクは、君が能力を間違った使い方をしないように見張る為と君の”能力”としてサポート出来るようにと生み出されただけだよ」
「え、そうなの?」
意外な答えにライトは唖然とする、ライトはこれまでこの女性と普通に会話してるように見えたが、常に警戒していたのだが、それは無意味だったようだ。
「でも、それなら君が能力を使おうとした時にあんなに取り乱していたのも納得出来るな…」
「あぁ、どうやら俺は死んだ時の事がトラウマになっちまってるらしいんだ、それが電気による死だったから余計にな」
「ちなみに、その死因について聞いても構わないかな…? も、もちろん、言いたくないなら別に構わないが」
「スタンガン二個で電流を浴びせ続けられた事による感電死」
思い出しただけで吐き気がする事なのに、それを口に出した瞬間、またあの光景がフラッシュバックする、なんとか吐き気がするのを堪えながら目の前の女性を見ると、女性はすごく驚いた顔をしていた。
「ま、まさかそこまでとは思わなかったよ…話してくれてありがとう」
「あぁ…思い出すだけでめっちゃキツイから、もうこの話は勘弁してくれよな」
「もちろんだよ、ボクもそこまで鬼じゃない」
「サンキューな、そんじゃ、次はお前の番だぞ、質問あるか?」
「うん、じゃあ1つだけ…」
ライトはどんな事を聞かれるのか身構えた、女性はライトを真っ直ぐ見つめて
「君はボクを…”電撃”の能力を使って人を傷つけようとはしないかい?」
「どういう事だ?」
「言葉の通りだよ、君は、与えられたこの能力を使って、罪のない人を傷つけたりはしないと誓えるかい?」
確かにいきなり超能力を渡されたら、誰かを傷つけようと思う奴も居るだろう、そして、1度誰かを傷つけてしまったら、そこからは歯止めが効かなくなる、そしてやがては、あの忌々しい男のような殺人鬼に成り果ててしまうだろう、だから、ライトはこの質問をされた時、なんだそんなことか、と思った。
何故なら、ライトはこの能力を渡された時点で、この能力をどのように使うかを決めていたからだ、だからライトは笑って答える
「あぁ、誓うよ、俺は絶対にあんな殺人鬼にはならない、誰かを護る為に、この能力を使う」
そう答えると、女性はライトが見た中で1番の笑顔で
「それは、よかった」
その笑顔に、ライトは思わず見惚れてしまっていた。
「さて…もう自己紹介は終わりにしようか、君がどんな人間なのかを知る事が出来たしね」
「あぁ、そうだな、それじゃあ、これからよろしく頼む」
ライトが握手をしようと手を前に出すと、女性も同じく手を前に…出さなかった
「悪いけど、この空間ではまだ握手は出来ないよ」
「ど、どういう…」
言葉を言い切る前に、また急激な眠気が襲ってきた、そしてライトはそれに抗う事ができずに、眼を閉じた。
「………」
ライトが眼を覚ますと、もう朝日が見えて明るくなっていた。
「あいつ…急に戻しやがって…どういうつもりだよ…」
そんな愚痴をこぼしていると、突然ライトの右腕が凄まじい光を放った、その眩しさにライトは思わず眼を瞑ってしまう、そして、眼を開けると、目の前には先程見たばかりの人物が立っていた。
その人物は薄く微笑むと
「やぁ、驚いたかい?」
「あ、当たり前だろ…お前、外に出れたのかよ」
「いろいろと条件があってね、もうその条件もクリアしたから、自由に外に出れるのさ」
「へぇ…だから握手しなかったのか」
「うん、どんな反応するか気になってね」
悪びれもなく悪戯が成功した子供のように笑う女性に、ライトは先程のように手を前に出す
「これからよろしくな、えっと……やっぱり名前が無いと不便だぞ」
「え…今更名前かい? でもそんな事言われても無いものは無いしね……そうだ、君が考えてくれないかな?」
「え⁉︎ なんで俺が⁉︎」
「ボクが居ないと君は能力を使えないんだよ?つまりは君に能力を与えたのはボクでもあるんだよ、ボクだけ君に何かを与えるのは不公平だとは思わないかい?」
「そんな強引すぎだろ…」
「聞こえないなぁ〜」
わざとらしく両耳に手を当て笑いながら言う女性にライトは溜息をついて真剣に名前について考える、考える為にふと上を向くと青空が広がっていた。
「空か…何考えてるか分からないって所は似てるかもな」
雨が降ったり、雷が鳴ったりと、空の事は誰にも予想が出来ず、何を考えているか分からない、そして、何を考えているか分からないのは、彼女にとってはピッタリだ。
ライトは微笑み、まだ耳を塞いでいる白髪の女性に声をかける。
「おーい、思いつい…」
「聞こえないなぁ〜」
またしても先程と同じく聞こえないフリをする女性にライトはイラっとするが、ここは1つ仕返しをしてやろうと思い、悪い笑みを浮かべる
「あーあ、せっかく名前考えたのになー、聞こえてないならしょうがないなー、もうこの際だから男っぽい名前でも文句は言われないかなー」
ライトがそう言った瞬間、女性は耳から手を離し、慌てながら
「す、すまない! ちょっと悪戯したかっただけで…その…出来れば女の子っぽい名前にしては貰えないだろうか!」
思った以上に慌てた様子の女性にライトは笑いながら
「分かってるよ、ちょっとした仕返しだ、ちゃんとした名前なら考えたよ、気に入らなかったら言ってくれよ?」
「分かった、どんな名前なんだい?」
ライトは頬を掻きながら
「なんか照れくさいな…えっと、”ソラ”ってのはどうだ?」
「…………………………」
「あ、あれ? 気に入らなかったか?」
無言の女性にライトは不安になるが、女性は小さく何かを呟いている
「……ソラ……ソラ……ソラ……ソラか」
何度も確かめるように同じ言葉を繰り返す女性は、次には笑顔になって
「ソラか、気に入ったよ、これからボクの名前はソラだ!」
どうやら気に入ったようでライトはホッとする、そして、女性…ソラはライトに向かって手を前に出す
「改めて、これからよろしく頼むよ、ライト」
微笑みながら言うソラにライトも微笑み、同じように手を前に出し
「あぁ、こちらこそよろしくな、ソラ!」
握手をした。
「ん…? もう朝日が見えてるって事は……」
そこまで考えてライトはとんでもない事に気づく
「やばい! アイリスが心配しちまう!」
その後もうすっかり朝になっていて、ライトとソラは慌てて宿に戻ったら、必死になってライトを捜していたらしいアイリスに見つかり、ライトはアイリスにすごく叱られ、それを見ていたソラは大爆笑していた。
どうやらアイリスはライトが居ない事に本気で焦ったらしく、宿にもう一泊泊まる事にしていたらしい。
それを聞いたライトはアイリスにソラの事を話すのを忘れてしまい、ライトとソラは部屋へと戻り二度寝をした。
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