3人の勇者と俺の物語

穴の空いた靴下

174章 長期的に続くMMORPGはある程度プレイヤー側の性質に左右されてしまうと思う

 「ちょっと皆さんゲームの話で盛り上がるのもいいですが、
 我々には今回の件全体の事実確認をするという大切な仕事があるので、
 そちらを先に勧めていただけますか?」

 ユウキが呆れ気味に議論を本題に戻す。

 「ああ、ああ。そうだったねちょっと僕も興奮してしまった。実世界とワールドクリエイターをリンクさせるってのはかなりエキサイトしてしまう内容だったもんで……」

 「ごめんごめん、僕もこういう話を他人としっかりするなんて想像してなかったから、楽しくてつい。
 それで、まぁ、僕がやったことが君たちの世界に影響を与えたことは申し訳ないと思っている。
 プログラムに融通がなかったのも申し訳なく思う。送られてきてくれたエネルギーも本当に助かった。
 重ね重ね感謝と謝意しかない」

 深々と頭を下げてそう話す、高位の神に近い存在とは言え腰が低い。
 実るほど頭を垂れる稲穂かな……かく有りたいものである。

 「しかしデルス君達の世界の人々はすごいね! 
 他の世界でもここまでのエネルギーを供給できたところはないよ!
 一番多いところでも核融合システムの開発に成功して恒星間航行しているような世界でもデルス君の世界の10分の1程度だからね。
 ぶっちゃけちゃうとデルス君の世界からエネルギーだけですでにアイツら駆除しなくても3000万年くらいはエネルギー危険域にならない計算だからね!」

 「そ、そんなに膨大なエネルギー量なんですか!? 
 核融合って俺の認識だと夢のような世界なんですけど……」

 ワタルは近未来SF物が結構好きなので食いついていく。

 「自分たちで全く自覚がないんだけどね、そのエネルギーに満たされた世界だからこそワールドクリエイターみたいなシステムが動くのかもしれない……」

 「そうそう、あれもすごいよね。世界を作り出す。確かに僕のプログラム達は君たちに手を貸したかもしれないけど君たちの内部に秘めたエネルギーと可能性は君たち自身で持っているものだからね。
 しかも素晴らしいことにその構造というかエネルギーを生み出す力をワールドクリエイター内に生まれた生命達も皆持っているんだ!
 これはとんでもないことだよ! ワールドクリエイターが現れてからのエネルギー産出力は天文学的な勢いで跳ね上がっている。
 だからそれを作ったデルス君には感謝してもしたりないよ!」

 「本当ですか!? それは知らなかった……」

 「つまり本当に生命体を作り出しているってことか……デルスはなんであんなシステムを構築できたんだ?」

 ケイズの疑問も最もだ、明らかなオーバーテクノロジーとしか言いようがない。

 「いやー、実は気がついたら出来ていたんだよね……
 0から理論構築しろって言われても今はできないと思う……
 むしろ【中央】が働きかけたってことは?」

 「いや、それはない。それはデータとしてハッキリと残っている。
 デルス君になんらかの関与をした形跡はない」

 「神が降りて来たってやつですかねー……」

 「不思議な事もあるもんだ……」

 「だーかーらーすぐに話しが横道にそれないで下さい!
 デルスさんの世界の落とし前をどうつけるか話し合わないといけないでしょうが!」

 ユウキさんちょいオコ。

 「はははは、どうだいケイズ、君から端を発した問題だ。まず君の気持ちを聞きたい」

 「正直今は情報を開示せずとも少しづつ【中央】と人々の垣根がなくなっていけばいいなと思うようになりました。エイベス殿の人となりを知ってあまり急速に摩擦を作ることがいいことでは無いように思えてきました」

 「ありがとう。そう言ってもらえるのが一番嬉しいな。
 僕としてはもういっそいろんな世界をつなげてみんなでごちゃごちゃ楽しくしたい。
 忘れていた他者とのつながりがこんなに心地の良いものだとは、
 知ってしまうと捨てたくなくなってしまう。
 アイツらの処分もできることなら皆で楽しみながらやっていけたらいいなぁとそう思っている」

 「一世界に限定してますがエイベスさんの能力はワールドクリエイターに近いものがあると思うんですよね、それらの関連性とかも色々考えてみたいし、なによりもオープンワールド化したワールドクリエイターにはものすごく興味がある。作り出される世界にももっと多様性を持たせられると思うんだ。
 だから【中央】のことは正直どうでもいい」

 「俺達は皆さんの決定に従います。
 エイベスさんと話して短い時間だけど悪意を持ってやってることじゃないし、
 アイツらを倒すダンジョンのほうがすでに興味が湧いてます!」

 女神の盾のメンバーもワタルらしいワタルの意見に賛同している。

 「と、ところでアイツら……ってどれくらいいるんですか?」

 「うーん、計算上では現在、えーっと地球ならわかるよね。ちょうど地球を含む太陽系ぐらいの範囲の空間を閉鎖空間にしていて。その半分ぐらい埋まってる感じかな?
 あいつら共食いしてもそれ以上の増殖する不可解なやつらなんだよねー、
 空気なくても灼熱でも極寒でも生きられるし、って大丈夫顔色悪いよ?」

 そのままユウキは固まって倒れてしまった。
 ワタルが受け止めてそっと寝かしておく。カレンとカイが心配そうに看病してくれている。

 「そ、想像以上にとんでもない量がいますね……」

 「いやー原因わかんなかったときなんてもっと大変だったよ、
 広大な世界の所々にそいつらが巣を作って増えていてさー、
 それを一つ一つ探してその空間に放り込んでーって延々とやってたよ……
 デルスくんの世界からのエネルギー量が増大してくれたおかげで僕もいろいろ力をましたから一網打尽出来たけどね。本当に辛かったなー……」

 体育館の中にコメをぶちまけてピンセットで拾い集めるような作業だったらしい……
 まぁ、二転三転したが元の世界に戻ってやることは決められた。

 「あ、僕もそっちの世界行くよ、この分体連れてって」

 最後に爆弾発言はあったけどね。





 

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