3人の勇者と俺の物語

穴の空いた靴下

173章 頼み

 「うおっ! びっくりした。そんなに嫌いなんだね。
 まぁ今は隔離してるし、似てると言っても生態が似てるってだけだから姿形は色々してるから、
 僕の世界の住人もやっと復興してきたけど、君たちの世界の人から見たらまだ原始的だと思うし、
 なによりも君たちが使う魔法的なものはないからいろいろ工夫して駆除してもらっているんだよね。
 もし君たちのワールドクリエイター内に運べればいろんな世界の魔法やら兵器やらで駆除のスピードが上がると思うんだよね、いやー。まさに身から出た錆だよはっはっっは」

 カラカラと陽気に笑っているエイベス、全員呆れ顔。デルスとケイズは今の案に対してあーだこうだとすでに技術的な方法を議論している。こっちの二人も大概だね。

 「あちらの【中央】からお話を聞いていて、もっとほんとうの神のような万能な存在なのかと思っていました」

 ワタルは素直な感想を述べる。

 「ははは、そうなんだよね。長いこと精神体のような状態で世界と共に過ごしてきたせいで、
 実体に対する影響力はほとんど失ってしまったんだよ。霊体とか精神的なアプローチはそれなりにできるんだけど、それでもなんとなく感受性の高い住人にイメージを抱かせたりとかその程度、
 むしろなーんもできないんだよね僕はっはっっは」

 残念美男子である。

 「おっと、ここだ。味気ないから少し装飾してあるけど。まぁ気にせず寛いで」

 大きな扉を執事が開くとその向こうに広がる風景は息を呑む。
 美しい庭園に大理石のような白く輝くテーブルと椅子、花々が咲き誇り、噴水に備えられた美しい女神像の持つ水瓶から流れ落ちる水。
 地上の楽園がそこには広がっている。
 空もどこまでも透き通るような青空、すばらしい環境が作り上げられていた。

 「今ささっと作ったけど、君たちの世界でもこういうのは悪くないものなんだろ?」

 「何もできないとかなにいってるんですか!」

 思わずデルスがツッコミを入れる。

 「自分自身のからだを操作しているようなもんだからねー、
 ま、座って座って。ワタルさん、楽しみにしてるよ!」

 ぐっと指を立て最高の笑顔をワタルに見せる。
 ちょっと口元からよだれがたれている。いい笑顔が残念な美男子である。
 ワタルはアイテムボックスからストックしてある料理をどんどん出していく、
 いつの間に人数の増えている執事たちが手際よく並べていってくれる。
 あっという間に自然庭園に豪華なパーティのようになる。

 「こ、これが!? すごい、すごいよワタルさん!!
 も、もう食べていいかな!? いいかな!!」

 残念美男子絶好調である。
 とりあえずまずはお腹を満たして落ち着いてもらわないと話もできないので会食を楽しんでもらう。
 バッツがお酒を出し始めると場の方向は宴会になってしまう。
 最初は繕っていたデルスやケイズ、カレン、カイあたりも主役であるエイベスの乱れっぷりに馬鹿らしくなって宴会を心から楽しむことにした。
 結局のんびりとこの日は酒宴を楽しんだだけで終わってしまった。
 酒瓶をかかえて満面の笑みで撃沈したエイベスの口に二日酔い予防用の魔法を込めたタブレットを突っ込んで執事たちに運んで貰った。
 ワタル達には客室が案内されその日はゆったりと休むことになってしまった。

 翌朝、素晴らしい庭園を朝の散歩をしていたワタルのところに、ハツラツとしたエイベスが訪れた。

 「いやー! ほんとに昨日はありがとう!
 あんな素晴らしい時間を過ごしたのは生まれてこの方はじめてだよ!
 ありがとう! ありがとう!!」

 ワタルのからだをグワングワンと揺らして感動を表現するエイベス。

 「た、楽しんでいただけたのなら幸いです、しかし、今日はちゃんと話し合いしましょうね」

 「ああ、わかってるよデルス氏やケイズ氏との会話は知的好奇心を刺激される!
 しかし君は幸せものだな、昨日聞いたら女性は全て君の奥様だと言うじゃないか!
 僕はそういう人としての欲求を超越してしまっていたが、
 そういった不安定なものがあるからこそ生と言うものは楽しいんだなと改めて思ったよ、
 正直ヤツラを突き止めてからの戦いの日々は、不謹慎だが楽しかった。
 あのワールドクリエイターを利用して新しい生を楽しみたいなぁ……」

 しみじみとそう話すエイベスの表情は未来への希望に対する望みと、過去への哀愁が入り交じったようなそんな表情を浮かべた。美男子はこういう表情も絵になる。

 「ところでワタルさん朝ごはんはなんでしょう? 個人的にはご飯と焼き魚と味噌汁、あと、納豆に挑戦してみたいです!」

 前言撤回である。
 朝食をエイベスのリクエスト通りにしてあげるワタルの優しさである。
 朝食に舌鼓をうった後は緑茶をすすりながら話し合いが行われる。
 流石に真面目な話し合いもしていかないと、

 「とりあえず、今のこの世界の状況を説明しようか」

 エイベスは卓上にホログラムを映し出す、ホログラムかどうかは分からないが3次元的にこの世界を表す映像がそこに現れる。

 「今いるのがこの星のこの辺り、この星の全景はこんな感じで一応首都星として機能してます。
 星間移動はオーパーツという位置づけで転移装置がありますが、まだそこまで到達した文明はありません。一度死滅させてしまってまた小動物程度から進化を待っていたので現状はやっと道具を使って生活が集団になってきた。その程度しか発達していません、それでもアイツの退治は出来ます。一部はですけどね。んで、こっちの星にアイツらを封鎖しています。その中の小型の個体を首都星や他の星星に処分できる分だけ送っています。やっと各星の人口も増えてきてアイツが増える量よりも消費量が増えてきました。住人がアイツを倒すメリットは倒すとドロップ品が出てそれを神に供えることでいろいろな加護や物と交換できるっていう形を取っています」

 「おお、RPGっぽい!」

 「労働には見返りがないとね。でアイツらは悪食でなんでも食べてしまうんだ。
 結局最初のきっかけは自分自身も含めて星だろうがエネルギーだろうが食べ始めて、
 そしてすごい勢いで増えていくんだ。倒すと一部エネルギーは回収できるんだけど」

 「そのシステムはそのまま冒険者がいるタイプのワールドで実装できそうですよね。
 今オープンワールドにして宇宙空間に各ワールドが存在しているってシステムにしていけないか開発しているんですよね」

 「そこにこの世界も組み込めれば、アイツを倒すことを一つのコンテンツにできるかもしれない!」

 「なんでも食っちゃう厄介な性質は殲滅し終わったらモンスター的な物にこちら側運営が変えればいい!」

 大盛り上がりの会議? はこうして始まる。

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