3人の勇者と俺の物語
167章 対話
約束の場所は、少し寂しい。というか何もない平地だった。
地面は石が切りだされた装飾もないただただフラットな空間。
空は灰色。明るさはあるが太陽等があるわけではない。
見回しても地平線があるだけ、なにもない。
その地に立っているのは現在ワタル、ユウキ、リク、カイ、クウ、バッツ、カレン、バルビタールとデルスの9人だけ。
「なんでこんなところを指定してきたのですかね?『やはり罠ですかね?』」
すでに外界なので【中央】の監視の目はどこで光っているのかわからない。
「なんか【中央】でも一応どういうものか試しに作った場所みたいだよ。
『そうかもね、うーん、ほんとに彼らは実体がわからないからねぇ』」
『大丈夫なのか? デルス、ワタル?』
ケイズも会話に入ってくる。バイタルサインは問題なく精神干渉や探査などされている気配は無いそうだ。隔絶されている体になっている世界からこちらをモニターしてくれている。
「そろそろ時間だね」
デルスの言葉を合図にしたかのようにワタル達の前方の空間にゆらぎが生じてすぅーっと真っ白い両開きの扉が現れる。
音もなく開く扉から同じく真っ白な法衣のような服装の男が現れる。
執事服を来た初老の男性が少し後ろに控えている。
法衣は目元までしっかりと覆っておりその表情を伺うことは難しい。
ワタルの気持ちに答えるように法衣の男がフードを外す。
現れたのは、特徴のない、中年の男だ。
黒髪に薄く茶色い瞳、高くも低くもない鼻に特に取り立てた特徴もない唇。
ワタルはユウキが一番初めに思ったのはMOBのようなおっさん。だった。
「君たちが今回の騒動を解決してくれたのか、感謝する。
私は【中央】の末席を務めるものだ。特に名もないので気にしないで欲しい。
簡単ではあるが軽食を用意した、皆どうぞ中へ」
抑揚のない機械的な【中央】の使者の挨拶を受ける。
扉の中にはテーブルとティーセット、作りの良い調度品が置かれた部屋が広がっていた。
何故か心の動かない無機質なイメージを受けてしまう。
執事が慣れた所作で全員の前に紅茶を用意してくれる。
一口飲むとたしかに味はいいが、ワタルやカレンの入れる気持ちのはいった物には劣る。
「早速だが、君たちが手に入れた情報とはなんだろうか?」
デルスはユウキに目配せをする。
ここからが【中央】との静かな戦いになる。
「実は次元の本流に流されてこの世界に降り立つ前に、この世界の情報の波に巻き込まれてしまったのです、その際にこの世界。性格には【中央】についての情報、記憶のようなものが入り込んできたのです……」
「ほう、それは興味深いですね」
発言とは裏腹に何の興味もないような平坦な口調で話す。
表情の変化なども一切なく、機械的な問答をしているだけのような気もしてくる。
ユウキは言い知れぬ不気味さを感じていたが、それを臆面も出さずに打ち合わせ通りに会話を続ける。
「その内容は【中央】がこの世界の、我々から言うところの神たちから感情をエネルギーとして吸い上げて何処かに送っている。とても信じられない内容でした」
思いっきり真ん中への直球だ。
いろいろ話し合った結果こうなった。
正直危険な方法だとは皆わかっていた。
それでもうだうだとやっても結局同じだろう、それなら結果がさっさとわかった方がいいという結論に至った訳だ。
『大丈夫、今のところ何の関与も受けていない』
ケイズからの報告がワタルのもとへ届く、
ワタルが軽くテーブルに指を二回コンコンと叩く。
問題ない、続けよう。ユウキに対するメッセージだ。
直球を受けた直後、ここが第一の関門だろうと考えていた。
結果としては【中央】はなんの動きも見せなかった。
眼の前にいる男も一切の表情の変化もなく話を聞いている。
「それは、また随分突飛な話のようにも聞こえますね」
抑揚のない声で反論にもなっていないような発言である。
「つまり、全くの事実無根であるということでよろしいですか?」
今度はデルスが質問を投げかける。
当事者からの問いかけにどう反応するのか、ここではそれを確認する狙いだ。
「ふむ、とりあえず。得た情報はそれだけですか?」
質問に対する答えではなく、こちらが得ている情報の内容を探るような発言。
これだけでも先程の話が全くの嘘偽りの可能性が低くなる。
「まだ、あります。ですが先にデルス様のご質問に対するお答えを伺ってもよろしいですか?」
ほんの少し場の空気が変わったような気配がする。
目の前の男の表情や態度は一切の変化はないが、
ほんの微細な変化、歴戦の勘に近いものでそれを感じ取った。
『こちらへの関与は存在しない、もしかしたら【中央】本体に指示を仰いでいるのかも……』
デルスが心の声でそうつぶやく。
「ふむ……答えはYesだ。我々はあなた方が作り出すエネルギーを集めている」
「な……!?」
デルスは絶句する。まさか真正面から肯定してくると思っていなかったからだ。
「感情エネルギーかと言われればそれは『わからない』という言葉になる。
しかし、このエネルギーは君たち自身の生命の維持にも使われているし、
君たちの生命活動に大きな不利益は与えていないと思うが?」
とくに怒りも感じない、相変わらず淡々と話す。
「そうですが、我々は説明もなく何かを奪われていることになっているということですよね?
それに、生命の維持に『も』使われている。つまりそれ以外にも使われているということですよね?」
「もう一点の話がたぶんそれに絡むと思うので、今お話させていただきます。
【中央】の方々はこの世界の人間では無いのではないですか?」
ぴくり、と目尻が上がる。
ほんの少し。
そして一瞬の間のあと、何も変わらない平坦な声で話し始める。
まだまだ話は長くなりそうだ……
地面は石が切りだされた装飾もないただただフラットな空間。
空は灰色。明るさはあるが太陽等があるわけではない。
見回しても地平線があるだけ、なにもない。
その地に立っているのは現在ワタル、ユウキ、リク、カイ、クウ、バッツ、カレン、バルビタールとデルスの9人だけ。
「なんでこんなところを指定してきたのですかね?『やはり罠ですかね?』」
すでに外界なので【中央】の監視の目はどこで光っているのかわからない。
「なんか【中央】でも一応どういうものか試しに作った場所みたいだよ。
『そうかもね、うーん、ほんとに彼らは実体がわからないからねぇ』」
『大丈夫なのか? デルス、ワタル?』
ケイズも会話に入ってくる。バイタルサインは問題なく精神干渉や探査などされている気配は無いそうだ。隔絶されている体になっている世界からこちらをモニターしてくれている。
「そろそろ時間だね」
デルスの言葉を合図にしたかのようにワタル達の前方の空間にゆらぎが生じてすぅーっと真っ白い両開きの扉が現れる。
音もなく開く扉から同じく真っ白な法衣のような服装の男が現れる。
執事服を来た初老の男性が少し後ろに控えている。
法衣は目元までしっかりと覆っておりその表情を伺うことは難しい。
ワタルの気持ちに答えるように法衣の男がフードを外す。
現れたのは、特徴のない、中年の男だ。
黒髪に薄く茶色い瞳、高くも低くもない鼻に特に取り立てた特徴もない唇。
ワタルはユウキが一番初めに思ったのはMOBのようなおっさん。だった。
「君たちが今回の騒動を解決してくれたのか、感謝する。
私は【中央】の末席を務めるものだ。特に名もないので気にしないで欲しい。
簡単ではあるが軽食を用意した、皆どうぞ中へ」
抑揚のない機械的な【中央】の使者の挨拶を受ける。
扉の中にはテーブルとティーセット、作りの良い調度品が置かれた部屋が広がっていた。
何故か心の動かない無機質なイメージを受けてしまう。
執事が慣れた所作で全員の前に紅茶を用意してくれる。
一口飲むとたしかに味はいいが、ワタルやカレンの入れる気持ちのはいった物には劣る。
「早速だが、君たちが手に入れた情報とはなんだろうか?」
デルスはユウキに目配せをする。
ここからが【中央】との静かな戦いになる。
「実は次元の本流に流されてこの世界に降り立つ前に、この世界の情報の波に巻き込まれてしまったのです、その際にこの世界。性格には【中央】についての情報、記憶のようなものが入り込んできたのです……」
「ほう、それは興味深いですね」
発言とは裏腹に何の興味もないような平坦な口調で話す。
表情の変化なども一切なく、機械的な問答をしているだけのような気もしてくる。
ユウキは言い知れぬ不気味さを感じていたが、それを臆面も出さずに打ち合わせ通りに会話を続ける。
「その内容は【中央】がこの世界の、我々から言うところの神たちから感情をエネルギーとして吸い上げて何処かに送っている。とても信じられない内容でした」
思いっきり真ん中への直球だ。
いろいろ話し合った結果こうなった。
正直危険な方法だとは皆わかっていた。
それでもうだうだとやっても結局同じだろう、それなら結果がさっさとわかった方がいいという結論に至った訳だ。
『大丈夫、今のところ何の関与も受けていない』
ケイズからの報告がワタルのもとへ届く、
ワタルが軽くテーブルに指を二回コンコンと叩く。
問題ない、続けよう。ユウキに対するメッセージだ。
直球を受けた直後、ここが第一の関門だろうと考えていた。
結果としては【中央】はなんの動きも見せなかった。
眼の前にいる男も一切の表情の変化もなく話を聞いている。
「それは、また随分突飛な話のようにも聞こえますね」
抑揚のない声で反論にもなっていないような発言である。
「つまり、全くの事実無根であるということでよろしいですか?」
今度はデルスが質問を投げかける。
当事者からの問いかけにどう反応するのか、ここではそれを確認する狙いだ。
「ふむ、とりあえず。得た情報はそれだけですか?」
質問に対する答えではなく、こちらが得ている情報の内容を探るような発言。
これだけでも先程の話が全くの嘘偽りの可能性が低くなる。
「まだ、あります。ですが先にデルス様のご質問に対するお答えを伺ってもよろしいですか?」
ほんの少し場の空気が変わったような気配がする。
目の前の男の表情や態度は一切の変化はないが、
ほんの微細な変化、歴戦の勘に近いものでそれを感じ取った。
『こちらへの関与は存在しない、もしかしたら【中央】本体に指示を仰いでいるのかも……』
デルスが心の声でそうつぶやく。
「ふむ……答えはYesだ。我々はあなた方が作り出すエネルギーを集めている」
「な……!?」
デルスは絶句する。まさか真正面から肯定してくると思っていなかったからだ。
「感情エネルギーかと言われればそれは『わからない』という言葉になる。
しかし、このエネルギーは君たち自身の生命の維持にも使われているし、
君たちの生命活動に大きな不利益は与えていないと思うが?」
とくに怒りも感じない、相変わらず淡々と話す。
「そうですが、我々は説明もなく何かを奪われていることになっているということですよね?
それに、生命の維持に『も』使われている。つまりそれ以外にも使われているということですよね?」
「もう一点の話がたぶんそれに絡むと思うので、今お話させていただきます。
【中央】の方々はこの世界の人間では無いのではないですか?」
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