3人の勇者と俺の物語
131章 極限
教皇との謁見を済ませたワタルとカレンは領地へと戻る。
バッツの状態も気になるし、正直立っているのも限界なほどの疲労感に襲われていた。
「ワタルきゅーんお帰りなさい! もう、最っ高!! そろそろ無くなっちゃうわ!
おかわりおかわりー!」
バッツに用意した食事はゆうに5人前はあったのだがすでに無くなりかけていた、
時間がなかったので下ごしらえをワタルが行い仕上げは商会の人間に任せた。
食べているバッツも血色も良くなりむしろ以前よりもハリ・ツヤが良くなっているほどであった。
他のメンバーもまだまだ物足りなそうだ。
「俺もお腹が空いてやばい、すぐ作る。待ってて」
「ワタル様私も手伝います、私も恥ずかしながら空腹で倒れそうです……」
その後追加した大量の料理もみるみる全員の腹の中に収まっていく。
明らかに異常なレベルの食欲だ。
そして食べるごとに体に力がみなぎっていくのをハッキリと感じていく。
「さ、さすがにもう無理……し、しあわせ~~」
「あー、もう入らない-……」
「ワタル君は本当に料理が上手だな、まさか自分がこんなに食べられるとは思っていなかったよ」
全員この世の天国のような表情を浮かべて満足気だ。
「さてと……」
バッツが立ち上がり手のひらを握ったり開いたり、腰を回したり体を動かす。
「信じられないけど、もうなんの違和感もないわね。完全に致命傷だったと思うんだけど……」
「ユウキが最適な治療法を指導してくれて、それがなかったら危なかったよ」
「そう、ユウキは命の恩人ね。さて、ワタル、リク」
普段の口調ではなく真剣に問いかけるバッツ。
ワタルとリクもその真剣さに真面目に正面に向き直る。
「俺が何を言うかはわかってるよな?」
「はい……」「はい……」
「俺を心配してくれるのは嬉しい。それは本当だ。
しかし、俺らは殺し合いをしていたんだ。俺の状態でお前らが動揺してお前らが死んだ時、
俺は悔しくてしょうがねーよ」
ワタルとリクは何も言わない。バッツの気持ちが痛いほどわかるからだ。
「覚悟を決めろ、自分たち以上の敵と戦っているんだ。犠牲が出ることもある。
それでも戦わなきゃいけないんだ。犠牲になった奴のためにも、だ。
無様にやられて、さらに命を助けられてこんな偉そうなこというのはアレだが、
これを忘れないでくれ」
二人は無言で頷く。
自分たちの甘さを心から反省する。
「でも、嬉しかったのも本当だからね~」
いつもの調子でばっちこーんってウインクするバッツ。
無言で3人は抱きしめあう。青春である。
「そうだ! バッツ、私ショウに殴られそうになった時、時間が止まったみたいになって皆の状態とか周囲の状況とか全部見えてたんだけど、アレはなに?
もし、あの状態になれるならもっと戦える!」
「それって、殴られる瞬間?」
「うーん、ショウに体勢を崩されて、あの攻撃は完全に当たるな-って思った辺りからスローモーションで動き出して、ワタルの盾に当たった武器と腕に亀裂が入って壊れるとこまで-ッて感じ」
「リク、それ多分1・2秒だぞ」
「えー、10分ぐらいに感じだよ-?」
「多分死を意識した体が極限の集中力を発揮したんだと思うわ、たまに聞くわねそういった話は。
走馬灯とか言って死ぬまでの一瞬で今までの人生を振り返ったりするのもそうらしいわよー」
「たしかに冒険者は危険と隣り合わせで死の間際に触れ、そういったことが起こると聞きますね。
私も何回か似たようなことはありました、ただそこまで引き伸ばされたりはしませんでしたが」
「カレンも死にそうになった時あるの?」
「お忘れになりましたか? 私は一度死んでます。バッツも」
「ははは、そうね私が忘れてたわ。でも私はあの時気がついたらーッて感じだったから」
「私はあの時を覚えています、迫り来る塊、展開される盾、自らが潰されていく感触……」
ワタルはあの時の悔しさがこみ上げてくる。
メディアスとバイセツを犠牲にしたあの戦いを思い出す。
「でも、あの引き伸ばされた時間を戦いの中で発揮できれば、出来ることが増えると思うんだよ」
「死を認識しないと起こらないような現象を任意で起こせるのですかね?」
カイの疑問も最もだ、死の間際だからこそ起きるのだから普通に起きるはずはない。
「走馬灯はどういう機序でおこるのかちゃんと判明しているものではないからなぁ……」
ユウキの知識もさすがにこの問題に答えは与えてはくれない。
「そこはほら、気合でなんとか!」
「気合ねぇ……」
「ワタ兄、悪いんだけどもう限界、寝ていい?」
クウの一言で皆議論に熱中していて忘れていた疲労感と睡魔がドット訪れる。
「そうだな、俺ももう眠くてしょうがない。今話し合ってもいい知恵は出ないだろう。
今日はゆっくり休んで明日考えよう」
その日の話し合いはそれで終了となる。
眠い目をこすりながらなんとか体の汚れを落とし、
ベッドに倒れ込むように深い眠りについた。
そして、全員が同じ夢を見る。
バッツの状態も気になるし、正直立っているのも限界なほどの疲労感に襲われていた。
「ワタルきゅーんお帰りなさい! もう、最っ高!! そろそろ無くなっちゃうわ!
おかわりおかわりー!」
バッツに用意した食事はゆうに5人前はあったのだがすでに無くなりかけていた、
時間がなかったので下ごしらえをワタルが行い仕上げは商会の人間に任せた。
食べているバッツも血色も良くなりむしろ以前よりもハリ・ツヤが良くなっているほどであった。
他のメンバーもまだまだ物足りなそうだ。
「俺もお腹が空いてやばい、すぐ作る。待ってて」
「ワタル様私も手伝います、私も恥ずかしながら空腹で倒れそうです……」
その後追加した大量の料理もみるみる全員の腹の中に収まっていく。
明らかに異常なレベルの食欲だ。
そして食べるごとに体に力がみなぎっていくのをハッキリと感じていく。
「さ、さすがにもう無理……し、しあわせ~~」
「あー、もう入らない-……」
「ワタル君は本当に料理が上手だな、まさか自分がこんなに食べられるとは思っていなかったよ」
全員この世の天国のような表情を浮かべて満足気だ。
「さてと……」
バッツが立ち上がり手のひらを握ったり開いたり、腰を回したり体を動かす。
「信じられないけど、もうなんの違和感もないわね。完全に致命傷だったと思うんだけど……」
「ユウキが最適な治療法を指導してくれて、それがなかったら危なかったよ」
「そう、ユウキは命の恩人ね。さて、ワタル、リク」
普段の口調ではなく真剣に問いかけるバッツ。
ワタルとリクもその真剣さに真面目に正面に向き直る。
「俺が何を言うかはわかってるよな?」
「はい……」「はい……」
「俺を心配してくれるのは嬉しい。それは本当だ。
しかし、俺らは殺し合いをしていたんだ。俺の状態でお前らが動揺してお前らが死んだ時、
俺は悔しくてしょうがねーよ」
ワタルとリクは何も言わない。バッツの気持ちが痛いほどわかるからだ。
「覚悟を決めろ、自分たち以上の敵と戦っているんだ。犠牲が出ることもある。
それでも戦わなきゃいけないんだ。犠牲になった奴のためにも、だ。
無様にやられて、さらに命を助けられてこんな偉そうなこというのはアレだが、
これを忘れないでくれ」
二人は無言で頷く。
自分たちの甘さを心から反省する。
「でも、嬉しかったのも本当だからね~」
いつもの調子でばっちこーんってウインクするバッツ。
無言で3人は抱きしめあう。青春である。
「そうだ! バッツ、私ショウに殴られそうになった時、時間が止まったみたいになって皆の状態とか周囲の状況とか全部見えてたんだけど、アレはなに?
もし、あの状態になれるならもっと戦える!」
「それって、殴られる瞬間?」
「うーん、ショウに体勢を崩されて、あの攻撃は完全に当たるな-って思った辺りからスローモーションで動き出して、ワタルの盾に当たった武器と腕に亀裂が入って壊れるとこまで-ッて感じ」
「リク、それ多分1・2秒だぞ」
「えー、10分ぐらいに感じだよ-?」
「多分死を意識した体が極限の集中力を発揮したんだと思うわ、たまに聞くわねそういった話は。
走馬灯とか言って死ぬまでの一瞬で今までの人生を振り返ったりするのもそうらしいわよー」
「たしかに冒険者は危険と隣り合わせで死の間際に触れ、そういったことが起こると聞きますね。
私も何回か似たようなことはありました、ただそこまで引き伸ばされたりはしませんでしたが」
「カレンも死にそうになった時あるの?」
「お忘れになりましたか? 私は一度死んでます。バッツも」
「ははは、そうね私が忘れてたわ。でも私はあの時気がついたらーッて感じだったから」
「私はあの時を覚えています、迫り来る塊、展開される盾、自らが潰されていく感触……」
ワタルはあの時の悔しさがこみ上げてくる。
メディアスとバイセツを犠牲にしたあの戦いを思い出す。
「でも、あの引き伸ばされた時間を戦いの中で発揮できれば、出来ることが増えると思うんだよ」
「死を認識しないと起こらないような現象を任意で起こせるのですかね?」
カイの疑問も最もだ、死の間際だからこそ起きるのだから普通に起きるはずはない。
「走馬灯はどういう機序でおこるのかちゃんと判明しているものではないからなぁ……」
ユウキの知識もさすがにこの問題に答えは与えてはくれない。
「そこはほら、気合でなんとか!」
「気合ねぇ……」
「ワタ兄、悪いんだけどもう限界、寝ていい?」
クウの一言で皆議論に熱中していて忘れていた疲労感と睡魔がドット訪れる。
「そうだな、俺ももう眠くてしょうがない。今話し合ってもいい知恵は出ないだろう。
今日はゆっくり休んで明日考えよう」
その日の話し合いはそれで終了となる。
眠い目をこすりながらなんとか体の汚れを落とし、
ベッドに倒れ込むように深い眠りについた。
そして、全員が同じ夢を見る。
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