3人の勇者と俺の物語

穴の空いた靴下

114章 ジャッジメント     ですの。

 カイの膝枕で目が覚めたワタル。

 「あ、あれ? カイは寝てないの? おはよう」

 優しくワタルの髪を撫でながらカイは穏やかな笑みを浮かべる、

 「少し先に目が覚めて、ワタルさん見ていたら愛おしくなってしまって・・・・・・」

 ワタルはそのままカイに手をやり引き寄せおはようのキスをする。

 「重いでしょ、起きるよ」

 「はい」

 甲斐甲斐しくワタルが服を着るのを手伝うカイ、こういうところは本当に献身的にやってくれる。
 ワタルは最初むず痒いので遠慮していたけど今ではしてもらっている。
 断ると少し悲しそうな顔するのが辛いのだ。

 「今日はお昼にみんなで集まって夜にはオークション最終日ですね」

 「そうだね、最終日は皇子からお声がけもらっているからきちんと参加しよう」

 「すいぶん盛り上がっているようですねオークションの方も」

 「へーそうなんだ。まぁ量がすごいからね今回」

 史上初めて2つの大ダンジョン攻略の宝物が出展される。
 これで盛り上がらないほうが嘘だ。
 世界中の貴族の代理人や商人がこの帝都に集まっていたことだろう。
 そんなお祭りも今日で最後だ。

 そして女達の決着が着くのもこの日だ。
 ワタルには今日の夜には一番楽しかったデートの相手を明日のディナーに誘ってね。
 と、軽い調子で伝えてある。
 しかし、その決定は皆の今後の格付けを決定する重いものなのだ。

 まずはオークションの最終日の主賓としての観覧がある。
 皇子と一緒にVIP席に呼ばれ今回のオークションの立役者としての紹介がある。
 オークション閉会の後は各国VIPとの会食だ。
 すでに全ての大陸のTOPとは面通しが終わっている。
 各大陸の上級貴族なんかに顔通しをするのだ、
 貴族にとって優れた冒険者とのパイプはステータスになるのですでに4個の大ダンジョンを攻略するというとんでもないパーティの争奪戦は壮絶なものになるだろう。
 しかしワタル達の心は決まっている、ノイエンシュタット侯爵と縁があるとハッキリと公言する予定になっている。サウソレスの砂漠の大ダンジョンでは大変お世話になっており、
 その人柄にも惹かれる点が多かった。

 オークションも最終日になって街の盛り上がりも最高潮になっている。
 ワタルたちはバッツの用意した衣装に身を包む。
 公的なしかも帝国のTOPと並ぶのだ、それなりの姿をしないといけない。
 まぁ作るのがバッツである以上当然素晴らしい出来だ。
 ワタルとバッツがビシっとした格好をすれば女子の目を引くイケメンが出来上がる。
 女性陣はもちろんどこのスター集団かと思うくらい美人揃い。
 帝国からの使いに率いられて移動する女神の盾のメンバーは大層人目を引いた。
 そして当然デートで有名になったワタルの正体も明らかになる。
 昨日までワタルに噛み付いていた男たちは言いようのない敗北感に打ちのめされるのだった。
 あんな美人を連れて、しかも大ダンジョンを攻略する強さ、オークションで得られる財力。
 全てにおいて完全な敗北なのだ・・・・・・
 まるでモーゼのように突っ伏し嘆く男性が続出したとかしないとか。

 オークション会場を一望できる席に通される一同。
 本日のオークション開始を宣言する前に紹介を受ける。
 礼服に身を包んだ皇子はまさに王子様だった。バッツの目がハートになるのも仕方ない。

 「今回のオークションに多大なる貢献をしてくれた女神の盾の皆様を皆に紹介しよう。
 リーダーのワタル イチノセ。彼は様々な武器と鉄壁の盾、強力無比な魔法とすべての分野で超一流の実力をもつ・・・・・・」

 その後もこっ恥ずかしい説明が続いて一同は赤面する羽目になってしまうのでありました。

 一通りの辱めを受けてオークション最終日の開会が宣言される。
 最終日は目玉商品が続出なために会場の盛り上がりも凄い、
 とんでもない金額で次から次へと商品が落とされていく。

 「皇子、あの紹介は一体何何ですか? 恥ずかしくて死にそうでしたよ」

 「ああ、すまぬな。文官共が変な方に張り切ってしまってな」

 「天をかける女神とか本物の女神がいるのに・・・・・・」

 「はずかしかったー・・・・・・」

 「皆もすまなかった。まぁ、行っている偉業はあの説明でも足りないほどだ、諦めるが良い」

 皇子が言うとおり女神の盾の名前は今回のことで世界中に大々的に広まっていく。
 無事に閉会を迎えたオークション、財務大臣の満面の笑みで力強い握手でどれだけ今回経済効果があったかが伺える。
 女神の盾商会からも嘘だろ!? と言うような売上が計上されていた。
 余談ではあるが猛烈なベビーブームが到来するのに多大なる貢献をしていたことを一同は知らない。

 その後の食事会も壮絶な争奪戦になった。
 すでに懇意にしている発表をした後でもそれでも構わないからとメンバーたちは常に貴族に囲まれ続けていた。
 特に全員独身であったせいで縁談やらその手の誘いも大量にされてほとほと疲れ果ててしまった。

 「さすがのバッティもぐったり~~」

 「バッティのドレスもすごい質問されたよ-、ワタルも洋服凄い注目されてたからバッティこれから大変だね!」

 「ワタル様以外に心動かすことはないと断ってもしつこいことしつこいこと・・・・・・」

 「でもワタ兄ちょっと鼻の下伸ばしてた・・・・・・」

 「あ、それ私も見ました。あのなんだかはだけた下品な人の、む、胸押し付けられて!」

 「ちょ、あれは、その違うんだ、すごいなーって」

 「やっぱり胸なんだねワタル君は・・・・・・」

 「ち、違うってば!」

 やっと開放されろくに食事も取れなかった一同は久しぶりにみんなでゆったりと食事を楽しんでいた。

 「そ、そうだ。明日のことなんだけど・・・・・・」

 ワタルがいきなりぶっこんできた言葉にぴーーーーんと張り詰めた空気が一瞬で出来る。
 ごくり。だれのかのつばを飲む音が聞こえるほどの静寂。
 バッツを除く全員がワタルの言葉に集中している。

 「みんなとデートして、凄く楽しくて。恥ずかしいけど、改めてみんなステキな人だなって思って。
 俺にはもったいないなぁ、なんて思ったり。それが幸せだったり、
 まず、いいたいのは本当にみんなには感謝している。ありがとう」

 立ち上がり頭を下げるワタル。

 「明日誘う人、凄い考えたんだけど。
 俺は全員がいい、全員がそれぞれ最高に素敵で、最高に好きなんだ。
 いっぱい考えたけど、その答えしか出なかった。
 みんなでじゃダメかな?」

 ワタルの答えはワタルらしいと全員が思う答だった。
 みんなどこかでこうなるんじゃないかと思っていた。
 ワタルはワタルなのだ。
 全員が嬉しさと幸せに包まれた夕食は穏やかに終わり。

 愛と情熱に包まれた熱い夜を皆で過ごすことになりました。

 ちゃんちゃん。

  


 

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