3人の勇者と俺の物語

穴の空いた靴下

49章 オークション

 オークション会場は普段はオペラとかやっている劇場で行われた。
 大ダンジョンのオークションは30年振りだそうで参加資格だけでもプラチナチケットになっている。
 俺らのPTはもちろんVIP席に招待だ。
 ある意味俺達のお披露目の場でもある。
 散々お世話になってるから仕方ないね、恥ずかしいけど。
 バッツさんはなんと今日のための洋服を作ってくれていた。
 恋人と会っていたとか言ってたけど、こういうところに気を回してくれる優しい人だ。
 一応失礼に当たらない服はお店で手に入れていたけど、
 着てみるとバシッときまるバッツさんの服に全員そっちを選んだ。

 「やっぱりワタルきゅんはいいわぁ~」

 「バッツの服がかっこいいからだよ」

 「きゃ~バッティ嬉しい!」

 いや、ほんとにお世辞抜きで俺なんかが着てもビシっと決まる燕尾服に似たデザイン。
 素材がいいんだろうけど、なんて言うか動きを邪魔せず羽のように軽い。
 このまま戦闘になっても全く問題ないと思う。
 女性陣のドレスも見事で会場入りすると周囲のお金持ちっぽい女性たちがため息が出ていた。
 男性もずーーーっと目で追っていた。
 リクは真っ赤なドレス。背中から胸元にぐっと切れ込みが入っている。
 どうしても目がそこにいく。それでいて下品にならないように胸元には華をあしらった作り、
 腰に大きな華をあしらっておりスカートは花びらのように広がりを見せている。
 カイのドレスは見事な碧。チャイナドレスのように身体を細身で包んでおり、
 スリムで知的なカイに見事に似合っていた。
 クウはオレンジ色で、リクと同じように胸元が大きく開いている。
 リクが華のようなかわいいデザインだとするとクウのドレスはカッコ良かった。
 直線的なデザインで見事な胸元がいやらしく見えない、すごい技術だな。
 カレンさんは緑のスーツスタイル、パンツスタイルだった。
 長身のカレンさんがスーツを着ると秘書か女教師だね、メガネとかつけたら凄い似合いそう。
 バッツは……真っ白なゴスロリだった。ゆるぎねぇな。
 まだレザーつなぎの方がかっこいいのに……

 王国が主催のオークションは王の挨拶で始まった。
 ひとつひとつのアイテムが出される度に歓声があがる。
 売上の3割は俺達のPT、5割が王国へ、2割が冒険者ギルドへ入る。
 貴族はここで存在感を売ることがメンツのためにも大事だったりするそうだ。
 みんなすさまじい金額で落札されていく。
 今のところ一番高値をつけたのは剣だった。
 水、火、土、風の4属性の力を持つマジックウェポンだった。
 なんと4億zもの高値がついた。
 僕達の世話役の人が軍事国家ウェステイアの王の代理人だと教えてくれた。
 アレよりも単純な攻撃力として高い俺らの武器はいくらになることか……
 ゲンブの拷問を受けたから素直に感謝できないけど、
 神獣の甲羅で作った武器だもんね、伝説級レジェンドだよね。
 途中でも充分すぎるほど自覚したけど、とんでもないことをしたんだなと笑顔が引きつる。

 バッツはあの子かわいいとかキャッキャしてる。
 リクは一生懸命金額を計算してニマニマしていた。
 リクはだいぶ前から寝てる。俺の膝の上で。
 カイはお茶請けのお菓子が気に入ったみたいでニコニコしている。
 途中何度か休憩が挟まれた、盛り上がりまくるオークションは長時間に渡った。
 代わる代わる貴族や冒険者などの相手はカレンがしてくれている。
 女神の盾ってPTはカレンのPTって認識だ。ちょうどいいのでそれでお願いしてる。
 カレンには優しくしてあげよう。夜に、乱暴にしたほうが喜ぶんだけどね。

 「それにしても、長い!!」

 気分転換に外に出ている、もう日が傾いている。
 早朝からこの時間でまだ半分だ。
 出品順はランダムだそうだ。
 いろいろ駆け引きがあるそうだ。一応目録はあるんだけど、
 その番号をくじで引いてオークションが始まる。
 会場の周りもお祭り騒ぎだ、出店なんかもでている。
 3人娘もさすがに疲れたのか一緒に気分転換に出てきたが(クウはいい加減眠くないそうだ)、
 なんかいろいろ買食いしてる。
 ドレスでそんなことするもんじゃないと俺は思うけど、
 祭り的な雰囲気ってついつい買っちゃうのは理解できる。


 結局オークションが終わったのは深夜だったらしい。
 流石に夕食を食べた段階で会場をあとにした。代理人の人がいるからきちんとあとで報告が来る。
 ずっと肩こることをしてたのでゆっくりとお風呂に入って、
 特にカレンさんを念入りに労ってあげた。

 結局オークションの収益は42億8254万4621z。小さな国の国家予算みたいなことになった。
 俺らの報酬は12億8476万3386zだ。ははは。意味わからん。ウケル。
 教会へ2億ほど寄付した。
 おかげで次のイステポネで教皇様のお目通りにかなう運びになった。

 家に転送で戻って商会への資金源に残りはしてある。
 これでよほどのことがなければ奴隷の確保や生活維持に困ることはないだろう。
 家の敷地も増えていた。農地を少し拡張した。
 奴隷だけでなく孤児なんかも保護していいかという提案を受けたのでもちろんと即答した。
 寮をもう一棟作っておいた。食堂や共有区画も階層を増やしておいた。
 完全に周囲から浮いてしまうけど今更だ。
 防衛設備も増やしておいた。侯爵にもお話をきちんと密に取るよう指示をして王都へ戻る。

 予想以上の収益によってサウソレス王国名誉国民にも指定された。
 ほんとは貴族にって話もあったんだけど、それは全てを終えてから改めて、
 と、カレンが話を進めてくれた。

 これでこの国でやることは終わった、次の大陸イステポネ大陸へ向かう準備を進めていく。
 魔神の企みを防ぐためにもこれ以上のんびりとはしていられない。
 イステポネ大陸へは港町から船での移動になる。海路で5日ほどだそうだ。
 飛竜は海を嫌う。飛竜で越えることは出来ないらしい。
 ちょっと残念。船の確保はすでに先触れを出している。
 いろんな紹介の人とも人繋ぎができていた。主にカレンが。
 これからも大ダンジョン攻略を期待されているみたいだ。
 あんまり人同士の争いには巻き込まれたくないけど、
 しかたがないんだろう。

 明日は港町へ飛竜で移動、その後は海路で新大陸。
 長かったサウソレス大陸での旅も終わりが見えてきた……

 夜、女神様のお告げがあった。

 【えーっと、いい話と悪い話があります。どっちからがいい? まぁいいやいい話からするね、あの塔なんだけど、すっごい盛況なので内部の時間をちょちょいといじってあ~ら不思議中では何日もたったのに外に出ると時間が立ってない~。って仕様に変えました。順番待ちが凄いことになっちゃったからね、おかげで皆にょきにょきレベルが上ってるよー。まーこの後の悪い話にも繋がるんだけど、冒険者とかこの世界の人も強くならないとまずいんだよねー。んでね、悪い話ってのが、魔神さんもう龍脈の力の一部を取り込み始めてるみたい、ほんのちょっとなんだけどそれで厄介なことはじめてるの、私は気が付かなかったんだけどダーがさー、あっダーって言ってもわかんないよねアルッちね。いやーこないだめっちゃ真面目な顔で、私は貴女を守る盾となり貴方の敵を倒す剣となろうキリッとかやられちゃってさー! 普通だとお茶吹いちゃうけど、あのイケメンがマジかっけぇ顔してじっと見つめて言われてみ? もうさ、コロリよねー。ずるいわアレ。あ、話し逸れたけどなんかさー、バルビーがこないだの黒い奴のちーーーっさいのみたいなのを撒き散らかしてるみたい。もともと人襲ったりする乱暴な魔獣的なのに取り付くと一部変化起こしてるみたいなの。今のところちーさな変化だからいいけど、まぁ強くなってるのモンスター的なの、だからこのまま行くと流通とかがまずいことになっちゃう。だから冒険者とか兵隊さんとかに強くなってもらう。ってことで全部の大陸に塔を作りました。あたしがんばったよ褒めて褒めて。街はバリア頑張ってるから戦えない人はなんとか守れるとは思う。でもこないだのオニみたいなのがウジャウジャ来たら流石に無理。今の変化程度じゃダンジョンの主たちには問題ないけど、またオニみたいなの来たら龍脈奪われちゃう。お願い、頑張って】


コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品