3人の勇者と俺の物語

穴の空いた靴下

48章 王都観光

 もしあの超有名RPGだったら、
 昨日はお楽しみでしたね。
 って言われるな。

 俺は皆を起こさないようにそっとベッドから抜け出す。
 外に出て身体を延ばす。
 からだがパキパキと音をたてる。
 いやー、頑張りすぎた!

 そのままの姿で庭園にある露天風呂へ向かう。
 軽く身体を流し浴槽へ入る。
 まさに朝日が正面の地平線から上がってくる。

 「どこのセレブだ」

 思わず突っ込んでしまう。
 前の世界ならこんな状況、考えもしなかったなー。
 ホテルのスイートでフルコースの食事を食べて4人の女の子と思うがまま楽しんで、
 空中庭園で露天風呂に入って日の出を眺める。
 まさに異世界だね。

 「ワタル様?」

 振り返るとカレンが様子を見に来ていた。

 「入る?」

 「はい!」

 満面の笑顔。守りたいその笑顔。

 「カレンにはすっごいお世話になったよね、ありがとう」

 僕がそう言うとカレンは真っ赤になってうつむいてしまう。ヘニャってなってる耳まで真っ赤だ。

 「そ、そんな私などにはもったいないお言葉、私はワタル様と一緒にいさせていただいて、
 幸せでおかしくなりそうです……」

 あーーーーーーーーーーー、めっちゃかわいいーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 この後滅茶苦茶……

 その途中に乱入してきた3人も混ざったりした。


 朝食はパンとサラダ、卵にハム。それにスープが付く。
 The ホテルの朝食だね。
 卵には……やめよう、この話は宗教戦争並みに危険だ。
 キノコとタケノコどちらが上かと同じように禁忌だ。

 「さて、今日は王都観光をしようと思います」

 「いいね! さんせー!」

 「王都にはたくさんのお店があると聞きますから楽しみです!」

 「そういえばバッティはどうしたのワタ兄?」

 「あら~~呼んだ~~?」

 ちょうどバッツが部屋に入ってくる。

 「昨日は、可愛い子たちと盛り上がって、そ の ま ま(*´∀`*)キャッ」

 男なのか女なのか恐ろしくて聞けない。

 「私はちょっと行きたいところあるからみなさんはご自由にー、
 しばらく帰らないかも~(*´ω`*)オークションまでには戻るわ~(*^^*)」

 手をヒラヒラさせながらバッツさんは出て行った。

 (よし、顔文字やめよう。めんd)

 ん?

 気のせいか。多分今後バッツの会話に顔文字が出ることはないような気がしたけど、
 気のせいだろう。うん。

 朝食を終えて5人で街へ繰り出す。
 ベッドメイクする人に本当に申し訳ないからチップとして1万銭を置いておいた。
 こっちの世界にもチップって考え方があるそうだ。
 あの惨状を綺麗にする役に10,000円じゃぁ割にあわない気もするけどね……

 王都は半分が岩殻に覆われているがどういう仕組みか昼間は太陽の光を岩殻が放っていた。
 つまり影は出来ないんだ。
 中から見ると眩しくないけど、外から見ると王城はかなり光り輝いている。
 サングラスみたいなのないとずっと見ていると目が痛くなりそうだ。

 町並みは西洋風の石造りで漆喰みたいな塗り物が色のレパートリーがあるので見ていて飽きない。
 道もしっかりと石を轢いているので歩きやすい。さすが王都。
 城の正面門から湖を橋が渡してあり、その先から正面門までまっすぐと、
 中央通りと言われる大道が伸びる。
 城に近いほど高級な住宅やお店が多くなる。
 基本的には中央通りの側は商店や公共設備が多く、
 離れていくと住宅が多くなっていく。

 中央通りに出ると活気がある。
 ホテルは中央通りから少しだけ外れている。
 なるほどこの活気はあの雰囲気をすこし壊してしまう。
 街路樹や花壇なども計算されて配置されており、この国の意識の高さを感じさせる。
 馬車道と歩道が分かれている時点でやはり王都は違うなと思わせる。

 「町並みがすごい立派だね、うちの村とは大違いだ!」

 「そういえば父さんと母さん、心配してるかな?」

 「手紙的なものはないの?」

 「ワタ兄手紙なんて高級なもの送れない、しかもここはサウソレス大陸、とんでもない金額になる」

 「そっか、お金ならあるけど距離がなぁ……」

 「冒険者ギルドを通じて連絡を入れてみては?」

 その手があった! すっかり忘れてた、冒険者ギルドには連絡手段があった。
 最初の目的地は冒険者ギルドに決まった。

 結局私用の利用は出来ないので依頼という形で村に3人の無事と現状を伝えてもらうことになった。

 「A級冒険者の給金も実家に送ってもらうことにしたよ!」

 「ほんとうに良いんですかワタルさん?」

 「ワタ兄素敵、大好き」

 「将来的に君たちのことは責任を取るから、なんというか、
 事後承諾になるお詫び的な面もあったり……」

 「私のお金も全てワタル様のものですので遠慮無く言ってください」

 「だ、だめだよ、そこはきちんとしよう!」

 「え!? ワタル、カレンには責任取らないの?」

 カレンの目から一瞬で光が消えた。怖いよ!!

 「いやいやいや取りますよ! わかったよ、カレン困ったときはお願いする」

 満面の笑みででへへへへへって顔になる。こうなりゃ皿まで食べますよ!
 いつかは結婚式とかもしないとね、まぁ、セイちゃんを助けてからだね。

 女性陣は洋服店にいる、さすがに長くなりそうなので俺は目当てのお店に来ている。
 食料品店だ。王都で一番大きなお店だ。
 もちろんルビーオークを求めてだ。それ以外にも何か食指が動くものはないか、
 非常にワクワクしている。

 「あった・・・・・・けど、すごい値段だな」

 思わずひとりごとが出た。
 拳ぐらいの大きさが5万zだった。ははは。買ったけどね。
 それ以外にも見たこともない食材が沢山あった。
 見れば料理人としての目がどう料理すれば美味しいかわかる。ほんとうに便利なスキルだ。
 気がついたら店員が後ろで御用聞きみたいに注文を取ってくれた。
 香辛料の充実っぷりが素晴らしかった、次から次へとレシピが浮かぶ。夢中になってしまった。
 会計が150万くらいになっちゃったテヘペロ
 アイテムボックスにしまって店を出る。
 なんか店員さん全員外に並んで頭を下げている。やり過ぎたね。

 洋服店に戻るとまだいろいろと見ているようだった。

 「こっちのほうがいいかな? あ、ワタル、これとこれどっちがいいかな?」

 リクはワンピースのような作りを2つ、正直あまり差があるように思えなかったが、
 どちらを選ぶかを迷っているようだ。これは、ハウツー本に乗っていたパターンだ。

 「リクはどっちがいいと思うの?」

 「うーん、こっちのほうが形は好きなんだけど、こっちの襟元が好きなんだよね」

 ぬぬ、発展型だな。

 「リクは普段全体の形と襟元どっちが着ていて気になるのかな?」

 「そう言われると、全体の形だね、そうだよね、ありがとー」

 ほっと胸をなでおろす。
 こういう質問は答えがほしいんじゃないんだ、自分の中ですに答えがあって同意して欲しいんだ。
 ありがとうハウツー本。


 商品はアイテムボックスに閉まって転移魔法で家に置いてきた。
 ホテルの庭にも魔法陣を仕込んでおいた。
 周囲監視の精霊と合わせて使えば転移したら鉢合わせ! みたいな事にはならない。
 カレンの幻影で替え玉もちゃんとホテルに居るように見えるしね。

 女性陣は思う存分ショッピングして充分満足したようだ。
 部屋に戻ってからもワイワイとファッションショーをしている。
 俺はニコニコとそんな姿を眺めていた。
 穏やかな時間が続くというのはありがたいね。

 その後も特に大きな変化もなく王都観光をしながらのんびりした時間を過ごすことが出来た。
 バッツさんはオークションの当日の朝にいつの間にか朝食に混じっていた。

 あ、別に食材として入っていたわけじゃないよ?
 あのムキムキな肉体の上に朝食が乗ってたら無言で扉を閉める自信があるよ。

 

 




 

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