3人の勇者と俺の物語

穴の空いた靴下

5章 冒険者ギルド

 いろいろと情報を集めないとね。
 特に僕はこの世界のこと何も知らないんだ。

 まずはお金。この国の通貨単位はゼニー、銭?この世界に共通したお金だそうだ。
 1ゼニーセン、5ゼニー銭、10ゼニー銭、50ゼニー銭、100ゼニー銭、500ゼニー銭、
 1,000ゼニー銭、5,000ゼニー銭、10,000ゼニー銭、100,000ゼニー銭、1,000,000ゼニー銭 100,000,000ゼニー銭 があるそうだ。高額銭は国家間のお話でほとんど流通はしないそうだ。
 だいたいそのまま1円=1ゼニー換算でOKだった。めんどいからゼニーはzね。

 お金はありがたいことに盾の中に100,000z入ってた。ちゃんと10,000銭10枚であの女神様は出来る女神様だった。
 宿代は一部屋一泊3500zだから女の子の部屋と2部屋で一日7000z。しばらくはなんとかなるね。

 食事を取りながら会議中。友達のために3人娘達もしっかりと聞いている。
 食事はサンドイッチ的なパンで野菜とハムみたいな肉を挟んだ料理、
 そういや僕、神の料理人ってスキル持ってたな。
 これ帰ったら就職迷わなくていいな、帰れなそうだけど……


 とりあえず街は結界で包まれていた。くぐるときにちょっと違和感を感じる。
 衛兵さんがいろいろと調べていた。
 今のところ魔神の手下も現れていない。
 衛兵が砂漠に住むサンドワームってでっかいミミズをトレインして確かめてたけど人に敵意があると弾かれるようで町の防衛が楽になるって喜んでいた。

 街に入ったり出たりするのと身分証明書代わりにお約束の冒険者ギルドで登録することになった。僕は異世界人だし、3人娘は田舎の村の子なので身分証もないんだけど身元引受人に街のシスターであるサラスさんがなってくれたのでスムーズに発行してもらえるようになった。
 お決まりの、こんなおじょーちゃんや坊主が!? イベントはなかった。ギルド内も掲示板とカウンターぐらいで小さかった。いままで周りに何もない場所のギルドなんてこんなものらしい。受付嬢は茶色の肌の、おじさんだった。
 3人娘達はまだ14歳だけど12歳からは登録可能だから問題はなかった。
 お約束のFランク冒険者の誕生だ。
 ランクはレベルと依頼をこなすことで決まるらしい。
 レベルがものすごい高い人がお使いみたいな依頼をやる必要が無いようにだそうだ。確かに。
 レベルだけ見る道具は各ギルドにあるようで便利な世の中になっています。
 各ギルドをつなぐ通信設備みたいなものもあるそうで、鳩とかそういう世界観じゃないみたいだねこの世界バスタールは。



 「女神様のアドバイス通り武器はそれぞれ剣と槍と斧。そこに力を通すと聖剣が補助してくれるそうね」

 「「「はい」」」

 今はちょっと開けたところで3人が武器の練習中。
 みんなの武器や鎧、着替えなどの日常品を買って財布の中も30,000zを残すのみ、宿屋代金が危険で危ない。

 僕もバイセツ先生に盾の使い方をレクチャー中です。

 『目をつぶるな! その隙に攻められたらお陀仏じゃぞ!』

 「は、はいぃ!」

 『ほらほら! ずっと大きくしてるとへばるんじゃろ? ちゃんとコントロールしろ、きちんと踏ん張れ!!』

 ドSだこの人。
 結局あっという間にへばったせいですぐに訓練は中止になった。

 『早くレベル上げないとどうしようもないな、嬢ちゃんたちのほうが遥かに筋がいい。』

 脇を見ると薄っすらと光る武器を手に3人が色々な動きをしてる。
 自分の体じゃないみたいに動く~~と3人共楽しそうに、そしてすさまじい動きをしてる。素人でもわかる、あれは強い。
 さらに3人共魔法適性があるらしく、カイちゃんは当然なんだけど、メディアスさんから魔法の基本的な考え方も教わっていた。俺も一応あるから訓練方法は聞いておいた。

 臍下に意識を集中すると温かい力を感じる。その力を体中に巡らすようなイメージで動かしていく。全身に巡らせたらそれを出来る限り早くなめらかに回し続ける。ラノベとかで読んだ方法で何度も試していたので驚くほどスムーズに出来た。問題は流れる力が物凄く弱々しいことだけだ。

 「ウォルの力が全く出てないのね、何が原因なのかしら?」

 メディアスさんも僕のだらしなさに困惑気味の有様である。

 そんなこんなで日も下がってきたので宿へ戻ることにする。
 ちょっと試したいことがあるので市場で食材を買って帰宅。
 いざとなったらサラスさんの教会で借りようかと思っていたけど、
 宿に共同の台所的なところがあったのでそこを利用する。
 オアシスからの豊富な水があるので水は貴重品!! みたいなことはなかった。お風呂はないけど身体を流すぐらいに豊富に使えたのは本当によかった。
 暑いから汗かくからね。
 3人娘と犬とフェレットがお風呂に行っている間に台所で食事を作ってみる。
 スキルが気になるんだよね。楽しみだ。

 「見える、見えるぞ!」

 どの食材をどう切ってどう料理するといいのか、その手順。

 「動く、自然に身体が動く!!」

 それを的確に調理する技術。それらが湯水のように湧いてくる!
 なんでこれが戦い用じゃないのさ!!

 皆がお風呂からあがるまでに、
 6人前の調理をなんの苦労もなく終わらせてしまった。
 サンドワームのハンバーグ、ジャガイモと卵のスープ(実際は何かわからないけど)、小麦粉(と思う)から作ったパン。パンまで作れてしまった。ナンみたいな感じだけど発酵のタイミングや環境づくりも自然とわかってしまう。見た目も美味しそうに出来た。見たことのない食材だろうが調味料だろうがわかってしまう。調味料はセイちゃんが持っていたものからお借りした。

 「わー! ワタル凄い!」

 「ワタルさんこんな特技があったんですね。」

 「ワタ兄の料理、美味しいの?」

 「わ、わかんない!」

 僕の自信満々な答えに困惑しながら恐る恐る口に運ぶ。
 俺も、恐る恐るスープを口に運ぶ。

 「!? こ、これは!!」

 そこからは皆無言だった。無言ではあるが鬼気迫る感じで食べ続けた。
 足元ではバイセツさんとメディアスさんもモリモリと。

 「セイが作るより美味しいもの初めて食べた」

 「信じられない」

 無言でクウちゃんがうなずく。
 我ながら、とんでもなく美味しかった。
 いや、美味しいなんてセリフが陳腐になる。
 なぜ自分の手からこのような料理が生まれるのか不思議でならない。

 「向こうでもこんな料理食べたこと無いわ」

 『ありきたりな料理であるがゆえ、異質さが極まる。
 道を間違えておるなワタル、この道を進めば間違いなく天下が取れる』

 自分が一番わかっているので言わないでよバイセツさん。

 「でも、これは危険ね。こんな料理毎日食べたらもう戻れない。
 ワタル! 料理はなにか特別なことがなければしちゃだめよ!」

 メディアスさんがいつになく真剣だ。

 『そうじゃな、この腕前を知ったら偉い奴らが何をしてくるかわからん……』

 バイセツさんまで、そして3人娘達よ泣きそうな顔をするでない。

 「そ、そしたら次は塔をクリアしたら作りましょう!」

 その言葉に全員の心が一つになったことは言うまでもないだろう。
 明日への決意を胸に4人と2匹は眠りにつくのだった。



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イチノセ ワタル
 Lv1 高校生
 HP 120
 MP 30
 Str 7
 Agi 6
 Vit 7
 Int 7
 Luk 10

 スキル 女神の盾 勇者の卵 器用 神の料理人 言語理解 大器晩成()
 魔力操作New! 微小魔力操作New!

 リク
 Lv1 村娘
 HP 210
 MP 30
 Str 9
 Agi 9
 Vit 8
 Int 6
 Luk 15

 スキル 聖斧の力 頑丈 根性  魔力操作New!

 カイ
 Lv1 村娘
 HP 150
 MP 100
 Str 7
 Agi 9
 Vit 5
 Int 12
 Luk 13

 スキル 聖槍の力 聡明 天賦の魔力 魔力操作New! 魔力増幅New!

 クウ
 Lv1 村娘
 HP 310
 MP 220
 Str 11
 Agi 13
 Vit 10
 Int 18
 Luk 50

 スキル 聖剣の力 天才 直感 魔力操作New! 環境魔力利用New!


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