幻想郷改造計画〜少年は河童の少女に恋をする〜

怠惰のあるま

星熊童子との遭遇からの花畑



俺は古明地さんからの脅迫を受け、地霊殿から飛び出した。
あの人と戦ってわかったけど、古明地さんは身内以外には容赦無い。たぶん躊躇いなく殺しもすると思う。あの時もしも何かの間違いでアルマさん達の誰かを傷つけていれば俺はこの世にいられなかっただろう。
まあ...今の状況でも殺されそうだけど。とにかく逃げよう。早く地上にいる河城の元に行こう。あいつの顔を見て安心したい。
そんな軽く精神的に疲弊していると背後から声を掛けられた。

「なあちょっといいかい?」

後ろを振り向くとそこに居たのは俺よりも身長が高くガタイのいい金髪ロングの女性だった。そして、額からは星のマークがいくつか付いている立派なツノが生えていた。
見るからに鬼だ。しかし、この人の格好。下はちょっと透けてるロングスカートを履いてるけど上が体操着っぽい。なんか...エロい。
と、ボーッとしてるわけにもいかない。

「......俺ですか?」

とりあえず、辺りを見渡して自分に声を掛けた事を確認すると女性は頷いた。

「私は星熊勇儀って言うんだが。お前さんは?」
「俺は新月黄泉です。それで...俺に何か用ですか?」
「いやぁ...ちょいと暇しててさ。相手してくんないかな?」

えっと。これはどういう状況かな。
全く初見の女性である勇儀さんから暇だから相手してと言われたんだが。どうしようか。

「それはお話し相手という事ですか?」
「まあ、語るには語るね。こっちの方で」

そう言って勇儀さんは自分の胸の前で拳と拳をガツンとぶつけ合わせた。
気のせいかな。勇儀さんに拳で語ろうと言われてる気がする。

「それは喧嘩しようと捉えていいですか?」
「物分りがいいじゃないか。で? 相手してくれるのかい?」
「て、丁重にお断りします...」
「そうかい。まあ急に喧嘩しようって言った私が悪いか。すまないね」
「い、いえ。気にしないでください」

勇儀さんは喧嘩好きみたいだけど礼儀のようなものはあるみたいだ。断ってふざけんな! とか言われるんじゃ無いかと内心ビビったぜ。
そうして一安心していると何故か前の方からアルマさんとパルスィさんが歩いてきた。

「あれ? 新月少年と勇儀だ。何してんの?」
「おお、アルマじゃないか! 良いところに!」
「嫌だ」
「まだ何も言ってないじゃないか」
「どうせ喧嘩しようって言うんだろ? 嫌だよ。めんどくさい」

このアルマさんの反応を見るに勇儀さんはいろんな人に勝負を仕掛ける人のようだ。

「どうせ新月少年にも喧嘩吹っ掛けたんだろ?」
「ああ、断られたが」
「あんたと戦ったら新月少年一発で死ぬからやめてやれ」
「...え? 死ぬ?」

ポカンとした表情をしているであろう自分にアルマさんは説明してくれた。

「知ってるかわからんが勇儀は昔、妖怪の山で鬼の四天王と呼ばれた程の鬼だ。人間が太刀打ちできる相手じゃねえ」
「アッハッハ! そんな褒めないでくれよ!」
「...今ではただの酔っ払いよ」

パルスィさんの一言に勇儀さんは困ったように大笑いしてた。うん。酔っ払いと言うのは合ってるな。しかし、文さんから聞いてはいたが鬼の四天王の一人がまさかこんな地底の奥深くにいるとは。しかも酔っ払いとして...
まあ、会えただけでも運が良かったりする? いや、会った途端に喧嘩吹っかけられたら運良くない。むしろ悪い方だ。

「おっとそうだ。新月少年地上に戻るんだよな?」
「あ、はい。そうですが」
「どうやって?」
「え? あ...」

そう。俺がここまで来れたのは文さんがいたおかげだ。しかも、数秒もせずについたために道のりも見れていない。つまりどう言うことか。帰り道がわからないんだ。
いやまあ...帰ろうと思えば帰れるだろう。道中妖怪に襲われるがな! 命を脅かす帰り道とか恐怖以外の何物でもないよ。

「ど、どうすれば...!」
「あの新聞記者のことだ。スクープ見つけてお前のこと忘れてんだろ。俺が送ってってもいいが...まあ...諸事情により俺は許可なく地上に出れないんだ」

許可なくってことはアルマさんはここに留まらなきゃいけない理由があるってことか?
そうなるとアルマさんより偉い人からの命令ってところかな。

「送ってくぐらいなら私も怒らないわよ」
「というわけだ。地上に行こう新月少年」
「パルスィさんの許可必要なの!?」
「お前...パルスィを一人にできないだろ」

もしかしてアルマさんが居ないうちにパルスィさんの身に何か起こるんじゃないかって心配なのかな。だとしたら心配性過ぎる。けど、やっぱりいい人だ。

「パルスィが他の男に取られるかもしれないだろ?」
「想像の斜め上の心配だったよ!!」
「アルマ。私があなたを裏切ると思うの...?」
「俺はお前との約束を破りたくないだけだよ」
「アルマ...」
「パルスィ...」

なんなのこの二人。
助けを求めるように勇儀さんに視線を移したんだけど。彼女も苦笑いしてましたよ。

「こんなに依存し合う夫婦そうそういないよ」
「ホントそうですよね...」
「まあ、羨ましくないと言えば嘘になるけど」
「え...? 意外...」
「私だって女だよ? あんな風に自分を想ってくれる殿方は欲しいもんだ」

そうゆうものなのか?
俺は女心というものは分からないが...勇儀さんでさえ思うのだからそうゆうものなんだろうな。全然分からないけど。
しかし、アレは度を超えているというか...異常というか...一言で言うなら依存怖い。

「おっと...パルスィの事しか考えてなかった」
「何ですかそのボーッとしてたみたいな言葉は」
「気にすんな。さて、新月少年。早速地上に向かおうではないか!」
「あ、はい」

何だかんだでちゃんと送ってはくれるんだ。アルマさんの評価は付けにくいよ全く。
とにかく、これで地上に帰ることができるよ。やっと河城に会える...なんか長い間会ってなかった気がするなぁ。気のせいかな?
まあいいか。早く地上の空気を吸いたいし、そそくさと地上に帰ろう。

「アルマさんお願いします」
「おうよ。と言っても数秒もかからんが」
「え? それはどうゆーーーーーー」

俺の言葉は途中で途切れ気がつくと浮遊感と共に地面に出現した灰色の沼に飲み込まれた。







△▼△







「ーーーーーうことですか....ってあれ?」
「ほら、地上だ」

沼に飲み込まれた俺は気づけば広々とした花畑の前に立っていた。イヤイヤイヤ!! ちょっと待ってさっきの沼は何!? 飲み込まれたと思ったら地底から地上に移動してたんだけど!? おかしいでしょ!?

「ああ、先に言っておくとさっきの灰色の沼についてはノーコメントだ」
「余計に気になる!!」
「この先の人生。平穏がなくなっていいなら教えるぞ」
「なんでもないです」

そんなこと言われて聴きたくなる訳ないでしょうに。しかし、ここどこだろう?
とっても綺麗な場所だ。外の世界でもこれほどの花畑が見れるだろうか? あったとしても手入れが大変そうだ。そもそもここは誰かの手によって作られたものなのかすら怪しい。自然に生まれていれば別だけど。

「見惚れてるところ悪いが花に手を出すなよ?」
「え? どうしてですか?」

一輪ぐらい持って帰ろうと思ったんだけど。もちろん河城にプレゼントしようかと思ったんだが......持ち主がやっぱりいるのかな?

「ここの管理人は残虐非道でな。花に手を出そうものなら骨一つ残らん」
「こ、こわっ...!!」
「へぇ......それは一体誰のことかしら?」

俺は寒気を覚えた。
怒った時の古明地さんと対峙しているような気分だ。ゆっくり後ろを振り向くと白のカッターシャツとチェックが入った赤のロングスカート。その上から同じくチェック柄のベストを羽織り、スカートには花形のワッペンが付けた緑色のショートカットの女性がいた。
その人は殺気を放っているはずなのにどこか美しさを感じた。
見惚れているとアルマさんが苦笑しながら彼女の名を呼んだ。

「よ、よう幽香。ひ、久しぶりだな!」
「ええ、久しぶりね。何年振りの地上かしら?」
「え、えーっと...一ヶ月かな〜?」
「10年よ」

10年!? アルマさんそんなに地上に出てなかったの!? 引きこもりすぎでしょ!!

「だ、だってさぁ」
「パルスィが原因なのはあるだろうけど。単純にあなたが地上に出たくなかったんでしょ?」
「うっ...!」
「図星ね。はぁ...それで? そっちの子は?」
「あ、えっと俺は新月黄泉っていいます」
「ふ〜ん...」

興味無さげに反応すると俺の事を観察するように風見さんはジロジロと見つめてきた。すると、アルマさんに向きを変えて言った。

「この子もあの子と同じ外来人なのかしら?」
「ああ、そうだよ。こいつもあいつと同じだ」
「あいつ...?」

前にもアルマさんが言ってたような気がするけど、もしかして俺以外にも外来人がいるのか?

「まあいいわ。私は風見幽香。この花畑の管理者よ。よろしく黄泉」
「よ、よろしくお願いします」

軽い会釈をするが、すぐに興味を無くしたようでまたアルマさんへと向きを変えた。

「それよりもアルマ。イラとリティアは?」
「え? 地底だけど」
「なんで一緒にいないの?」
「いや、俺は新月少年を地上に連れてきただけだし。本来来るつもりなかったし」
「.........なら会いに行くわ」
「はぁぁ!?」
「パルスィにも久しぶりに会いたいから」

何だろう。アルマさんが物凄く嫌そうな顔してる。なんか意外だなぁ。この人ってパルスィさん以外のことは全く興味のない人で反応も薄いと思ってたけど。違うのかな?

「わかったよ。その代わり新月少年を送り届けたらだ」
「いいわよ。迎えに来るの待ってるわ」
「はいはい...行くぞ新月少年」
「え? あ、はい。それじゃあ失礼します風見さん」
「またね黄泉」

そうして、そそくさとこの場から離れようとするアルマさんを追いかけ俺は花畑を後にした。

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