幻想郷改造計画〜少年は河童の少女に恋をする〜

怠惰のあるま

復元と再構築

【復元を開始します】

無機質なアナウンスがなる。
それを合図に赤いサークルの中にバラバラとなった研究所の破片が写ったパズルのピースに似たものが浮かんだ。
ゆっくりとピースを見定めて俺は指を動かす。
壁と同じ色のピース。床と同じ模様のピース。窓の枠とガラスの破片が写ったピース。机、書類、ベッド、その他諸々の備品がそれぞれ写るピース。
共通するピースをまとめていく。
その不思議な光景に河城は戸惑いを見せているが目がキラキラと輝いている。
数分が過ぎた頃。
あれだけバラバラに散らばっていたピースは綺麗にまとめられた。
とりあえず、復元は完了した。ひと段落つこうか。

「新月!新月!このサークルはなに?あのパズルのピースのようなものは!」
「今は休ませてぇ......」
「えー!教えてよぉ!!」
「はぁぁ...めんどくさいから簡単に説明するぞ。あのサークルは復元したい場所にある記憶、いわゆるデータを検出するものだ。そして、あのピースのような物が検出された断片的なデータ達さ」

うんうん!と頷く姿はなんか愛らしかった。いや、何を言ってんだ俺は。
まあいいや。
そろそろ再構築リブルーディングを始めるとしよう。

【再構築開始】

データの断片をうまく繋ぎ合わせる。
徐々に穴がふさがり壊れる前の状態へと近づいていった。
ものの数秒で研究所に空いた穴は塞がり完璧なまでに再構築が完了。
フゥ...疲れた。
指を鳴らしてサークルを消した。

【再構築完了。能力を終了します】

アナウンスが聞こえたが正直疲れすぎて内容が頭に入って来ない。
復元と再構築は体力を削りながら使用する能力。よってしんどい。
ドサリと床に座り込み大きく深呼吸をした。

「すっごぉい......」
「文句ないか?」
「文句も何も...直してくれた上に能力を見ることができたんだ!満足だよ!」
「そうか...それで一つ問題がある。俺も疲れて動けん」
「え?」

あんだけ大掛かりに能力を発動したんだ。体力は大きく削られ河城と状況が似て足腰が動かせない。
うん、あれだ。二人とも動けない。

「大丈夫。僕はもう動けるから」
「ああ...なら俺を部屋まで引きずってくれ」
「はぁい!」

流石にこのまま引きずられれば摩擦で痛いから、俺が触れた場所から摩擦零になるように改造。
いわゆるご都合主義です。お疲れ様です。
一回能力の範囲をミスって河城の足元まで影響が及んでしまい盛大に転んだ。
そのことで河城は白かったことが分かった。
本人には見てないと言った。正直に言ったら死ぬぜ?
部屋に入るとそこに広がるのは設計図や機械の部品の山。至る所に散らばる道具の数々...もはや家では無いのでは?

「これでも自室なんだよ!」
「少しは片付けろよ...」
「むぅ〜!僕は研究で忙しいんだ!!」
「研究以外に何かやることないのか?」

可愛く首を傾げた彼女は数分唸った。
すると、ニコッと笑う。
なんかあったのかな?

「ないね!」
「ないのかよ!!」

ないのにあんな笑顔で言うんじゃない。てっきりあるのかと思ったわ!!
ま、まあ河城は研究が一番って感じがするからな。
そこのところは出会ってまだ数時間だけだがわかる。そういえば、河城と紫さん以外に幻想郷の生き物を見ていないが...ここは幻想郷でどこらへんの位置にあるんだ?

「なあ、ここって幻想郷で言うとどのあたりなんだ?」
「えーっと、ちょっと待ってて」

いつの間にか歩けるようになった河城は自室から丸められた紙の筒を持ってきた。
それを俺の前に広げる。見てみると幻想郷の全体図が描かれた地図であった。やっぱりこの世界が古いせいか地図も昔の地図っぽい。

「僕たちがいるこの建物はこの妖怪の山と呼ばれる山岳地帯の中にあるんだ」
「この真ん中のぉ...はく...れい?」
「ああ、博麗神社のことか。そこにはこの幻想郷を管理する博麗の一族が住んでいるんだ。まあ、今は一人の巫女しかいないけど...」

巫女が一人の神社か。
しかもこの幻想郷を管理している一族の一人...俺はてっきり創造者である紫さんが管理してるものかと思っていたがそうゆうわけではないんだな。
あの人が管理してる姿が想像できないけどさ。
ぜぇんぶ他の人に任せてそうだ。あんな性格だし。

「もしかして、幻想郷を探検したい?」
「そうゆうわけではなかったが...探検か。それもいいな」
「探検するにしても君は幻想郷に無知すぎるね」
「うっ...」
「僕の家で暮らすんだろ?幻想郷のことなら教えるよ。だからぁ....」
「...わかったよ。右手だけならいじらせてやる......」
「やったあああ!!約束だよ!」

ぴょんぴょんと跳ねて喜ぶ河城の姿を見て、まあいいかと思った。
別にこいつもバカみたいな改造はしないだろ。したら復元するからいい。
右手程度ならすぐに直る。
消費した体力が回復し、軽くストレッチをしていると
グゥゥゥ......ぅぅ
小さな腹の音が鳴った。
俺ではない。なら誰か決まってるだろう?
俺の目の前で元気に跳ねていた女の子さ。
顔を真っ赤にしてお腹を押さえている。時間も時間なんだろうな。

「恥ずかしがるなよ。お腹が空けば誰しもなるだろ」
「そ、そうだとしても恥ずかしいんだよぉぉ......」
「はぁ...変なところで乙女だな。お前って何食うの?人間?きゅうり?」
「に、人間なんか食べるかぁ!!きゅうりは好きだけど...」

あ、そこは俺の知ってる河童だ。

「じゃあ、俺らと食うものは同じなのか?」
「そうだね。君らと食べる物は同じって考えでいいよ」
「なら作るか」
「いいの?」
「どうせお前作れないだろ?」

うっ!
と、小さく唸り目を逸らした。
研究に没頭しすぎて料理の腕が怠っているんだな。
まあ、なんとなく作らなそうなイメージがあったから聞いてみたが、図星だったわけで。

「お前...今までどうやって飯食ってた?」
「ひ、人里の盟友に恵んでもらってた....」
「......きゅうりか?」
「はい...」

こいつの食生活が荒れてることがよくわかった。
今まできゅうりだけでよく生きてこれたな。俺だったら一か月でも嫌だぞ。
やっぱり妖怪は人間と出来が違うのかな?

「仕方がない。きゅうり以外に何か食べ物あるか?」
「お肉と野菜を少々...」
「充分だ。台所あるか?」
「う、うん」

戸惑う河城に連れられて一切使った形跡がが見受けられない台所に案内された。
この子、ほんとうに料理しないのね。
これから一緒に住む身としてはかなり悩まされるな。別にどうでもいいが。
さぁてと料理しますか。





△▼△





数十分が経過し、部屋で待っている河城に作った料理を持って行った。
安直に野菜炒めにしたが大丈夫だろう。
きゅうりしか食ってない奴には野菜炒めでも充分な栄養補給になる。
第一、なんできゅうりだけしか食ってないんだ。他にもいろいろと野菜があったろうに...まさかと思うがきゅうり以外の野菜がくえないとかないよな?
...そんなわけないか。子供じゃないんだし。
扉の目に立ち、扉を数回ノックして少し間を空けて入室した。

「あ!できたの?」
「おう。野菜炒めだけどいいか?」
「うん!僕は特に好き嫌いとかないから大丈夫だよ!」
「そっか。ならよかった」

コトン...!
テーブルに料理を盛ったお皿を置いた。
久々にまともな料理を食べるのか、軽く匂いをかいだり箸の持ち方を確かめていた。
別に無理して箸で食わんでもフォークとかあったろうに....

「よし!バッチリだ!それではいただきまぁす!!」
「どうぞ」

律儀に手を合わせて感謝をする姿はちょっと意外だった。
てっきり何も言わないで食べるものかと思ってたからさ。意外に河城って真面目なのかな?

「新月...」
「ん?どうした?口に合わなかったか?」
「ううん!美味しい!けど...味がちょっと濃い」
「ああ、悪い。きゅうりばかり食べてたって言ってたから味は濃いほうがいいかと思ってさ」
「たまにきゅうり以外も食べてたよ!」

そうなんだ。
まあ、きゅうりを毎日食べてたら味気なさすぎるわな。
その後、数分で料理を平らげ満足そうな顔をしていた。

「はぁ...おいしかった!ありがとう新月ぅ!」
「そう言ってもらえて嬉しいよ」
「新月は前の世界でも一人で料理をしてたの?」
「一人で住んでたからな。親兄弟も居なかったし」
「え?」
「俺は捨て子だったらしい。ひろってくれた里親に迷惑をあまりかけたくなくてさ。高校では独り立ちしようかと思って」

義父さんと義母さん元気にしてるかな。
勝手にいなくなった俺を心配してたりしないよな?警察沙汰になってないことを祈ろう。
なんとなく河城の顔を見ると目から一筋の涙を流していた。

「ど、どうした!?」
「い、いや。捨て子って言ったから...」
「......はは。変な奴だな」
「むぅ!今の話を普通に話せる君の方が変だよ!」
「そうかもな。けど、本当の両親が例え今も生きていても俺の両親は育ててくれた里親の二人さ。だから悲しくはない」

あの二人は俺を本当の息子同然に育ててくれた俺の命の恩人なんだ。
結局...恩を返せないままこっちの世界に来ちゃったし、俺って親不孝者だな。

「さてと...今日はもう寝ようか。いろいろと疲れた」
「そうだね。それじゃあ改めて僕の部屋で寝ようか」
「おっとその前に食べた皿を片付けないと」
「わかった。じゃあ僕は寝る準備をしておくね?」
「ああ、頼む」

河城が食べた皿を台所に運び洗い物を済ませて部屋に向かった。
扉を開けると先ほどまで資料などが散乱していた部屋は綺麗になっていた。
この短時間でよく綺麗にしたもんだ。
それで、肝心の河城はというと布団を敷いてその上に座っていた。
疑問なんですが、なぜ布団は一枚しか敷かれてないのですか?

「たまたま使える布団がこれしかなかったんだよぉ〜」
「俺、ソファとかで寝ようか?」
「それは新月の体に良くないよぉ。差し支えなければ僕と一緒に寝るかい?」
「お前がいいなら俺はいいが...」

年頃の男女二人が同じ布団で寝るのはいいのか?
河城はいいと言っているが寝付くことができない姿が想像できる。

「じゃあ一緒に寝ようか!」

二人で一枚の布団に入ると布団はかなり小さく。河城との距離が近い。
彼女との距離を気にする俺とは反対に河城はグッスリと眠っている。
...俺って男として見られてないのかなぁ。
自分の魅力の無さにショックを受けながら俺は寝付けない夜を過ごした.........

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