ボーイ・ミーツ・ガール・バイ・ザ・シー
001
ルイネス島は、世界のどこかにある小さな島だ。
もちろんその島が世界のどこかにある、ということは知っていても正確な場所は知らなかった。だって知らなくても生活は出来るから。
この島はエネルギー源であるシルミード鉱石が良く採掘出来る場所だった。シルミード鉱石はそれ単体だとただほのかに光る綺麗な石にしかならないけれど、それを削って水に溶かすとよく燃える。それが石油や灯油の代わりになる、ということ。ガソリンがとうに無くなってしまったので、これで代用しているということ。
そして僕はそんな島の海岸沿いにある舟屋の一つ、その二階にある僕の部屋で窓から海を眺めていた。ただ眺めていたわけじゃない。海を眺めていたら父さんが帰ってくるような、そんな気がしたんだ。
父さんは僕が五つの時に亡くなった。乗っていた船が難破してしまい、波に飲み込まれてしまったのだという。墓はある。けれど、父さんの遺体は最後まで戻ってくることは無かった。
だから僕は心の奥底で、まだ父さんは生きているのではないか、って思うことがある。それは僕の勝手な思い込みかもしれない。それは僕の現実逃避かもしれない。けれど、毎日僕は気が付けば海を眺めている。それが僕の日常になっていたから。
「……あれは」
僕がそれを見つけたのは、ちょうどその時だった。
ボートが浮いていた。
ボートがそのまま波の動くままになっていた。
普通に考えて、それはおかしな話だった。そのボートはこの辺りでは見たことの無いタイプだったし、釣りをするのであればもう少し大きなボートを出すはず。となると……。
「何かマズイかも……!」
そう思って僕は部屋を飛び出した。
「じっちゃん!」
隣の部屋に居るじっちゃんに声をかけないと。
じっちゃんは本を読んでいた。分厚い本だった。ああいう本は何だか苦手かな。漫画があればいいや。
「ん。どうした、ショータ」
「何か変なボートが居るんだよ! もしかしたら誰かおぼれているかもしれないから、ちょっと見てくる!」
よし、報告完了。
そして僕は走って階段を下りて行った。
「気を付けるのじゃぞー」
そんなのほほんとした雰囲気が伝わるような言葉を投げかけられたけれど、もう階段を下りていたからそれを聞くことも出来なかった。
⚓ ⚓ ⚓
一階は全部ボートのドックになっている。だって海に面しているから。海に面しているドックはなかなかに使いやすい。だって直ぐに乗ることが出来る。
モーターボートは波が荒い時に勝手に出ていかないようにロープで繋いでいる。
これを外して、モーターボートに乗り込む。
ゴーグルを装着して、準備万端。
頷いて、僕はアクセルレバーを前に押した。
同時に、ゆっくりとモーターボートは動き出し、海へと飛び出していく。
僕はこの瞬間がとても好きだ。
舟屋から飛び出していく瞬間が、とても好きだ。大海原に出た、という感じがするからかもしれない。この感覚は何度経験しても色あせることは無い。いつも、毎回同じように新鮮に感じる。どうしてだろう。解らないけれど、これはきっと誰に伝えても意味のないことかもしれない。
もちろんその島が世界のどこかにある、ということは知っていても正確な場所は知らなかった。だって知らなくても生活は出来るから。
この島はエネルギー源であるシルミード鉱石が良く採掘出来る場所だった。シルミード鉱石はそれ単体だとただほのかに光る綺麗な石にしかならないけれど、それを削って水に溶かすとよく燃える。それが石油や灯油の代わりになる、ということ。ガソリンがとうに無くなってしまったので、これで代用しているということ。
そして僕はそんな島の海岸沿いにある舟屋の一つ、その二階にある僕の部屋で窓から海を眺めていた。ただ眺めていたわけじゃない。海を眺めていたら父さんが帰ってくるような、そんな気がしたんだ。
父さんは僕が五つの時に亡くなった。乗っていた船が難破してしまい、波に飲み込まれてしまったのだという。墓はある。けれど、父さんの遺体は最後まで戻ってくることは無かった。
だから僕は心の奥底で、まだ父さんは生きているのではないか、って思うことがある。それは僕の勝手な思い込みかもしれない。それは僕の現実逃避かもしれない。けれど、毎日僕は気が付けば海を眺めている。それが僕の日常になっていたから。
「……あれは」
僕がそれを見つけたのは、ちょうどその時だった。
ボートが浮いていた。
ボートがそのまま波の動くままになっていた。
普通に考えて、それはおかしな話だった。そのボートはこの辺りでは見たことの無いタイプだったし、釣りをするのであればもう少し大きなボートを出すはず。となると……。
「何かマズイかも……!」
そう思って僕は部屋を飛び出した。
「じっちゃん!」
隣の部屋に居るじっちゃんに声をかけないと。
じっちゃんは本を読んでいた。分厚い本だった。ああいう本は何だか苦手かな。漫画があればいいや。
「ん。どうした、ショータ」
「何か変なボートが居るんだよ! もしかしたら誰かおぼれているかもしれないから、ちょっと見てくる!」
よし、報告完了。
そして僕は走って階段を下りて行った。
「気を付けるのじゃぞー」
そんなのほほんとした雰囲気が伝わるような言葉を投げかけられたけれど、もう階段を下りていたからそれを聞くことも出来なかった。
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一階は全部ボートのドックになっている。だって海に面しているから。海に面しているドックはなかなかに使いやすい。だって直ぐに乗ることが出来る。
モーターボートは波が荒い時に勝手に出ていかないようにロープで繋いでいる。
これを外して、モーターボートに乗り込む。
ゴーグルを装着して、準備万端。
頷いて、僕はアクセルレバーを前に押した。
同時に、ゆっくりとモーターボートは動き出し、海へと飛び出していく。
僕はこの瞬間がとても好きだ。
舟屋から飛び出していく瞬間が、とても好きだ。大海原に出た、という感じがするからかもしれない。この感覚は何度経験しても色あせることは無い。いつも、毎回同じように新鮮に感じる。どうしてだろう。解らないけれど、これはきっと誰に伝えても意味のないことかもしれない。
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