龍と友達になった少年

榊空

少年の過去五

ソラが大地の家に来てから、数ヵ月が経ったある日ソラたちは三人で仲良く遊んでいた。

「ソラお兄ちゃん! 今日は何して遊ぶの?」
「そうだなぁ、海は何したい?」
「おれ? 俺は体を動かしたいな」
「まぁ、海ならそうだよな」
「えー、美樹、体動かすのやだ」

美樹は海の言葉に頬を膨らませると、海が困ったような顔をする。

「そんなこと言われても、俺ならこう言うってわかってるだろうに」
「だから、ソラお兄ちゃんに聞いたんだもん」
「なるほど、じゃあソラが悪いな」

海は美樹の言葉に納得したのか、ソラの方をからかうような眼差しで見つめる。

「あー、なんかごめん。とはいえ、一人で遊ぶことが多かったから、あんまり出てこないんだよ」
「え、そうなの? むー、じゃあどうしよう」
「うーん、剣の練習でもするか?」
「私は見てるだけで面白いから、ソラお兄ちゃんが良いならそれでもいいよ!」
「別に僕はいいけど、それって遊びなの?」
「兄ちゃんと遊ぶときは大体剣の練習になるぜ?」
「大地さんならまぁ、ありえるかな……」

 この数ヵ月一緒に住んで、大地のトレーニング好きを知ったソラは、納得した顔をして頷いていた。

「じゃあ、剣を持ってこようぜ」
「そういえばどこにあるの?」
「まず最初に兄ちゃんのところにいかないと、勝手に使ったらすごい怒られる」
「まぁ、危ないからね。じゃあ、いこうか」
「うん! 大地お兄ちゃんなら多分お昼御飯の準備をしてるんじゃないかな?」
「じゃあ、家に帰ろう!」

 ソラたちが家に帰ってくると、大地は楽しそうにキッチンで料理を作っていた。

「兄ちゃん! ただいま!」
「ただいま」
「大地お兄ちゃんただいま!」

 ソラたちの声に気が付いたのか、料理する手を一旦止めてこっちを振り向く。

「おかえり、今日は帰ってくるの早いな。なにかあったのか?」
「これから、剣の練習でもしようかと思って」
「あー、剣を借りにきたのか。あと少ししたらお昼ご飯ができるから、食べてからな?」 
「分かった。そういえばソラは剣とか握ったことあるのか?」
「一回もない。そういうのは触らせてもらえなかったんだ 」
「そうなのか? じゃあ、最初は素振りからだな。まぁ、俺も最近始めたばっかだから一緒に頑張ろうぜ」
「うん! 頑張るよ」
「元気があるのはいいことだけど、とりあえず先に手を洗ってきなさい。ご飯もうそろそろ作り終えるから」
「「「はーい」」」

 大地の言葉に手を挙げて返事をしてから、三人仲良く手を洗って帰ってきた。

「早いなぁ、座って待っててくれ。あと盛り付けるだけだから」

 大地は手を洗ってすぐに帰ってきた三人を見て、苦笑しながらテーブルに座るよう促し、盛り付けた料理を持ってくる。

「どうせなら、四人でピクニックとかでも良かったかもな」
「お、兄ちゃんそれいいね! 今度四人で行こうよ」
「美樹はこの四人でなら楽しそうだからいきたい!」
「僕もそのときは料理のお手伝いします」
「お、楽しみだな。そのときはよろしくな」

 盛り付けられた料理を食べながら、一家で楽しく話をし終わったあと、大地が剣を四本もってやって来た。

「さてと、じゃあ行くか?」
「そうだね、兄ちゃんに今日こそは勝つ」
「素振りだけじゃなくて、戦ったりもするのか?」
「ソラは剣を握ったことがないらしいから、しばらくは素振りだけどね。海も最近やっと素振りだけから解放されたし」
「まぁ、素振りは剣を振るのに慣れるための練習だからね、終わりはないんだけど。ある程度慣れてきたらソラも模擬戦をしてみようか」
「は、はい。その時はよろしくお願いします」
「そんなに固くならなくても大丈夫だよ」
「じゃあ、ソラお兄ちゃんは私と一緒に素振りしとこう。私が見てるから!」
「ちなみに、美樹は意外と細かいところに気がつくから動きの修正とかがしやすいよ」
「へー、そうなんですか。それじゃあ、よろしくね」
「ふふん、任せて!」

そうして、しばらくの間美樹に素振りを見てもらうことになった。

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