リアルの幼馴染みがこんなに萌えないものだなんて

石原レノ

結婚騒動

「ねぇ!ちょっと兄さん!これどういう!?」
俺の唯一の楽しみである休日の初日の土曜日。佐々波家では愛華の叫び声が響き渡っていた。
「どうしたー?最近出番がなくて久しぶりの登場だからテンションでも上がったのかー?」
「うん!今日は久しぶりだから、、、って違うよ!それよりこれどういう事!?あと出番って何!?」
そう言われて愛華が俺に差し出してきたのは婚約届け。
「えーっと、、新婦が蒼愛さんで新郎が瀧さんかぁ。こりゃめでたいなぁどこの人だろうね、、、、、あれ?」
よーく見てみると新郎新婦共に俺が知っている名前だった。
「ちょっと待て!これ俺じゃん!なに!?実は俺には許嫁いましたよパターンかこれ!」
「違うでしょ絶対!お父さんとお母さんそんなこと今まで一度も口にしたことないよ!」
とまぁここまでこんな会話をしてきた俺だが、ことの発端は分かっている。
蒼愛が転向してきた初日、俺と蒼葉が2人で結婚の約束をしていたらしい。俺は全く覚えておらず、その場しのぎで適当に返してしまったのだが、こりゃやばいな。ここで蒼愛がこられたら俺はもう―
ピンポーン、、、
いやまて、このタイミングといいこれはラノベ展開でいう本人来ちゃいましたよフラグだ。
「はーい!」
チャイムに反応して愛華が出迎えようとする。俺はそれを拒むように愛華の前に立ち塞がった。
「待ってくれ愛華。ここは俺が行くからさ、愛華はここで待っててくれよ。その話も片付いてないだろ?」
「え、、、う、うん。いいけど、、、」
今の俺の慌てぶりで愛華は俺に対して何かを感じ取ったのだろうか、何も問い詰めはしなかった。
恐る恐る足を運び、除き穴から覗いてみると、、、。
「やっぱり蒼愛か」
玄関をさっと開け、自分だけ出て素早く閉める。白い私服が蒼愛の清楚さを強調していて思わず見入っていまう。
「瀧くん?」
「あ、おう悪い、、、、それでだな」
「あ、あのね瀧くん!」
家に届いた婚姻届の話をしようとすると、蒼愛に口を挟まれてしまう。何やら蒼愛の顔が赤いような気がする。
「その、、、恥ずかしいんだけどね?その、、、婚姻届が届いてなかったかなぁって、、、」
「、、、え?」
俺が間抜けな反応をすると蒼愛は顔を真っ赤に染めて早口で喋り出した。
「いや!これはね!その!手違いというかふざけてやったっていうかね!あの、、、恥ずかしいんだけど、、、書いた婚姻届無くしちゃって、、、瀧くんのフルネーム書いてたからもしかしたらって思ってきたんだけどね、、、ほんとに!」
「あー、、、そういう事か」
「あるの!?」
俺の一言に蒼愛は興奮したように声を上げた。静かに頷くと蒼愛の赤面した顔は安堵を表す。
「ちょっと待ってな。持ってきてやるから」
「あ、いいの。それ持ってて?」
「な、なんで?」
嫌~な予感を覚えながらも問いかけると、今度はもじもじしながら蒼愛が言葉を放つ。
「そ、そのぉ、、、瀧くんが結婚してくれるって時の為に持ってて欲しいなって、、、」
「すぐ持ってくる!」
その場に駆け出しそうになった俺を、蒼愛はガシッとしがみついて止める。
「ちょっと待って!お願いだから持ってて!お願いだから!」
「いや俺がそんなもん持ってたら愛華から変な疑いかけられるし、てかその時に新しく書いたら良いじゃねえか!」
「その時、、、っ!」
何故か赤面する蒼愛。拘束する力も弱まり、再び俺は蒼愛と向き合う形となった。何やらまたもじもじしている蒼愛に、俺は軽くため息をこぼす。
「体弱いんだからあんまり無理すんな。顔赤いぞ?」
「えっ!嘘!私顔赤くなってる!?」
驚いた反応をする蒼愛に俺は頷き返すと、顔を隠すように背を向け、手を頬に当てる。
「、、、ほら、行くぞ」
「え?」
俺が蒼愛の後方へ、つまり玄関から出て路上へ出ると、蒼愛は疑問を生じた顔をしていた。
「家まで送ってやるから行くぞって事だ」
俺の言葉に蒼愛はポカーンとした後満面の笑みで俺に抱きついてきた。
「ちょっ!こんな所で何してんの!?」
俺が抵抗しようと蒼愛は離れようとしない。
「ふふっ。おんぶ〜」
昔っから蒼愛の俺に対しての甘えは収まる兆しがなかった。
「、、、その時になったら、、、か」
小さくこぼした蒼愛の一言は、俺の耳に届くことは無かった。

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