リアルの幼馴染みがこんなに萌えないものだなんて

石原レノ

こんな日常が続くと思うと

「………」
「どうしたの?」
現状を説明しよう。現時刻は多分9時くらい。朝目覚めた俺はふと誰かの存在を感じ寝た状態で横を見た。すると―
「何でここにいるんだよ。リン」
「今日から瀧の家に泊まるから♪」
「いや回答になってないんだけど…」
「瀧の家に泊まるから?」
「疑問形にしても同じだっつーの!何で朝早くから俺んちの!しかも俺の横に居るんだよ!」
「えー?だって早く会いたかったんだもん」
「馬鹿野郎!男にはな準備っつうもんがあんだよ!ちょっと廊下出てろ!目を閉じて部屋から出ろ!」
まずい。今の俺の部屋の状態はマジでまずい。見られて恥ずかしいものやらティッシュがある。あっ、鼻かんだティッシュですよ?
「何で目を閉じなきゃいけないの?………あ、」
「あ、察しみたいな顔止めてもらえます!?お前フランス帰りだろ!どこで学んで来るんだよ」
「むー。分かったよ。じゃあ入って良い時に呼んでね」
俺に言われた通り目を閉じながら部屋を出ていくリン。どうも出ていくときに迷いがないことから部屋の距離感を掴んでいるように見えた。
「ったく…」
大急ぎで部屋中のありとあらゆる物を片付ける。
―数分後―
「終わったぞリ……ン?」
部屋の掃除を終えリンを呼びに廊下に出たのだがリンの姿が見当たらない。
「どこ行ったんだよ…」
仕方なく辺りを探索しようといた…が。
「な、ナニヤッテンノ?」
「うわぁ……」
一階に繋がる階段に座り俺のものらしき本を読んでいるリンの姿がそこにあった。
顔を真っ赤に染めながら読んでいる。
「アノー。リンサン?」
「凄いねこれ…瀧ってこんな本読むんだ…」
「ちょっ、おまっ!いつの間に持ってったんだ!」
即座に取り上げ秒単位でもとにあった場所に戻す。リンは何やらニヤニヤしながらこちらを見てくる。
「瀧は大きいのが良いんだぁ。そうかそうか。ふふっ」
「お前何か勘違いしてないか?」
「勘違い?何を?」
きょとんとした顔で問いかけてくるリンに俺は自信満々で言った。
「俺が好きなのは幼馴染みだ」
「え……」
俺がそう言った途端にリンの顔が真っ赤になり数歩後ろに後退する。何か変なこと言ったかな……。
「えって、俺なんか変なこと言ったか?」
「だって……私も幼馴染みだし…」
次第にリンの声が小さくなっていき途中から聞き取れなかった。
「??まぁ良いや。下行くぞ。愛華や俺の両親に会うだろ?」
「え?あ、うん。そうする」
呆気にとられているリンを連れて一階へと階段を下る。
「おはよう。リン来てるよ」
「あらリンちゃん。いつ来たの?」
俺は無視ですか…。
「窓から入ったんだよ」
「窓からって、あのなぁちゃんと玄関から―」
「昔から変わらないわね。いらっしゃい。今日からお願いね。沢山手伝ってもらうから」
「こちらこそお願いします。手伝えることはするから頼ってね!おば様!」
………。
「ちょっと人の話を―」
「愛華を呼んでくるわね。リンちゃんはゆっくりしてて」
「お構い無く」
…………おい。
「……あっ瀧!いたの?」
「いくら俺でもそろそろ泣くぞ?」
「ふふっ。冗談だよ。愛華ちゃん来るから私行ってくるね」
そう言うとリンは母に続いて行ってしまった。結局無視ですか。いや、別に良いんだよ。な、泣いてなんかないし!
「………ぐすっ」



「旦那様奥様からお電話です」
メイドに促されその屋敷の当主はやりかけの仕事を放り出し駆け足で電話に向かう。「………もしもし………あぁ、うん。うん。す、すいません………あ、はい………え!?…………いやいや………あ、はい。了解しました…………はい」
静かに受話器をおき、深くため息をついた。表情はどこか浮かない顔をしている。
「…………まずいな…」

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