リアルの幼馴染みがこんなに萌えないものだなんて

石原レノ

リアルなんてこんなもんですよ

 人間、人生を生きていればなにが起こるか分からない。物語で例えるなら、美少女が異世界から来たり、異能が使えたり、ゲイのイケメンとアーッ! な展開に……ないか。
 とにかく、人生というものは何が起こるか分からない。それがたとえラブコメでも。ラブコメにも色々なジャンルがある。妹、姉、生徒会長、先生、人妻、ゲ……とまぁ、後半はやばかったけど、これ以上にカテゴリは存在する。
 そのなかでもこの俺(17)が大好きなジャンルがある。幼馴染み。これほどに最高で甘いものはない。ちなみに二番目は義妹で三番目ゲ……。どうでもいいね。うん
 幼馴染みが互いを気にし、完結するまでの過程が俺は大好きである。実際俺にも幼馴染みはいる。
 が、俺が大好きなのはあくまで物語の中である。それはなぜか。……まぁ、今からわかるよ。うん。



「ほら瀧!早く起きないと遅刻しちゃうって!」
 小鳥たちの囀ずりが聞こえる春の朝、俺は幼馴染みのめぐみに起こされた。恵とは幼稚園からの仲で去年の夏から付き合い始め、今では毎日おこしに来てくれるという仲になっている。
穏和な性格で誰からも好かれる恵と付き合っている俺は一部の男子生徒から非難の目を向けられている。あぁ幸せ。
「恵か……今起きるよ」
 そう言って体を起こしたその時。
「はぁ?何言ってんの?恵って誰?」
 え?………あれぇ、おかしいな。恵はこんな口きかないはずなのに………あっこれは夢だ。そうだきっとそうだ。よし寝よう。心に決めて再び体を倒そうとしたその時。
「ちょっとあんた何寝ようとしてんのよ!起きないってんなら」
 バシッと不快な音が鳴り響く。
「ってーな!何だよ急に!」
 思いっきりビンタをされ飛び起きる。
 そして自覚した。これが現実なのだと。
 そして自覚してしまった。こいつがリアルの幼馴染みの一人だということを。
 白凪真優しらなぎまゆう。おれとは小学生からの仲でれっきとした幼馴染みである。真優は16歳で、17歳である俺からすると後輩とも言える。何故か俺にツンツンしていて、世間一般でいうツンデレ。デレてんのかは知らんが
「何ってあんたが起きないからでしょ!ほら早く準備しないと遅刻するよ!」
「ったく、今時ビンタって……」
「あら?たっくんは他のことをして欲しかったのかな?」
 真優のビンタについてぶつぶつと文句を言っていると、真優ではないもう一人の幼馴染みが発言する。
「み、美優。いたのか」
 白凪美優しらなぎみゆう。真優の姉で俺と同じ学年である。出ているところは出て、引っ込んでいるところは引っ込んでいる周りからすればお姉さんのように見えていたり。実際、人の前に立つことが得意で、たくさんの仕事をこなす生徒会役員をこなしている。だ・け・ど俺にたいしてはというと。
「なに?私がいちゃいけないの?まさか私に黙って真優とふしだらな―」
「「ない」」
 という風にとんでもないことを口走ってしまう。何で俺の前だけこんなになるのかな。まさか俺に人の性格を変える異能が……ないね。うん
「そんなことより早くしないと遅刻だってば!」
「ったく、朝から騒がしいな」
 そう言いながら自分の寝巻きのズボンにてをかけようとすると真優の顔がボッと赤くなる。
「なっ!あ、あんたなに考えてんのよ!」
「うるっせぇな朝からぎゃーぎゃー。何?お前叫んでないと生きていけないの?何それマグロが泳いどかないと死ぬ以上に迷惑な特徴なんですけど。」
「違うわよ!あんたが私達の前で脱ぎだしたからでしょ!」
「えぇ~?私は構わないんだけどなぁ。昔なんてお風呂一緒に入った仲なんだし」
「ほら聞いたか?美優はこう言ってるぞ」
「今は今、昔は昔よ!ったく、見られて恥ずかしくないの?」
「別に」
 おれがきっぱり断言すると真優は「うっ」と言って顔をしかめる。
「あんまり見たくないなら悪いが外で待っててくれ。すぐ行くからさ」
「……分かった」
「私としてはたっくんの着替え見たいんだけどなぁ。アレの成長も気になるし」
「良いから行くよお姉ちゃん」
 真優が美優を引っ張って部屋を出たのを確認して着替え始める。
 学生服を着替え終わると同時にノック音が響いた。
「愛華か。どうした?」
 愛華ちかげとは俺の15歳の義理の妹である。愛華の両親は愛華が幼いときに交通事故で他界した。悪いことに愛華を引き取ってくれる親戚がおらず、当時隣に住んでいた俺を含める佐々波家が引き取った。
 本人は立派に成長し、成績優秀とまでになっていた。しかし、スポーツは苦手らしくそれと………色々小さい。はたから見れば中学一年生くらいである。だけど容姿は完璧で申し分なく、かなりモテるようだ。付き合ってはいないみたいだけど。
「兄さん?早くいかないと遅刻しちゃうよ?真優さんと美優さんは外で待ってるみたいだし。」
「あぁ、着替えがあるから外で待ってもらったんだ。安心しろ。すぐ行くから」
「そっか。じゃあ私は簡単な朝食作ってくるから、準備出来たら取りに来てね。」
「分かった」
 俺が返事をすると愛華はキッチンへ向かった。
 俺は早々に支度を済ませ、すぐにキッチンへ向かった。
「はいこれ」
 愛華がサンドイッチを差し出して渡す。
「ありがとう。じゃあ行ってくるよ」
「うん。いってらっしゃい」
 ドアを開けると不機嫌気味の真優が俺を頬を膨らましていた。
「遅い!瀧のせいで遅刻したらどう責任とるのよ!」
「悪い。さ、行こっか。」
 真優の言葉を流して、はや歩きで通学路を通る。
 俺達が通っている高校は歩いて約20分くらいで、まぁそれなりに人数もいる。
「青煬高校」これが俺達の通っている高校の名前である。断じて「西洋」ではない。
「もう何年だっけ?真優と美優と一緒なの」
「もう10年ねぇ。あんなに小さかったたっくんがこんなに大きくなっちゃって」
「いや、美優俺と同い年だろ。……10年か、じゃあ愛華がうちに来たのも10年ってことか。」
「そうね。愛華ちゃんを始めて見た時は驚いたなぁ。いきなり二歳年下の妹だなんて言うんだもん。」
「あれは父さんが真優をからかってたんだよ。父さんイタズラ大好きだしな。」
「そういえばまーちゃんもよくイタズラされてたよねぇ。」
 今さらになると思うが説明しておこう。
 俺を含める佐々波家は美優や真優を含める白凪家と仲がよく、今でもお互いの家にもよく遊びに行っている。
「昔から家族の仲が良いなんてそうそうないよな」
「そうね。今時他の家の女の子にちょっかいかける父親もいないわね」
 なんか自分の父親が凄いのか家族の仲が凄いのか分からなくなってきた




「ふぃー」
 無事遅刻せずに登校できた俺は机に突っ伏していた。いつもは遅刻などせずに余裕で登校しているのだが、今日はいい夢を見たせいでこの様である。恐るべし理想の幼馴染み(夢)。あのままあの世界にいたいと思ってしまったぜ。
「瀧?大丈夫?朝から元気ないけど」
夢でみた理想の幼馴染みを突っ伏しながら思い出しているところに聞きなれた声が俺を心配そうに呼んだ。
「華恋か。おはよう。別に体は何ともないぞ?」
 実鐘華恋みかねかれん。俺のクラスメイトで名前は女の子みたいだが、れっきとした男である。名前と同じく容姿も女の子みたいなので華恋の事を知らない男子生徒からはコクられる事もしばしば。美少年なので女子生徒からはかなりモテている。
 本人は自分の名前と容姿のことを少し気にしているようだ。
「そうなんだ。なら良いんだけどね」
 ホッとしたような声で安堵する華恋
「そんなに元気無さそうだったか?」
「うん。魂が抜けたみたいだったよ」
 まじか。華恋が言うんだから結構やばかったんだろうな。恐るべし理想の幼馴染み(夢)
「それじゃあ僕は席に戻るね。あんまり気を抜いていると全部抜けちゃうよ」
 にこりと笑った華恋を見てドキッとしてしまった。
「(こいつ本当に可愛いんだよなぁ。男じゃなかったら完璧に惚れてた)」
「僕の顔になにかついてる?」
 じーっと見つめていると華恋が頬を赤く染める。うん。可愛い。
「いや、なんにもない」
「??まぁいいや。じゃあまた後でね」
 自分の席に戻って行く華恋を見届け再び机に突っ伏す。
 いつの間にか俺は夢の中にいるのだった。

「瀧。弁当作ったよ!」
 恵と二人屋上で弁当を食べる。これほどまでに最高なことあるのだろうか。
「うん。美味しいよ」
「良かった!今日は瀧の好きなものばかりなんだよ。嬉しいでしょ」
 死ぬ。もう死ぬ。いや死んでも本望の方が妥当か。
「ありがとう。やっぱり恵の作る弁当はさいこうだな。いつまでもこうやって―」
「瀧?起きて瀧!次移動教室だよ!」
「………」
 寝ぼけながら顔を上げると目の前に美少女が立っている。
「……ずっと俺の弁当を作ってくれ」
 まだ夢から覚めていない寝ぼけた状態からそんなことを口走る俺の前で華恋が顔を赤く染める。
「えっ、それってどういう……」
「………あっ。すまん忘れてくれ。寝ぼけてた」
「そ、そう。それより早くしないと遅れるよ。一時間目も二時間目も寝てたんだから遅れると示しがつかないよ。」
「え?俺ってそんなに寝てた?」
 時計を見ると三時間目が始まる時刻に差し掛かっていた。この学校は一時間50分だから、計100分以上は寝たことになる。恐るべし理想の幼馴染み(夢)。てか多いな。
 このあとチャイムギリギリに入室した俺は担当教師に白い目で見られたのであった。ごめん華恋。いつか俺がもらって……落ち着け俺。
「はぅ……」
 昼までの授業が終わり昼食の時間になった。購買か弁当の2択であるがほとんどが購買であるため、昼の購買部はいわば戦場である。この俺もそんな戦場に向かう一人の戦士だった。
「購買に行ってくるの?」
弁当を持って俺のもとに来た華恋が俺に問いかける。
「あぁ。ちょいと戦ってくる。華恋は先に行っておいてくれ」
 俺がそう言うと華恋は不安そうな顔をする。
「生きて……帰ってきてね」
 怖い。うちの購買まじで怖い。
 俺は手だけで返事をして戦場に向かった。
「ちょっと順番抜かさないでよ!」
「ふざけんな!これは俺が取ってたんだぞ!」
「痛い!ちょっと!押すなって。いって!誰だ殴ったの!」
「あぁ!?やんのか?」
目の前に広がる光景は実に残虐的なものだった。大勢の人間が押し込み。でかい声を発し争い合う。死ぬんじゃねぇのと思わせるその光景はもう俺には慣れたものだ。
「よし」
意を決した俺は助走をつけて大群の中に突っ込んだ。


「……こ、ここは……」
 目を覚ますと俺は屋上にいた。確か、突っ込んだ後沢山の鉄拳をくらって……そこから記憶がない。
「目が覚めた?瀧もだらしないわね。あれくらいで気を失っちゃうなんて。」
 仰向けに倒れている俺の顔に真優の顔が接近してきた。ちょ、近いって。
「いやいや、ボディーや顔面のいたるところにパンチとキックくらったら気を失っても仕方ないだろ」
 気を失う瞬間死んだじいちゃんが見えた事は黙っておいた。
 むくりと体を起こし周りを確認すると、真優、美優、華恋が三人で昼食を食べていた。
「はいこれ」
 美優がパンを1つ俺に差し出す。
「これって……」
「たっくんのパン。取っておいたの」
「み、美優……」
 中学の途中からおかしくなったと思っていた美優が女神のように見えた。
今まで変な事を口走る変な女の子だなんて思ってごめ―
「お礼はたっくんの体でね♪」
 耳打ちされ感謝は残ったものの改心の意は消えたのだった。
「無理。てか俺のトキメキを返せぇ!」
 突然大声を上げたせいで真優と華恋は驚く。平然と笑っていた美優だった。
愛華に弁当作ってもらおうと決心した出来事だった。


 

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