好きだよ?
好きだよ?
最近、クラスメイトの主李の事が気になる。
主李は、眉がキリッとしていて周囲にはかっこいい同級生と言われているが、とても優しい。
周囲に気を使えるし、人間関係が不器用な優希にも気楽に手伝いを買って出る。
口下手で不器用な優希は、そう言うさりげない優しさがいつも嬉しくて、いつも羨ましいのだが……。
お礼を言おうとすると言葉につまり、
「あ、あの、あの……あ、あり……」
「いいのいいの。手が空いてたら手伝うから、気軽に言ってよ、ね?」
とニッコリと笑い、手を振ってくれるのだ。
「おーい、曽我部さん。何してんの?」
ドキドキと胸が高鳴る……変声し始めの少しハスキーな声が聞こえた。
元々、優希は人見知りである。
人が苦手と言うか、どう話しに加わっていいのか解らないのだ。
冗談を言うのも苦手で、本当に、話を聞くと頭の中から情報を探り、こういうことをいっているのかな?と返答をするため話が全く噛み合わず、変な顔をする同級生に優希はパニックになり、益々とんちんかんな返答をしてしまい、周囲は、ひく。
優希としては真面目だった上に、元々テレビ番組を見ることもなかったから話しについていけず、無視になり苛めになった。
その為、委員会を選ぶ際に、自分としては引きこもりにうってつけの図書委員が希望だったのだが、クラスメイトの嫌がらせで学級委員に選ばれたのだが、自分ではできないと辞退した。
その代わりに押し付けられたのが美化委員だったのだが、美化委員の副委員長まで押し付けられたのだ。
その上、委員長は全く仕事をしてくれず、先日も、美化委員担当の教師に言われて、掃除の丁寧さ、どういう風に掃除をすればいいかを纏めて、掃除場所の丁寧さをチェックして、このように掃除をした方がいいと言う方法まで伝えて、放送委員会に放送してもらうために提出しろと言われたのだが、委員長はいつものように、
「頼むな~曽我部。俺、推薦があって大変なんだよ。部活するから」
といって逃げた。
しかし、こちらも部活動の副部長であり、部活の大会も迫っていたこともあり、平行に仕上げていたものの、委員の方の提出が期日を明日に迫って、必死に教室で、学年別、クラス別の資料を纏めたものを、表に仕上げていた。
一応、タブレットには情報は入れているものの、それを大きく書き出し、映像で写してもらうことも必要であり、クラスごとの注意点なども加える。
『PowerPoint』等を駆使すればいいが、詳しくそこまでは習っていないし使用許可も得ていないし、その時間もない。
「もう……」
と、自分の情けなさと、間に合うかどうか不安で泣きそうになるのを堪えていると、声がかかったのだ。
「あ、守谷くん」
「何しよん?」
「あ、うん……美化委員の仕事、明日までなんだけど、間に合わなくて……」
声が小さくなる。
自分の力のなさを、気になる相手に告げるというのも恥ずかしく辛い。
主李はざっと机や周囲を見回すと、
「ちょっとまっとって?」
と、出ていった。
するとしばらくして、
『生徒の呼び出しを致します。美化委員長の安永君。今すぐ一階第一会議室に来てください。もう一度繰り返します……』
と言う学校アナウンスが流れる。
えっ?
時間は惜しいので必死に書きながら、何でこのタイミングで?と思っていると、主李が教師と共に戻ってくる。
「曽我部さん?」
「あ、せ、先生‼す、すみません‼明日には必ず」
慌てて頭を下げて、仕事に戻ろうとした優希に、教室のもうひとつの扉から顔を覗かせたのは、
「何で~?俺、部活で忙しいんやけど」
サッカー部の安永に、教師が、
「これはなんぞ?言うてみい‼」
と、優希を示した。
「え?俺は委員に書いてもらった資料を仕分けして、それを曽我部に渡しましたけど?な?曽我部?」
安永は、サッカー部でも有名な実力と自意識過剰でも知られている。
「嘘つけ‼俺は見てたぞ」
主李は安永をにらむ。
ちなみに主李は軟式野球部の副部長である。
「曽我部、部活も休んで、学校中回って資料回収してて、仕訳も教室で休み時間使って全部やってて、泣いてたときもあったんだからな‼」
優希は驚く。
必死に隠して、隠れて声を殺して泣いていたはずなのに……ばれてる⁉
「俺は‼サッカー部の試合があるんだよ‼文化部の曽我部なんて楽器さわってるだけじゃねえか‼試合の方が大事‼だからこいつがやればいい‼」
「万年一回戦負けのサッカー部の癖に?」
「何を⁉」
食って掛かろうとした安永に、主李は、
「曽我部の部活、吹奏楽部は市の大会では金賞、銀賞。県大会出場常連部。地方大会も何回も出てるレベルだ。市の大会で一回戦負けレベルが、文化部だとかって見下すなよ?それにな?美化委員長の役割果たさないで、よく自分から美化委員になるって言ったよな?内申書か?」
「……‼」
言葉につまる安永に、主李は、
「先生。安永、美化委員長の役割果たしてません。それに曽我部に全部押し付けるのって酷くないでしょうか?」
「当たり前だ‼安永‼お前が明日までに一人で仕上げて提出しろ‼それと、曽我部に謝れ‼」
「な、何で‼」
「でないと、内申書に委員会の評価は加えない」
内申書は進学……特に推薦入学には不可欠である。
渋々頭を下げた安永に、
「曽我部。こいつは見ておくから部活に行きなさい」
「は、はい。ありがとうございます‼」
「守谷に礼は言っておけ」
「は、はい‼」
荷物をまとめ、主李に促されると出ていく。
「あ、ありがとう。守谷君。本当に、うれしい」
頭を下げると、照れくさそうに頬をかくと、
「……優希は、何でも手伝おうとするからな……もっと、皆に……ううん、俺に頼れよ」
「えっ?迷惑じゃ……」
「迷惑ならそう言うし、優希は、優しすぎるんだよ」
おろおろする優希の手を取って、歩き出す。
部活のある音楽室までは一階の会議室を借りていた為、階段を登りつつ、
「本当に危なっかしいヤツ……だから気になったんだけど……」
「め、迷惑をかけてごめんなさい‼」
「だから気にするなって……」
ヨシヨシと頭を撫でる。
「……うーん。自分の気持ちって、どう表現すればいいのか解らないんだけど……」
「……?」
頭を撫でられるその暖かさに、表情が緩むのが解りながら、見上げる。
「俺は、優希が好きだよ」
頭の中が真っ白になる。
「……う、うそ」
「本当。言うか、危なっかしいし……何で、自分一人で抱え込むのかなぁ……っていつも思って。何か言いたげに人を見るのに、口に出さないまま俯いて大きな荷物を抱いて教室を出ていくのを見ると、どうして言ってくれないのかなぁ、何を言いたいんだろうって思ってて、それからは……」
手をぎゅっと握ってくる。
「何かあったら、すぐに俺に頼れよ?泣きそうな顔……するなよ?」
「……あ、ありがとう……」
周囲の声は聞こえない。
ただ聞こえるのはドキドキとする心臓の音。
初恋は、一言の言葉と胸の音の記憶……。
主李は、眉がキリッとしていて周囲にはかっこいい同級生と言われているが、とても優しい。
周囲に気を使えるし、人間関係が不器用な優希にも気楽に手伝いを買って出る。
口下手で不器用な優希は、そう言うさりげない優しさがいつも嬉しくて、いつも羨ましいのだが……。
お礼を言おうとすると言葉につまり、
「あ、あの、あの……あ、あり……」
「いいのいいの。手が空いてたら手伝うから、気軽に言ってよ、ね?」
とニッコリと笑い、手を振ってくれるのだ。
「おーい、曽我部さん。何してんの?」
ドキドキと胸が高鳴る……変声し始めの少しハスキーな声が聞こえた。
元々、優希は人見知りである。
人が苦手と言うか、どう話しに加わっていいのか解らないのだ。
冗談を言うのも苦手で、本当に、話を聞くと頭の中から情報を探り、こういうことをいっているのかな?と返答をするため話が全く噛み合わず、変な顔をする同級生に優希はパニックになり、益々とんちんかんな返答をしてしまい、周囲は、ひく。
優希としては真面目だった上に、元々テレビ番組を見ることもなかったから話しについていけず、無視になり苛めになった。
その為、委員会を選ぶ際に、自分としては引きこもりにうってつけの図書委員が希望だったのだが、クラスメイトの嫌がらせで学級委員に選ばれたのだが、自分ではできないと辞退した。
その代わりに押し付けられたのが美化委員だったのだが、美化委員の副委員長まで押し付けられたのだ。
その上、委員長は全く仕事をしてくれず、先日も、美化委員担当の教師に言われて、掃除の丁寧さ、どういう風に掃除をすればいいかを纏めて、掃除場所の丁寧さをチェックして、このように掃除をした方がいいと言う方法まで伝えて、放送委員会に放送してもらうために提出しろと言われたのだが、委員長はいつものように、
「頼むな~曽我部。俺、推薦があって大変なんだよ。部活するから」
といって逃げた。
しかし、こちらも部活動の副部長であり、部活の大会も迫っていたこともあり、平行に仕上げていたものの、委員の方の提出が期日を明日に迫って、必死に教室で、学年別、クラス別の資料を纏めたものを、表に仕上げていた。
一応、タブレットには情報は入れているものの、それを大きく書き出し、映像で写してもらうことも必要であり、クラスごとの注意点なども加える。
『PowerPoint』等を駆使すればいいが、詳しくそこまでは習っていないし使用許可も得ていないし、その時間もない。
「もう……」
と、自分の情けなさと、間に合うかどうか不安で泣きそうになるのを堪えていると、声がかかったのだ。
「あ、守谷くん」
「何しよん?」
「あ、うん……美化委員の仕事、明日までなんだけど、間に合わなくて……」
声が小さくなる。
自分の力のなさを、気になる相手に告げるというのも恥ずかしく辛い。
主李はざっと机や周囲を見回すと、
「ちょっとまっとって?」
と、出ていった。
するとしばらくして、
『生徒の呼び出しを致します。美化委員長の安永君。今すぐ一階第一会議室に来てください。もう一度繰り返します……』
と言う学校アナウンスが流れる。
えっ?
時間は惜しいので必死に書きながら、何でこのタイミングで?と思っていると、主李が教師と共に戻ってくる。
「曽我部さん?」
「あ、せ、先生‼す、すみません‼明日には必ず」
慌てて頭を下げて、仕事に戻ろうとした優希に、教室のもうひとつの扉から顔を覗かせたのは、
「何で~?俺、部活で忙しいんやけど」
サッカー部の安永に、教師が、
「これはなんぞ?言うてみい‼」
と、優希を示した。
「え?俺は委員に書いてもらった資料を仕分けして、それを曽我部に渡しましたけど?な?曽我部?」
安永は、サッカー部でも有名な実力と自意識過剰でも知られている。
「嘘つけ‼俺は見てたぞ」
主李は安永をにらむ。
ちなみに主李は軟式野球部の副部長である。
「曽我部、部活も休んで、学校中回って資料回収してて、仕訳も教室で休み時間使って全部やってて、泣いてたときもあったんだからな‼」
優希は驚く。
必死に隠して、隠れて声を殺して泣いていたはずなのに……ばれてる⁉
「俺は‼サッカー部の試合があるんだよ‼文化部の曽我部なんて楽器さわってるだけじゃねえか‼試合の方が大事‼だからこいつがやればいい‼」
「万年一回戦負けのサッカー部の癖に?」
「何を⁉」
食って掛かろうとした安永に、主李は、
「曽我部の部活、吹奏楽部は市の大会では金賞、銀賞。県大会出場常連部。地方大会も何回も出てるレベルだ。市の大会で一回戦負けレベルが、文化部だとかって見下すなよ?それにな?美化委員長の役割果たさないで、よく自分から美化委員になるって言ったよな?内申書か?」
「……‼」
言葉につまる安永に、主李は、
「先生。安永、美化委員長の役割果たしてません。それに曽我部に全部押し付けるのって酷くないでしょうか?」
「当たり前だ‼安永‼お前が明日までに一人で仕上げて提出しろ‼それと、曽我部に謝れ‼」
「な、何で‼」
「でないと、内申書に委員会の評価は加えない」
内申書は進学……特に推薦入学には不可欠である。
渋々頭を下げた安永に、
「曽我部。こいつは見ておくから部活に行きなさい」
「は、はい。ありがとうございます‼」
「守谷に礼は言っておけ」
「は、はい‼」
荷物をまとめ、主李に促されると出ていく。
「あ、ありがとう。守谷君。本当に、うれしい」
頭を下げると、照れくさそうに頬をかくと、
「……優希は、何でも手伝おうとするからな……もっと、皆に……ううん、俺に頼れよ」
「えっ?迷惑じゃ……」
「迷惑ならそう言うし、優希は、優しすぎるんだよ」
おろおろする優希の手を取って、歩き出す。
部活のある音楽室までは一階の会議室を借りていた為、階段を登りつつ、
「本当に危なっかしいヤツ……だから気になったんだけど……」
「め、迷惑をかけてごめんなさい‼」
「だから気にするなって……」
ヨシヨシと頭を撫でる。
「……うーん。自分の気持ちって、どう表現すればいいのか解らないんだけど……」
「……?」
頭を撫でられるその暖かさに、表情が緩むのが解りながら、見上げる。
「俺は、優希が好きだよ」
頭の中が真っ白になる。
「……う、うそ」
「本当。言うか、危なっかしいし……何で、自分一人で抱え込むのかなぁ……っていつも思って。何か言いたげに人を見るのに、口に出さないまま俯いて大きな荷物を抱いて教室を出ていくのを見ると、どうして言ってくれないのかなぁ、何を言いたいんだろうって思ってて、それからは……」
手をぎゅっと握ってくる。
「何かあったら、すぐに俺に頼れよ?泣きそうな顔……するなよ?」
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コメント
ノベルバユーザー603850
こんなに素晴らしい作品を今まで知らなかった事を悔やんでいます。
二人の関係も素敵な感じでこれからも楽しみです。
沖風
本当にいい話ですね!
僕このジャンルの話めっちゃ好きです♡