日本産魔術師と異世界ギルド
22 強襲
「いくぞ!」
開口一番にシドが先陣を切った。
戦闘スタイルは俺と同じ、近接戦闘タイプらしい。ただシンプルに、迫ってくるBランクの内の一人が肉体強化以外の何かしらの魔術を放つ前に、跳び膝蹴りを顔面に喰らわせる。
だがそれで止められるのは一人。鞭を手にしたその男の標的は、どうやら俺かミラ。
「下がってろ、ミラ」
「はい!」
流石に戦闘中にミラを一人で放置する訳にもいかない。その為に俺が残ったんだ。
……残ったからには、ちゃんと役目は果たすぞ。
男は接近しながら鞭を放つ。
その動きに一切の無駄は無く、隙の少ない構えで放たれた鞭その速度は高速と言ってもいい。
だけど、動体視力が上がっている今の俺には、確かにソレは見えた。
そしてミラがいて交わせないとなるならば、おのずと選択肢は一つ。
「今だッ!」
ガシリと確かに……放たれた鞭を右手で掴み取った。
だけどこの時、やはり俺には経験が足りていないと痛感した。
「グ……ッ」
鞭を掴んだ右手から、強力な電流が流れ出す。
しかも鞭から手が離れない。
……掴まれる事を想定して、術式を組んでやがる。
だけど……だからどうした!
そんな経験豊富な相手に、俺が対抗できる手段は唯一つ。それは力を無茶苦茶に振るう、力のごり押し! この位耐え忍んで、無理矢理攻撃に繋げろ!
「っ、らあああああああああああああああああッ!」
俺は右手を勢いよく引いて、鞭を持った男を引きよせ、力強いヘットバットを喰らわせる。
男はのけ反るが、電撃を感電させる事は出来ない。俺が発火術式を使用して燃えないのと同じ原理で、使用者にはその攻撃魔術の効果が及ばない物が多い。
そもそもそれ以前に、ヘットバットで電撃が止まっていた。
俺は右手の鞭を離し、同時に左手でのけ反った男の襟首を掴んで再び引きよせる。
「……悪い!」
そして右拳を握りしめ、その顔面に勢いよく叩き込んだ。
そして……アリスから言われた事を思い出す。
勝てる確信が無い限り、手は抜かない。
相手はこういう場に呼び出される強者だ。だったら確実に勝てるかどうかなんてのは解らない。だったら……まだたりねえ!
もう一発。
左手で男を引きもどし、再び拳を叩きこむ。
そしてその勢いで襟首から手が離れ、自然と俺との距離が開いた男の腹部に、全力の蹴りを叩きこんだ。
勢いよく吹き飛んだ男の体は近くの壁へと叩きつけられ、一瞬のその体を動かして、そのまま意識を失う。
「ハァ……ハァ……」
荒い息を整えながら、自分が蹴り飛ばした男に改めて視線を向ける。
蹴りを喰らってまだ意識があった……つまり途中で躊躇っていれば、そこから反撃されていたかもしれない。
アリスの言う通りだ。手なんて、抜けやしない。
そして次の瞬間、俺が倒した魔術師の近くに、もう一人の魔術師が転がる。
特に危なげもなく戦闘を繰り広げていたシドの、何かしらの魔術を要いた掌低を受けて、吹き飛んだのだ。
そして俺の相手と同じ様に撃沈。
シドは倒れている二人に近づいてそれぞれの指輪を抜き取る。
「これでコイツらも元に戻るだろ」
「俺の時と同じ状態ってんなら、そうだろうな……で、俺やコイツらみたいに指輪を付けていた連中は、みんなこうなってるって事か」
「だろうな」
リリーブ社に雇われたギルドの人間は、皆指輪を付けている。俺も……そして、アリスも。
あの会議室に居た猛者達が全員暴走している。考えただけで嫌になる。
「……とにかく、アリスを元に戻さねえと」
「お前の連れか?」
「ああ。ウチのギルドのボスだ。とにかく、最優先事項はそこだ……いや、ちょっと待て」
本当にそうか?
多分先にするべき事がある。
「……先にミラを外に出すのが先決か」
はっきり言って、この状況にミラを立たせていたら命がいくつあっても足りやしない。
多分、地球に居たころの俺がこの場にいたら、速攻で殺されてた。
……そしてそれをやるなら、動くのは俺だ。
なんにしても、動くなら早くした方が良い。
いつ奇襲を受けたって分からないんだから……と、そう思った時だった。
衝撃音と共に、目の前からシドが消えた。否、殴り飛ばされた。
そして殴り飛ばしたのは……つい先程出くわした人物。
「カルロス……ッ」
突然の奇襲を仕掛けてきたカルロスは、ぶっ飛ばされたシドを追う様に、迷いの森の効力で消えたシドを追っていく。
その様子を目に下直後、俺はすぐさま警戒を強めミラに言う。
「とにかく壁際だ! 壁際にいろ! あと窓には近づくな!」
「は、はい!」
ミラがそう言った直後、ソイツは現れる。
カルロスが出てきた時点で、来てもおかしくないとは思ってた。
会議室にて。強さを張りあった相手。S級ギルドの構成員。
キースが……何もない空間から現れ、跳びかかってきた。
開口一番にシドが先陣を切った。
戦闘スタイルは俺と同じ、近接戦闘タイプらしい。ただシンプルに、迫ってくるBランクの内の一人が肉体強化以外の何かしらの魔術を放つ前に、跳び膝蹴りを顔面に喰らわせる。
だがそれで止められるのは一人。鞭を手にしたその男の標的は、どうやら俺かミラ。
「下がってろ、ミラ」
「はい!」
流石に戦闘中にミラを一人で放置する訳にもいかない。その為に俺が残ったんだ。
……残ったからには、ちゃんと役目は果たすぞ。
男は接近しながら鞭を放つ。
その動きに一切の無駄は無く、隙の少ない構えで放たれた鞭その速度は高速と言ってもいい。
だけど、動体視力が上がっている今の俺には、確かにソレは見えた。
そしてミラがいて交わせないとなるならば、おのずと選択肢は一つ。
「今だッ!」
ガシリと確かに……放たれた鞭を右手で掴み取った。
だけどこの時、やはり俺には経験が足りていないと痛感した。
「グ……ッ」
鞭を掴んだ右手から、強力な電流が流れ出す。
しかも鞭から手が離れない。
……掴まれる事を想定して、術式を組んでやがる。
だけど……だからどうした!
そんな経験豊富な相手に、俺が対抗できる手段は唯一つ。それは力を無茶苦茶に振るう、力のごり押し! この位耐え忍んで、無理矢理攻撃に繋げろ!
「っ、らあああああああああああああああああッ!」
俺は右手を勢いよく引いて、鞭を持った男を引きよせ、力強いヘットバットを喰らわせる。
男はのけ反るが、電撃を感電させる事は出来ない。俺が発火術式を使用して燃えないのと同じ原理で、使用者にはその攻撃魔術の効果が及ばない物が多い。
そもそもそれ以前に、ヘットバットで電撃が止まっていた。
俺は右手の鞭を離し、同時に左手でのけ反った男の襟首を掴んで再び引きよせる。
「……悪い!」
そして右拳を握りしめ、その顔面に勢いよく叩き込んだ。
そして……アリスから言われた事を思い出す。
勝てる確信が無い限り、手は抜かない。
相手はこういう場に呼び出される強者だ。だったら確実に勝てるかどうかなんてのは解らない。だったら……まだたりねえ!
もう一発。
左手で男を引きもどし、再び拳を叩きこむ。
そしてその勢いで襟首から手が離れ、自然と俺との距離が開いた男の腹部に、全力の蹴りを叩きこんだ。
勢いよく吹き飛んだ男の体は近くの壁へと叩きつけられ、一瞬のその体を動かして、そのまま意識を失う。
「ハァ……ハァ……」
荒い息を整えながら、自分が蹴り飛ばした男に改めて視線を向ける。
蹴りを喰らってまだ意識があった……つまり途中で躊躇っていれば、そこから反撃されていたかもしれない。
アリスの言う通りだ。手なんて、抜けやしない。
そして次の瞬間、俺が倒した魔術師の近くに、もう一人の魔術師が転がる。
特に危なげもなく戦闘を繰り広げていたシドの、何かしらの魔術を要いた掌低を受けて、吹き飛んだのだ。
そして俺の相手と同じ様に撃沈。
シドは倒れている二人に近づいてそれぞれの指輪を抜き取る。
「これでコイツらも元に戻るだろ」
「俺の時と同じ状態ってんなら、そうだろうな……で、俺やコイツらみたいに指輪を付けていた連中は、みんなこうなってるって事か」
「だろうな」
リリーブ社に雇われたギルドの人間は、皆指輪を付けている。俺も……そして、アリスも。
あの会議室に居た猛者達が全員暴走している。考えただけで嫌になる。
「……とにかく、アリスを元に戻さねえと」
「お前の連れか?」
「ああ。ウチのギルドのボスだ。とにかく、最優先事項はそこだ……いや、ちょっと待て」
本当にそうか?
多分先にするべき事がある。
「……先にミラを外に出すのが先決か」
はっきり言って、この状況にミラを立たせていたら命がいくつあっても足りやしない。
多分、地球に居たころの俺がこの場にいたら、速攻で殺されてた。
……そしてそれをやるなら、動くのは俺だ。
なんにしても、動くなら早くした方が良い。
いつ奇襲を受けたって分からないんだから……と、そう思った時だった。
衝撃音と共に、目の前からシドが消えた。否、殴り飛ばされた。
そして殴り飛ばしたのは……つい先程出くわした人物。
「カルロス……ッ」
突然の奇襲を仕掛けてきたカルロスは、ぶっ飛ばされたシドを追う様に、迷いの森の効力で消えたシドを追っていく。
その様子を目に下直後、俺はすぐさま警戒を強めミラに言う。
「とにかく壁際だ! 壁際にいろ! あと窓には近づくな!」
「は、はい!」
ミラがそう言った直後、ソイツは現れる。
カルロスが出てきた時点で、来てもおかしくないとは思ってた。
会議室にて。強さを張りあった相手。S級ギルドの構成員。
キースが……何もない空間から現れ、跳びかかってきた。
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