双眸の精霊獣《アストラル》

果実夢想

#1 白き猫は悲劇をもたらす【2nd】

 自宅から約二十分歩いたところに、俺が通っている学校がある。

 私立海聖学園しりつかいせいがくえん。小中高一貫で我が妹、あやめも初等部に通っている。でも、授業の始まる時間と終わる時間が異なるため、登下校で一緒になったことは皆無なのだ。

 海みたいに広い心と、ひじりみたいに知識と技量の優れた者、快晴――つまり、心が暖かくなれるようにという三つの意味を込めた名前らしい。

 素晴らしいネーミングセンスに惜しみ無い賛辞を呈したいです。

 ところで猫――ミラは家においてきた。

 俺とあやめは学校があるし、連れてくるわけにもいかないから一匹で留守番だ。

 本当は誰かに預けるべきなのかもしれないが、別にいいだろう。

 昨日の一晩で、ミラは利口な猫だと悟った。

 いたずらなんて一回もしなかった上に、かなり大人しかった。これなら、いてもいなくても大して変わらない。

「みんなー。突然だけど、明日から私たちのクラスに副担の人が来てくれるよー」

 と、そんな先生の言葉が俺の思考を遮る。

 更に、間を置かずに教室の扉が開き、ある男性が入ってくる。

「――鳥山疾風とりやま はやてだ。明日からこのクラスの副担になる。よろしく頼む」

 後頭部で一つに括った、漆黒の総髪。

 見た感じ二十代前半くらいで、身長もなかなか高めだ。

 整った美貌の、俗に言うイケメン。女の子からはモテそうだな。

 実際周りの女子生徒はみんな、「きゃーっ!イケメンーっ!」と興奮しながら叫んだり、声も出ないほど見とれたりしている。

 こいつらは別にいいけど、幼女だけはやんないぞ。

 俺はまだ、暢気なことを考えていた。この副担任の存在が、俺達の日常をぶち壊す要因になるとは知らずに。

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