どうやら勇者は(真祖)になった様です。
3話 0-3 力試し②
『クライア・ハルバー 男 42歳
MP 720/720
聖騎士団一番隊副隊長。一番隊で唯一の既婚者。
得意技 槍術、棒術、体術を組合せたオリジナル槍術』
『クライアの槍術
一撃目は目で追う事も難しい、高速の突きを遠くから放つ。
二撃目からは、体の回転を使った殴・蹴・突・打の連撃を叩き込む』
「少年……すまなかったな。少々舐めていた様だ。
だがまぁこの中では一番弱いとは言え、聖騎士団内で本当のエリートのみしか入れない一番隊隊員を、たった一撃で倒すとわなぁ」
お前団に入らないか? と笑いながら言うクライアを前に、当の勝人はと言うと……
(やっべぇ、めっちゃチビリそう!)
ガタガタ震えていた。
何故に? と、実際にクライアを見た事のない人はそう疑問に思うだろう。
……しかし逆に言えば、1度でも闘う気満々な姿を見た者ならば、分かるだろう。
まるで薄っぺらい、紙の、兎の皮を被った獅子の様な、そんな気配を。
「……じゃあ、始めようぜ。少年」
勝人にはなぜだか、人の良さそうな顔が、何か血に飢えた獣が獲物を前にした時のソレに見えていた。
勝人は、どこか泣き出しそうになりながら剣を構えた。
「では……始めっ!」
聖女の鋭い掛け声と共に、戦いが始まった。
一気に駆けるクライア。
左足を軸にして右足で踏み込み、左手を後ろ、右手を精一杯前に突き出す。
それに伴って、握られた槍もまっすぐまっすぐ……一直線に勝人へと襲いかかる。
初撃は単純明快。兎に角速さに重みを置いた、最早“技”とは言えない程簡単な技だ。
しかし、一点集中型だからこそその性能は目を見張る程の物で、いくら勝人がブーストを使っても、完全に見切る事は非常に難しい。
「ぐぅっ!?」
なんとか身をよじる事で大きなダメージは防いだが、クライアの槍術の本当に恐ろしい所は、ここからだ。
「おいおい、逃げんなよ。せっかく楽しくやってんだ。最後まで付き合ってくれ……よっ!」
ブゥン─────
不吉な音をたてて、槍が頭のすぐ隣を通り過ぎる。
────ハラリと、数本髪の毛が舞散った。
(やべえ! し、死ぬううう!)
と、鋭い蹴りが襲って来た。 それを、体を回転させる事でいなす。
さらに槍の後ろ部分が死角から跳んで来たり、血管が(比喩でなく本当に、音がなる程)ビキビキと浮き上がった右手が、顔に向かって伸ばされるのを何とか躱す。
────握り潰される!? と、本気でビビる勝人。
その後も殴る、叩く、突く、蹴る と忙しなく飛んで来る攻撃を躱し続けられ、堪忍袋の緒が若干切れかかったのか、たった一度攻撃が大振りになった。
勝人はそのタイミングを逃さず、数メートル後退して間合いをとる────次の瞬間、景色がひっくり返る。
「────ッ!?」
ドスンッ!
何が起きたか理解出来なかった。
確かに勝人は脚に重点的にブーストをかけて、何メートルも後ろに跳んで相手の間合いの外まで離れた筈だ。
(なのに──────なのに、何でこんな………
───何で俺の体は浮いている?
───何でこんなに腹が痛い?
───何でクライアは目の前にいた?
───何でクライアの槍は、既に前に伸びきっている?
─────俺と一緒に宙を舞う、この紅い雫は、何だ?)
「……ッ!」
──────ふと、クライアと目が合う。
その目には、哀れみと、さげずみの色が浮かんでいて──。
………………ブチッ!
勝人の中で、ナニカが切れる音がした。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(なかなか やるな……)
クライアは、目の前の少年を見ながら思う。
(こちらとて全力は出していないが……どの攻撃も紙一重で躱す何てな)
剣を持っている右手に始まり、肩、太腿、足払い………と、連続で攻撃を仕掛けても、最悪掠るだけで決定打とはならない。
そこでクライアは、期待の意味も込めてフェイントを仕掛ける事にした。
連撃の最中に、分かり易く踏み込み、これまた分かり易く大振りに槍を薙ぎ払う。
カツヒトは当然の様にそれを躱し、後ろに跳んだ。
それを見たクライアは、既に──カツヒトがジャンプをして地に降りる前に駆け出していた。
(──この少年は、いったいどんな反応を見せてくれるのだろうか。
最初の様に紙一重で避けるか……むしろ初見でなくなった訳だから、簡単に躱すかも知れない。
それか、こちらの隙を突いて──もしくはこちらの力を利用して、カウンターを叩き込んで来る可能性もあるな。
さぁ、どうする 少年っ──!)
────しかし、そんなクライアの期待は、一瞬後には裏切られた。
クライアのフェイントは見事にカツヒトの虚を突き、その体を吹き飛ばす……実際には、勝人がほぼ無意識の内に槍に合わせて跳んだ為、傷は浅く、少々過剰な反応になってしまっただけだったのは、勝人もクライアも気付いていなかった。
この、前勇者と同じ世界から遣って来た少年を、どうやら少々過大評価し過ぎていたらしい。
最初見た時は、いや………実際 ライオネスを倒すその瞬間までは、
何だコイツは、見た所体つきも大した事無いし、歩き方から何に至るまで動作が成っていない。
本当にコイツが新勇者なのか……?
という考えも確かにあった。しかしそれは、実際に闘ってみて大きく覆った。どうも動きが素人臭いが、強い。
……もしかしたら と思っていたのだが、最初の見立て通りに大した者ではなかったらしい。
実際、腹部に出来た小さな穴にのたうち回っている。
……クライアの読み通り、実戦経験は無かった様だ。
死にかけの蟲の様にもがく少年を観るのも飽きたしっと、自らが仕える女神様の方を向き、少年に治療を頼もうと口を開きかけた、その時──
「────待てよ」
急激に膨れ上がる魔力と共に、まるで地獄から響くかの様に 低く、静かに呟かれる声。
そして、恐ろしいまでの殺気。
慌てて振り返ったクライアの目に映ったのは、幽鬼の如くゆらりと立ち上がる、少年──カツヒトの姿だった。
MP 720/720
聖騎士団一番隊副隊長。一番隊で唯一の既婚者。
得意技 槍術、棒術、体術を組合せたオリジナル槍術』
『クライアの槍術
一撃目は目で追う事も難しい、高速の突きを遠くから放つ。
二撃目からは、体の回転を使った殴・蹴・突・打の連撃を叩き込む』
「少年……すまなかったな。少々舐めていた様だ。
だがまぁこの中では一番弱いとは言え、聖騎士団内で本当のエリートのみしか入れない一番隊隊員を、たった一撃で倒すとわなぁ」
お前団に入らないか? と笑いながら言うクライアを前に、当の勝人はと言うと……
(やっべぇ、めっちゃチビリそう!)
ガタガタ震えていた。
何故に? と、実際にクライアを見た事のない人はそう疑問に思うだろう。
……しかし逆に言えば、1度でも闘う気満々な姿を見た者ならば、分かるだろう。
まるで薄っぺらい、紙の、兎の皮を被った獅子の様な、そんな気配を。
「……じゃあ、始めようぜ。少年」
勝人にはなぜだか、人の良さそうな顔が、何か血に飢えた獣が獲物を前にした時のソレに見えていた。
勝人は、どこか泣き出しそうになりながら剣を構えた。
「では……始めっ!」
聖女の鋭い掛け声と共に、戦いが始まった。
一気に駆けるクライア。
左足を軸にして右足で踏み込み、左手を後ろ、右手を精一杯前に突き出す。
それに伴って、握られた槍もまっすぐまっすぐ……一直線に勝人へと襲いかかる。
初撃は単純明快。兎に角速さに重みを置いた、最早“技”とは言えない程簡単な技だ。
しかし、一点集中型だからこそその性能は目を見張る程の物で、いくら勝人がブーストを使っても、完全に見切る事は非常に難しい。
「ぐぅっ!?」
なんとか身をよじる事で大きなダメージは防いだが、クライアの槍術の本当に恐ろしい所は、ここからだ。
「おいおい、逃げんなよ。せっかく楽しくやってんだ。最後まで付き合ってくれ……よっ!」
ブゥン─────
不吉な音をたてて、槍が頭のすぐ隣を通り過ぎる。
────ハラリと、数本髪の毛が舞散った。
(やべえ! し、死ぬううう!)
と、鋭い蹴りが襲って来た。 それを、体を回転させる事でいなす。
さらに槍の後ろ部分が死角から跳んで来たり、血管が(比喩でなく本当に、音がなる程)ビキビキと浮き上がった右手が、顔に向かって伸ばされるのを何とか躱す。
────握り潰される!? と、本気でビビる勝人。
その後も殴る、叩く、突く、蹴る と忙しなく飛んで来る攻撃を躱し続けられ、堪忍袋の緒が若干切れかかったのか、たった一度攻撃が大振りになった。
勝人はそのタイミングを逃さず、数メートル後退して間合いをとる────次の瞬間、景色がひっくり返る。
「────ッ!?」
ドスンッ!
何が起きたか理解出来なかった。
確かに勝人は脚に重点的にブーストをかけて、何メートルも後ろに跳んで相手の間合いの外まで離れた筈だ。
(なのに──────なのに、何でこんな………
───何で俺の体は浮いている?
───何でこんなに腹が痛い?
───何でクライアは目の前にいた?
───何でクライアの槍は、既に前に伸びきっている?
─────俺と一緒に宙を舞う、この紅い雫は、何だ?)
「……ッ!」
──────ふと、クライアと目が合う。
その目には、哀れみと、さげずみの色が浮かんでいて──。
………………ブチッ!
勝人の中で、ナニカが切れる音がした。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(なかなか やるな……)
クライアは、目の前の少年を見ながら思う。
(こちらとて全力は出していないが……どの攻撃も紙一重で躱す何てな)
剣を持っている右手に始まり、肩、太腿、足払い………と、連続で攻撃を仕掛けても、最悪掠るだけで決定打とはならない。
そこでクライアは、期待の意味も込めてフェイントを仕掛ける事にした。
連撃の最中に、分かり易く踏み込み、これまた分かり易く大振りに槍を薙ぎ払う。
カツヒトは当然の様にそれを躱し、後ろに跳んだ。
それを見たクライアは、既に──カツヒトがジャンプをして地に降りる前に駆け出していた。
(──この少年は、いったいどんな反応を見せてくれるのだろうか。
最初の様に紙一重で避けるか……むしろ初見でなくなった訳だから、簡単に躱すかも知れない。
それか、こちらの隙を突いて──もしくはこちらの力を利用して、カウンターを叩き込んで来る可能性もあるな。
さぁ、どうする 少年っ──!)
────しかし、そんなクライアの期待は、一瞬後には裏切られた。
クライアのフェイントは見事にカツヒトの虚を突き、その体を吹き飛ばす……実際には、勝人がほぼ無意識の内に槍に合わせて跳んだ為、傷は浅く、少々過剰な反応になってしまっただけだったのは、勝人もクライアも気付いていなかった。
この、前勇者と同じ世界から遣って来た少年を、どうやら少々過大評価し過ぎていたらしい。
最初見た時は、いや………実際 ライオネスを倒すその瞬間までは、
何だコイツは、見た所体つきも大した事無いし、歩き方から何に至るまで動作が成っていない。
本当にコイツが新勇者なのか……?
という考えも確かにあった。しかしそれは、実際に闘ってみて大きく覆った。どうも動きが素人臭いが、強い。
……もしかしたら と思っていたのだが、最初の見立て通りに大した者ではなかったらしい。
実際、腹部に出来た小さな穴にのたうち回っている。
……クライアの読み通り、実戦経験は無かった様だ。
死にかけの蟲の様にもがく少年を観るのも飽きたしっと、自らが仕える女神様の方を向き、少年に治療を頼もうと口を開きかけた、その時──
「────待てよ」
急激に膨れ上がる魔力と共に、まるで地獄から響くかの様に 低く、静かに呟かれる声。
そして、恐ろしいまでの殺気。
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