シャッフルワールド!!

夙多史

二章 風と学園と聖剣士(1)

 
 学校の屋上に〝彼女〟はいた。
 懐かしい記憶。すぐに俺はこれが夢なのだと気づいた。
 記憶が曖昧なのか逆光のせいなのか、〝彼女〟の姿がよく見えないのは残念だ。
 俺を屋上に呼び出したのは〝彼女〟である。中等部の制服を着た俺は、この時『愛の告白』なんじゃないかという期待が僅かながらにあったりしたもんだ。
「アタシは異界監査官になる。だからアンタもなりなさい。これは命令よ」
 俺が異界監査官となるきっかけの記憶。懐かしいね。久々に見たよ、この夢。
「靴箱にそれらしい手紙を置いときながら言うことはそれかよ」
「あはっ♪ 『あなたが好きです。付き合ってください』なんてアタシが言うと思った?」
「いいや」
 底抜けに明るい声で笑う〝彼女〟に対し、俺は首を振って好きな番組が臨時ニュースで潰れた時のような様子で肩を落とした。
「寧ろ『世界から核をなくすために核兵器保有国に攻め込むから手伝って』と言われるんじゃないかと思ってヒヤヒヤ――」
「アタシってどんなキャラに思われてんの?」
「頑固と無鉄砲とお人好しが人間の皮を被って歩いてる感じ」
「誉めてるのか貶してるのかよくわかんないから、とりあえず一発殴る」
「なんでそうな――ほ、誉めてる! 誉めてるからその握った拳を下げてください!」
「じゃあこれは照れ隠しってことで♪」
 楽しそうに言って、〝彼女〟は俺に飛びかかってきた。
「全然照れてねぐぶぼっ!?」仰向けに転倒する俺。
「アンタといると楽しいわ」俺の腹を土足で踏みつける〝彼女〟。
 あれ? これってこんな記憶だったっけぶっ!? な、なんだ? 痛い? 夢なのに俺の腹が踏み抜かれたように痛がぁああああああああああああああっ!?

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