シャッフルワールド!!
二章 温泉と異変(4)
「む、無茶苦茶しやがって……」
一体どのくらいの距離を移動したのか知らないが、三十分ほどで俺たちを乗せたバスは目的地へと到着した。
バスとは地面を走る乗り物だ。それがこともあろうに空を飛んだのだから、世間がUFOの飛来と勘違いして大パニックに陥っていないか激しく心配だった。
だがそこは日本異界監査局局長の法界院誘波だ。世間様に見つかるようなミスはしない。
なんでも大気を操って光を屈折させ、飛行中のマイクロバスを透明化していたらしい。光学迷彩ってやつだ。そういえばこの前も自分自身を消していたな。本人は『空気と同化』とか言っていたが。
全員無事だったからいいものを、この三十分間は本気で死ぬ思いだったぞ。空を飛んだことにリーゼが大はしゃぎしたり、セレスが重度の乗り物酔いでダウンしたり、調子に乗った誘波がアクロバット飛行に挑戦したり……散々だった。
「――で、ここが目的地の温泉か」
率直な感想を言うと――でけえ。
雄大で緑豊かな自然の中に、日本風の荘厳な城が堂々と聳えていた。
均整が取れて美しく、新しいはずなのに築城してからの歳月まで感じさせるその城こそ、今日から俺たちが二泊することになる温泉旅館だ。なんとも日本大好きな誘波らしい趣味である。
チラっと空から見えた様子だと、城の奥には広大な森が広がっていて、ところどころから湯気が上がっていた。さらに城の手前には江戸時代の城下町みたいな建物がずらりと軒を連ねている。タイムスリップしたと言われても、俺は信じてしまうだろうね。
――祝ノ森リゾートガーデン。それがこの施設の名前らしい。ここまで和風にしてんだから横文字はやめろよ、と衝動的に突っ込みたくなったが、逆にその名前でここが現代だということを実感させられてしまう。まあ、俺にとってはどうでもいいけどな。
「レージ! アレなに! いい匂いがする!」
城下町風の道を駐車場からお城旅館に向けて歩いていると、最近はすっかり落ち着いていたリーゼの持病――『アレなにコレなに病』が発症しやがった。空を飛んでからというもの、リーゼのテンション上昇率が止まるところを知らない。はしゃぎ死にしなきゃいいが……。
「温泉まんじゅうだな。食いたけりゃ後で買ってやるよ」
「オンセン魔獣? 食べれるの? 今欲しい!」
まいどあり―。
温泉まんじゅう屋のおっちゃんが出す景気のいい声を背中に、俺はついつい奢ってしまった自分を情けなく感じた。ここは我慢を覚えさせる時だろ、俺。
「レイちゃんはリーゼちゃんに甘いですねぇ」
「どわっ!?」
団体の先頭にいたはずの誘波が横からひょっこり現れて蒼い瞳を向けてきた。未だにバスガイドの格好には目が慣れない。
「やっぱりラブなんですかぁ?」
「ぶっ!? な、なんでそうなるんだよ! リーゼは、ほら、アレだ」
唐突にアホなことを言い出す誘波に、俺は両手持ちした中華まん大の温泉まんじゅうをはむはむしているリーゼを横目で見ながら、
「――妹的な?」
「きゃー♪ レイちゃんがシスコンでロリコンのヘンタイちゃんになってますぅ!」
「源泉の熱湯に直接ぶち込むぞてめえッ!!」
「ふむふむ、ゴミ虫様はシスコンでロリコンでヘンタイ安定ですか」
「そこのガラクタ人形! メモるように復唱すなっ!」
ダメだ……一人でも疲れるのに、こいつらが揃うと俺の精神力が持ちそうにない。俺の癒しの場はどこにあるんだ。
と、乗り物酔いでうまく歩けずレランジェの肩を借りていたセレスが、リーゼの温泉まんじゅうを物欲しげに見詰めていることに俺は気づいた。
「どうしたんだ、セレス? お前も食べたいのか?」
訊くと、セレスはゆっくりと首を振った。銀色のポニテが力なく左右に揺れる。
「いや、なんでもない。今、食欲はないんだ」
そうだろうな。顔色も悪い。雪色の肌が不健康的な白さになっている。でも乗り物酔いなんてすぐ治るものだろ。俺はなったことないからよくわからんけど。
くだらないことで無駄に体力を浪費しているうちに、俺たち一行はお城旅館へと辿りついた。
城の中までまんま『城』なのかと思ったら、案外普通の旅館と大差なかった。エレベーターもちゃんとあるし、意味不明なグッズを売ってそうな土産屋もある。
それでも旅館の上に『高級』という文字がつくだろうね。趣ある和式構造のロビーには壊しでもしたら到底弁償できそうもない調度品がいくつも置いてあったりするし。
どうも誘波はここのお偉いさんとは顔見知りのようで、チェックインを済ませてからも社長っぽい貫禄を持つ初老の男とロビーで談笑を続けていた。
男の態度を見ていればわかる。誘波はただの常連ではなくビップ扱いだ。まあ、伊海学園を含めて表向きは様々な企業を束ねる実業家だからな、誘波は。
で、俺は桜居と同室になった。誘波にしては妥当な部屋割だ。女子や親しくもないやつと同室なんて疲労が溜まるだけだからな。
五〇二号室――つまり五階の二番目の部屋へと案内された。誘波は五階と六階を貸し切ったとかぬかしていたから、たぶん男性陣が五階で女性陣が六階という配分だろう。俺と一緒にエレベーターを下りようとしたリーゼとセレスを従業員さんが止めていたことからも窺える。
「ふはぁー」
荷物を置き、畳の床へと仰向けに倒れる俺。なんだろうね、この解放感。
そのまま部屋を見回してみる。
急須や湯呑が乗った足の短い木製テーブルに背凭れの角度を調整できる座椅子、薄型テレビに小型の冷蔵庫、押し入れの中には布団が綺麗に畳まれていることだろう。それらが軽く十畳以上はある和室に収まっている。どう考えても二人部屋にしちゃ広い。四人は余裕で入るぞ。
「白峰ぇ~、なにのんびり寛いでんだよ」
このまま眠ってもいいと思ってたところに、同室となった癖毛君が気持悪い声をかけてきた。
「なんだよ、別にいいだろ? 今の俺の疲労具合はお前にはわかんねえよ」
「んなことより聞いたか? ここって混浴なんだと」
「はぁ?」
半身を起こして『お前頭大丈夫か』的な顔をしてやると、興奮気味の桜居は戸惑ったように妙な手振りをする。
「あ、いや、混浴は混浴なんだが、アレだ。なんて言うんだっけ? 水着を着て入るやつ」
「スパか?」
「そう! それだ!」ビシっと桜居は俺を指差し、「リーゼちゃんやセレスさん、誘波さんの水着姿を拝められると思うと、部屋で茶なんか飲んでる暇はないぜ白峰!」
どこにでもいそうな女好きのキャラ的な言動をする桜居だが、こいつはこれでしっかりラインを引いている。というのも、この異世界オタクは地球人がどんだけ美女であっても全く興味を示さないんだ。
「誘波はどうか知らんが、リーゼたちは水着なんて持ってきてないぞ。だからなんの味気も色気もないレンタル水着になるだろうね」
秘湯巡りとだけ言われて水着を持ってくるやつがいたら、そいつは予知能力者だ。
「それはそれでオレ的にはオーケー。彼女たちならなに着たって似合うに決まってるさ」
「あっそ」
どうでもいいんで俺は素っ気なく返事した。が、内心ではちょっと楽しみにしてたりすることは秘密だ。もし俺の心の声を聞いたエスパーがいたなら……頼む、黙っていてくれ。
……あ、そうだ。
「そう言えば訊きそびれてたんだが、なんでお前がこの旅行に参加してんだよ? 誘波にでも誘われたのか?」
「んや、オレを誘ってくれたのはレトちゃんだぜ」
「はぁ?」
俺はこの部屋に入って二度目の素っ頓狂な声を上げた。
「レトって稲葉レトのことか? お前らいつの間に知り合ったんだよ」
「ん? ああ、言ってなかったか」桜居は自慢の癖毛を指で弄りつつ、「レトちゃんは異界研の副部長やってんだよ」
「!?」
危なく三度目の「はぁ?」を口にするところだった。異界研というのは桜居が非公認で創設した異世界研究部の略称だ。俺は今までこいつ一人でやっているんだと思っていたが、ちゃんと部員がいたのか。それも異界監査官の。正直、驚いた。
言われてみれば、桜居はバス停にいる時から稲葉レトと親しくお喋りしていた。旅館までの道中もオレに絡んで来ないと思ったら、彼女と話してたのか。
「レトちゃんもお前みたいにハーフなんだろ? この世界しか知らないから、他の世界に興味があるらしいんだよ」
確かに稲葉レトはハーフだ。微妙な関西弁を喋っているのは祖母が関西出身だからとかで…………どうでもいいか。桜居と稲葉がどこでどう繋がっていようが俺には関係のないことだ。
Prrrrr! Prrrrr! Prrrrr!
俺がシラけたタイミングを狙ったかのように携帯が鳴った。
『レイちゃん、今からみんなでスパ行きますよぅ。現地集合です。場所は桜居ちゃんが知ってると思います。あっ、レイちゃんたちの水着は受付で貸してもらえますよ♪』
――ガチャ。
ボケもなにもなく、誘波は一方的にそれだけ告げて通話を切った。俺に有無を言わさぬ早業だった。絶対に来るようにと言外に言ってやがる。
見ると、桜居は既に準備万端といった様子で急かすように部屋の出入口に立っていた。
一体どのくらいの距離を移動したのか知らないが、三十分ほどで俺たちを乗せたバスは目的地へと到着した。
バスとは地面を走る乗り物だ。それがこともあろうに空を飛んだのだから、世間がUFOの飛来と勘違いして大パニックに陥っていないか激しく心配だった。
だがそこは日本異界監査局局長の法界院誘波だ。世間様に見つかるようなミスはしない。
なんでも大気を操って光を屈折させ、飛行中のマイクロバスを透明化していたらしい。光学迷彩ってやつだ。そういえばこの前も自分自身を消していたな。本人は『空気と同化』とか言っていたが。
全員無事だったからいいものを、この三十分間は本気で死ぬ思いだったぞ。空を飛んだことにリーゼが大はしゃぎしたり、セレスが重度の乗り物酔いでダウンしたり、調子に乗った誘波がアクロバット飛行に挑戦したり……散々だった。
「――で、ここが目的地の温泉か」
率直な感想を言うと――でけえ。
雄大で緑豊かな自然の中に、日本風の荘厳な城が堂々と聳えていた。
均整が取れて美しく、新しいはずなのに築城してからの歳月まで感じさせるその城こそ、今日から俺たちが二泊することになる温泉旅館だ。なんとも日本大好きな誘波らしい趣味である。
チラっと空から見えた様子だと、城の奥には広大な森が広がっていて、ところどころから湯気が上がっていた。さらに城の手前には江戸時代の城下町みたいな建物がずらりと軒を連ねている。タイムスリップしたと言われても、俺は信じてしまうだろうね。
――祝ノ森リゾートガーデン。それがこの施設の名前らしい。ここまで和風にしてんだから横文字はやめろよ、と衝動的に突っ込みたくなったが、逆にその名前でここが現代だということを実感させられてしまう。まあ、俺にとってはどうでもいいけどな。
「レージ! アレなに! いい匂いがする!」
城下町風の道を駐車場からお城旅館に向けて歩いていると、最近はすっかり落ち着いていたリーゼの持病――『アレなにコレなに病』が発症しやがった。空を飛んでからというもの、リーゼのテンション上昇率が止まるところを知らない。はしゃぎ死にしなきゃいいが……。
「温泉まんじゅうだな。食いたけりゃ後で買ってやるよ」
「オンセン魔獣? 食べれるの? 今欲しい!」
まいどあり―。
温泉まんじゅう屋のおっちゃんが出す景気のいい声を背中に、俺はついつい奢ってしまった自分を情けなく感じた。ここは我慢を覚えさせる時だろ、俺。
「レイちゃんはリーゼちゃんに甘いですねぇ」
「どわっ!?」
団体の先頭にいたはずの誘波が横からひょっこり現れて蒼い瞳を向けてきた。未だにバスガイドの格好には目が慣れない。
「やっぱりラブなんですかぁ?」
「ぶっ!? な、なんでそうなるんだよ! リーゼは、ほら、アレだ」
唐突にアホなことを言い出す誘波に、俺は両手持ちした中華まん大の温泉まんじゅうをはむはむしているリーゼを横目で見ながら、
「――妹的な?」
「きゃー♪ レイちゃんがシスコンでロリコンのヘンタイちゃんになってますぅ!」
「源泉の熱湯に直接ぶち込むぞてめえッ!!」
「ふむふむ、ゴミ虫様はシスコンでロリコンでヘンタイ安定ですか」
「そこのガラクタ人形! メモるように復唱すなっ!」
ダメだ……一人でも疲れるのに、こいつらが揃うと俺の精神力が持ちそうにない。俺の癒しの場はどこにあるんだ。
と、乗り物酔いでうまく歩けずレランジェの肩を借りていたセレスが、リーゼの温泉まんじゅうを物欲しげに見詰めていることに俺は気づいた。
「どうしたんだ、セレス? お前も食べたいのか?」
訊くと、セレスはゆっくりと首を振った。銀色のポニテが力なく左右に揺れる。
「いや、なんでもない。今、食欲はないんだ」
そうだろうな。顔色も悪い。雪色の肌が不健康的な白さになっている。でも乗り物酔いなんてすぐ治るものだろ。俺はなったことないからよくわからんけど。
くだらないことで無駄に体力を浪費しているうちに、俺たち一行はお城旅館へと辿りついた。
城の中までまんま『城』なのかと思ったら、案外普通の旅館と大差なかった。エレベーターもちゃんとあるし、意味不明なグッズを売ってそうな土産屋もある。
それでも旅館の上に『高級』という文字がつくだろうね。趣ある和式構造のロビーには壊しでもしたら到底弁償できそうもない調度品がいくつも置いてあったりするし。
どうも誘波はここのお偉いさんとは顔見知りのようで、チェックインを済ませてからも社長っぽい貫禄を持つ初老の男とロビーで談笑を続けていた。
男の態度を見ていればわかる。誘波はただの常連ではなくビップ扱いだ。まあ、伊海学園を含めて表向きは様々な企業を束ねる実業家だからな、誘波は。
で、俺は桜居と同室になった。誘波にしては妥当な部屋割だ。女子や親しくもないやつと同室なんて疲労が溜まるだけだからな。
五〇二号室――つまり五階の二番目の部屋へと案内された。誘波は五階と六階を貸し切ったとかぬかしていたから、たぶん男性陣が五階で女性陣が六階という配分だろう。俺と一緒にエレベーターを下りようとしたリーゼとセレスを従業員さんが止めていたことからも窺える。
「ふはぁー」
荷物を置き、畳の床へと仰向けに倒れる俺。なんだろうね、この解放感。
そのまま部屋を見回してみる。
急須や湯呑が乗った足の短い木製テーブルに背凭れの角度を調整できる座椅子、薄型テレビに小型の冷蔵庫、押し入れの中には布団が綺麗に畳まれていることだろう。それらが軽く十畳以上はある和室に収まっている。どう考えても二人部屋にしちゃ広い。四人は余裕で入るぞ。
「白峰ぇ~、なにのんびり寛いでんだよ」
このまま眠ってもいいと思ってたところに、同室となった癖毛君が気持悪い声をかけてきた。
「なんだよ、別にいいだろ? 今の俺の疲労具合はお前にはわかんねえよ」
「んなことより聞いたか? ここって混浴なんだと」
「はぁ?」
半身を起こして『お前頭大丈夫か』的な顔をしてやると、興奮気味の桜居は戸惑ったように妙な手振りをする。
「あ、いや、混浴は混浴なんだが、アレだ。なんて言うんだっけ? 水着を着て入るやつ」
「スパか?」
「そう! それだ!」ビシっと桜居は俺を指差し、「リーゼちゃんやセレスさん、誘波さんの水着姿を拝められると思うと、部屋で茶なんか飲んでる暇はないぜ白峰!」
どこにでもいそうな女好きのキャラ的な言動をする桜居だが、こいつはこれでしっかりラインを引いている。というのも、この異世界オタクは地球人がどんだけ美女であっても全く興味を示さないんだ。
「誘波はどうか知らんが、リーゼたちは水着なんて持ってきてないぞ。だからなんの味気も色気もないレンタル水着になるだろうね」
秘湯巡りとだけ言われて水着を持ってくるやつがいたら、そいつは予知能力者だ。
「それはそれでオレ的にはオーケー。彼女たちならなに着たって似合うに決まってるさ」
「あっそ」
どうでもいいんで俺は素っ気なく返事した。が、内心ではちょっと楽しみにしてたりすることは秘密だ。もし俺の心の声を聞いたエスパーがいたなら……頼む、黙っていてくれ。
……あ、そうだ。
「そう言えば訊きそびれてたんだが、なんでお前がこの旅行に参加してんだよ? 誘波にでも誘われたのか?」
「んや、オレを誘ってくれたのはレトちゃんだぜ」
「はぁ?」
俺はこの部屋に入って二度目の素っ頓狂な声を上げた。
「レトって稲葉レトのことか? お前らいつの間に知り合ったんだよ」
「ん? ああ、言ってなかったか」桜居は自慢の癖毛を指で弄りつつ、「レトちゃんは異界研の副部長やってんだよ」
「!?」
危なく三度目の「はぁ?」を口にするところだった。異界研というのは桜居が非公認で創設した異世界研究部の略称だ。俺は今までこいつ一人でやっているんだと思っていたが、ちゃんと部員がいたのか。それも異界監査官の。正直、驚いた。
言われてみれば、桜居はバス停にいる時から稲葉レトと親しくお喋りしていた。旅館までの道中もオレに絡んで来ないと思ったら、彼女と話してたのか。
「レトちゃんもお前みたいにハーフなんだろ? この世界しか知らないから、他の世界に興味があるらしいんだよ」
確かに稲葉レトはハーフだ。微妙な関西弁を喋っているのは祖母が関西出身だからとかで…………どうでもいいか。桜居と稲葉がどこでどう繋がっていようが俺には関係のないことだ。
Prrrrr! Prrrrr! Prrrrr!
俺がシラけたタイミングを狙ったかのように携帯が鳴った。
『レイちゃん、今からみんなでスパ行きますよぅ。現地集合です。場所は桜居ちゃんが知ってると思います。あっ、レイちゃんたちの水着は受付で貸してもらえますよ♪』
――ガチャ。
ボケもなにもなく、誘波は一方的にそれだけ告げて通話を切った。俺に有無を言わさぬ早業だった。絶対に来るようにと言外に言ってやがる。
見ると、桜居は既に準備万端といった様子で急かすように部屋の出入口に立っていた。
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