異世界の村で始める獣人とのハーレム生活

りょう

第30話獣王妃

 二日で帰る、そんな事を言っておきながら村を出てもうすぐ一週間が経つ。今現在私はどこにいるのかというと、

「そろそろカエデ達が心配して探し出すぞルチリア。お主は戻らなくていいのか?」

「いいんですカグヤさん。私はまだ調べたりていないんで」

 島長のカグヤさんと共にとある資料庫の中に篭っていた。ここは何万冊もの本が眠っていて、ある事を調べたいが為に一週間近くここにいる。

「お主が何を調べようとしているのかは、大方把握しておるが、それを調べてどうするつもりなのじゃ?」

「カエデの事についてもっと知っておかなければと思いまして」

「カエデの事……もしやお主、見たのか?」

「つい一週間くらい前の話です」

 カグヤさんからなら何かしらの事を聞けるかと思った私は、かいつまんでながらも話した。ここの書庫である程度の情報を手に入れたはいいものの、やはり物足りなさが私の中にはあった。

「それは間違いなくカエデが……」

「ルチリア!」

 肝心な部分を聞き出そうとしたところで、カエデがタイミング悪く入ってきてしまう。

「お前、一週間も帰ってこなかったから皆で探して……って、カグヤさんが何でここに?」

 入ってきてすぐに何かと騒がしいカエデ君。もうすぐ一週間が経ってしまうのは分かっていたけど、わざわざここまで探しに来るとは思ってもいなかった。

「カエデよ、お主は実にいいタイミングでここに来たのう」

「いいタイミング?」

「お主は先日、無意識である力を使ったようじゃのう。ルチリアから聞かせてもらった」

「ルチリア、お前……」

「まあ怒るでない。一週間読んでいた資料を見ればそんなもの分かっておった。お主の中に眠る力、獣化。二つの血を持っているからこそ、持てる力じゃ」

「獣化?」

 それは言葉の通り、生身の人間がその身体を獣に変身させ通常の何倍もの力を発揮するという力。それは獣人とはまた違って、人にしか持てない力。

 その中でもカエデ君は更に特殊なものだった。

「もうお主自身が把握しておると思うが、お主の母親は獣人じゃ。そしてお主の母親は、妾の知り合いでもあり、そして……」

 ◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
 ルチリアの行方は、島の獣人達にポチ達が聞いた情報から特定することができた。場所は何とこの島とは全くの別の場所。そこで何かを調べているという。

 で、ようやくルチリアを見つけることができたのだけど、
 カグヤがそこにいたことによって、話は思わぬ方向へと転がっていった。

「お主の母親はは妾の知り合いでもあり、そして獣人達の中でも最高峰と言われている獣王妃と呼ばれておった」

 カグヤから語られたのは、先日ルチリアが話そうとしなかった俺の秘密。しかもその規模は俺の想像を超えていた。

「でも俺の母さんって、獣人の割にどうして人間の父さんなんかと出会ったんですか? その二つ名からすると一番偉い人みたいだし、接点があるようには……」

「それはただの偶然だったのかもしれぬ。妾も最初はそれに驚かされた。じゃが気がつけば二人は式も上げており、気づけば子供も生んでいた」

 トントン拍子に進んでいく話だが、一応話についていくことはできた。細かい部分までは分からないけど、どうやら俺の母親は本当に獣人だったらしい。しかも一番お偉いさん。

「でもどうして父さんはその事一切教えてくれなかったんだろう」

 ここまで聞いてもなお気になる事は山程ある。それは俺の母親がどうしていなくなってしまったのか、そして父親が何故ずっと黙っていたのか。
 そして俺の中にある本当の力とは。

 まだまだ気になる事が沢山残っている。

「それは恐らく話せなかったのではなかろうか」

「話せなかったって、どういう事ですか」

「その辺りももっとお主に話したいのじゃが、そろそろ島に戻らねば。妾にも仕事があるからのう」

「ああ、そうかですか。じゃあ俺たちも一緒に帰るかルチリア」

 仕事の都合で聞けないのなら仕方ないので、自分達も帰ろうとルチリアに促す。しかし彼女はカグヤの話の途中から、何故か本を読んでいて今もそれが続いている。

「私はまだ帰れないかなカエデ君」

 そして彼女は俺に向かってそう告げた。

 ◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
「帰れないって、ポチやミルフィーナ達も心配しているぞ」

「それでもまだ帰らない」

「おいルチリア、いい加減に」

 しろと言おうとしたがカグヤに止められてしまう。

「どうやら彼女は、お主の事以外で調べたい事もあって来たようじゃ。もう少しいさせてやれぬか」

「そうはいっても、このまま帰るわけにもいかないですし、仕方ないので俺もしばらくここに泊まりま、ポカルミの人達に伝えておいてもらえませんか」

「了解はしたが、しっかり見切りはつけるんじゃぞ」

「はい」

 そう言い残すと、カグヤは部屋を出て行き、俺とルチリアだけが残される。

「帰っても良かったのに」

「一人にさせて帰ると怒られそうだったからな。それに改めて二人で話がしたかった」

「私は何も答えられないけど」

「カグヤさんがあそこまで話したんだから、今更隠す必要なんてないけどな」

「……」

 再び本に没頭するルチリア。仕方がないので俺も、自分の事を知るために本を取り出す。ここから何か得られればいいけど。

「そういえばモカ様、元気になった?」

「あれから時間はかかったけど、少しずつ元気は取り戻せている」

「追っ手とかは?」

「今の所被害はない」

「それなら良かった。一週間も留守にしてたから心配になっちゃって」

「だったら二日で帰ってこいよ。皆心配してここまで来たんだから。まあ、ここに来たのは俺だけだけどさ」

「ごめんねカエデ君。でも私知らなければらない事ができたの」

「知らなければならない事?」

 その後ルチリアの口からある事が語られた。それは多分この先俺には関係のない事なのかもしれないけど、ルチリアにとってはかなり大切な事だと思う。

「だからできればカエデ君にも協力して欲しいの。ここの本を読み漁るために」

「分かったよ。でも俺も頼みが一つある」

「カエデ君の事については私、詳しくは知らないよ」

「違う。少し前に行ったあの海底都市。あれについて調べるのも同時にやって欲しいんだ」

「あの海底都市の事?」

 もし俺の推測が正しければあそこには、もっと重大な秘密が隠されている可能性が高い。
 俺の母親が、獣王妃と呼ばれていたもう一つの意味が、そこには眠っているかもしれないと俺は感じた。

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