異世界の村で始める獣人とのハーレム生活

りょう

第3話歓迎会と村の名前

「えっとつまり、ルチリアは虚弱体質なのに、俺を助けたのか?」

「簡単に言うとそんな感じなんだ。オ……私も長年一緒にいるけど、かなりの数で倒れている」

「この血は?」

「倒れるとルチリアの体から何故か血が出るんだよ。恐らくちょっとした怪我でも、出るんだろうな」

 突然ルチリアが倒れてい俺は動揺したが、よく聞くとそういう体質らしい。最初会った時は、強い子だなとか思っていたのに、無理を承知で俺を助けてくれたのか彼女は。

(何か申し訳ないな……)

 直接的な原因でなかったとしても、俺にも非はある。ちゃんと感謝しなければいけない。

「う……あれ? 私……」

 そんな事を考えている間に、ルチリアが目を覚ます。あれからまだそんなに時間は経っていないので、どうやら重傷ではなかったらしい。

「悪かったルチリア。俺なんかの為に無理までさせて」

「無理なんかしてないわよ。それに命の危険に晒されている人を見捨てることなんてできなかった。だから気にしないで」

「けど……」

「とにかく、あなたが無事だったんだからそれでいいの! はい、お終い」

 そう言って話を締められたが、俺の中ではやはり納得いかなかった。このままこの話を終わらせるのは嫌だったし、女の子を怪我させてしまったのだ。責任はある。今はこうして無事だが、またいつ何が起きるか、不安だ。

「カエデって言ったっけ? そんなに気負わなくていいんだぞ? 私も何度か助けられてるから、ルチリアには」

 けどそんな不安を和らげてくれるかのように、ポチが言葉をかけてくれた。

「その度に怪我しているけど、今もこうして生きているんだから、そんな難しい顔をするなよ。それでも感謝したいなら、頼み事を聞いてあげればいい」

「そっか、頼み事か……」

 魔物の調査を手伝ってほしい、それが彼女の頼み事。俺なんかにできるのかとか思っていたけど、それ以上に体が弱いルチリアが頑張っているのだから、協力する以外に道はない。

「分かった、俺協力するよルチリア。その魔物の調査」

「カエデ君……」

「ただし、今度からは無茶しないでほしい。これは俺なりの恩返しなんだから」

「分かった。じゃあ早速だけど、特訓を始めるわよ」

『あんたは少し休め!』

 こうして俺は、ルチリアへの恩返しという意味で、魔物の調査の協力をする事になった。この先に何が起きるか不安ではあるが、今は彼女を守れればそれだけでいい、そう思った。

 ◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
 その日の晩、村人総出で(三人しかいないけど)俺の歓迎会を開いてくれることになった。場所はこの村のほぼ真ん中にある集会所みたいな場所。料理は三人で作ってくれるという何ともウハウハなシチュエーション、のはずなんだけど……。

「えっと、これは食べれる物なのか?」

「何言っているの。食べれるに決まってるじゃない」

「何か動いているように見えるけど?」

「気のせいだろ気のせい」

(いや、気のせいじゃないだろこれ)

 彼女達が作ってきたのは、見たことのない動物の姿煮とか丸焼きとか、そういった類の物ばかり。しかもその中には一つ、見覚えのある物があった。

「あのさルチリア、これって……」

「もしかして分かっちゃった? 折角の食材だから勿体無いと思って、少しだけ剥ぎ取っておいたの。味は保証しないけど、きっとおいしいと思う」

「味くらい保証してくれないかな!」

 出された一品の内、一つが何とさっき俺を襲った魔物の一部を焼いた物だった。あんな僅かな時間の中で、いつ剥ぎ取っていたのだろうか?

「それでは皆さん、カエデ君が仲間に加わったのを記念に、乾杯!」

『かんぱーい』

 料理がだいたい揃ったところで、ルチリアが木製のグラスを片手に乾杯の音頭を取り、皆で乾杯をする。

「あれ?  意外と美味しいなこれ」

「だから言ったじゃないですかぁ。見た目で判断しないでくださいって〜」

「言われた覚えはないけど、確かに見た目で判断したのは駄目だったな」

「でしょでしょ? これ私が作ったんだ」

「馬鹿、それは私が作ったんだよ。ルチリアは料理が下手だから、何も手伝っていないじゃん」

「失礼ね。私だって料理できるもん」

「可愛く言ったって、下手な物は下手なんだよーだ」

「むきー、覚えておきなさいよ。今度作ったらギャフンて言わせてあげるんだから」

 四人でワイワイしながら、食事をする。今までそんな経験をした事がほとんどない俺にとって、それはとても新鮮な事で、今その中に自分が居ることに幸せを感じた。

「カエデ君? どうかした?」

「え? あ、いや。俺今までこんな風に食事を取ったことなかったから、ちょっと嬉しくてさ」

「お? もしかしてカエデはぼっちだったのか? 寂しい男だな」

「うるせえ」

 まあ、確かにぼっちに近かったのは事実だけどさ。それを堂々と言われると、何か腹が立つ。

「でも〜、カエデ君はぁ、もう一人ではありませんよぉ。今日から私達のぉ仲間ですから〜」

「そうね。カエデ君は今日からこの村の一員であり、私達の仲間よ」

「そうだな。そうなんだよな」

 こんな所にいきなり送られて来た時はどうなるかと思ったけど、今日一日過ごして、そんな不安も消えていた。俺がずっと探していた居場所が今ここにある。仲間と呼んでもらえた事が、俺はすごく嬉しかった。

「そう言えばまだ、この村の名前を聞いてなかったな。折角だから教えてくれよ」

 歓迎会が更に続く中で、俺はふとある事を思い出した。そう言えば今日一日村の名前を聞いてなかった。けど、俺の質問に対してルチリアは、少し悲しそうに答えた。

「えっとね。今はこの村に正式な名前はないの。ほら、カエデ君が来るまで三人だったから、村として登録されてないの」

 名前がない村。確かにこの少人数の村は、認められないのも無理がない。昔は人がいたらしいから、本当は村のなまえがあったんだろうな……。

「じゃあ折角だから、記念に新しく名前つけるか」

「え?」

 名前がないならつければいい。たとえ他が認めなくても、ここは小さな小さな村だ。名前がないなんて寂しい。だから名前を考えてあげることにした。

「そうだな、ポカミル村とか」

「何だその名前、格好悪い」

「でもいいんじゃないかな〜。私可愛いと思〜う」

「で、でも勝手に名前なんかつけていいのかな」

「勝手もなにも、ここは俺達の村なんだろ? だったらいいんじゃないかな。名前があっても」

「う、うん……」

 恥ずかしそうにルチリアは頷く。ちょっ、可愛いいんだけど。って、そうじゃなくて。

「よし、じゃあ決定な。今日からこの村はポカミル村だ!」

 こうして村の名前も決定し、無事歓迎会も終わり、俺はポカミル村としての日々が始まりを告げるのであった。

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