異世界の村で始める獣人とのハーレム生活
第14話素質と報告
最終的に家を追い出されてしまった俺は、涙を流しながらルチリアの家に転がり込んだ。
「俺が一日かけて作った家具達がぁ」
「よしよし、泣かないの。今度私が手伝ってあげるから」
「手伝うって言ったって、肝心の家が奪われたんだぞ」
「大丈夫。絶対に取り返してあげるから」
「ルチリア〜」
悔しかった。
家が奪われたことではなく(勿論それもあるが)、傷一つあいつにつけることができなかった事が。分かりきっていた事とはいえ、あまりに不甲斐ない結果に、俺は涙が止まらなかった。
「カエデ君、悔しいんでしょ? 今日の結果が」
「ああ……。すげえ悔しかった」
「だったら、もっと訓練しよう。明日はポチから剣術を教えてもらって、明後日は……うん、頑張って」
「何で急に見放した?! なあ、俺この後本当に死んだりしないよな? 死因が薬によるものとか、すごく情けないからな!」
何故周りはあれが危険だと分かっているのに、どうにかしようとしないのだろうか?
「しばらくは居候か……」
「仕方がない話よ。家を取り戻すには強くなるしかないんだから」
「強く、か」
今までそんな努力はしたことがなかった。運動と勉強、どちらかといえば勉強だった俺は、何か努力して一番を取ろうなんて考えなかった。だからその言葉は俺にとって、初めて身に沁みる事になるものだった。
「さてと、カエデ君お腹減ったでしょ? そろそろ夕飯の時間だから、手伝って」
「あ、はーい」
再びルチリアの家に居候する事になった俺は、新たな目標を見つけ、今日の一日を終えるのだった。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
翌日。
「なるほどなぁ。まあ、そういう事もあるよ」
「ポチも経験あるのか?」
「まあ少しね」
ポチに昨日の事を話すと、彼女はそんな事を言った。
「まあ、敗戦は誰にだってある事だから、そんなに気を落とさなくても大丈夫だ」
「一応そこまでは気を落としてないけど、俺勝てるかな彼女に」
「何を弱気になっているんだよ。お前が勝てるようになる為におれ……私達が鍛えているんだろ?」
「そうだけどさ。俺にそういう素質があるかって言われたら微妙だし」
「ルチリアも言ってたけど、まだ数日しか特訓していないのに、お前はかなり成長している。それは私も保証する。だから重ねればきっとあの馬に勝てるはずだよ」
「うーん……」
昨日の敗戦の影響か、先ほどからネガティブな考えばかりが生まれてくる。ポチやルチリアからここまで言ってくれるのは嬉しいし、自信に繋がるはずなのにどうしてもマイナス思考になってしまう。
そんな俺を見てポチは、突然俺に向かって剣を振りかざして来た。
「って、おわっ!」
俺は間一髪の所でそれをかわす。予備動作も何もなかったので、避けられたのは奇跡に違いない。ほんの少しでも反応が遅れていたら、真っ二つになっていた
「い、いきなり何するんだよ」
「ほら、今の動きで充分成長してるよ」
「は?」
何がなんだか分からず、頭にはてなマークを浮かべる。
「今の反射神経は、普通の人間は持っていないって事だよ。ましてや私の剣をかわせる人間なんて、一度も見たことがない」
「どんだけ自分の腕に自信を持っているんだよお前は」
たかだか一撃かわせたくらいで、ここまで称賛されるとは思っていなかったので、何とも微妙な反応をする。
「す、すごいよカエデ君」
その様子をいつから見てたのか、ルチリアが拍手しながら現れる。
「ルチリアまで大袈裟だって。こんな小さな事で」
「何を言っているのよ。今のはポチの本気の一振りよ。避けていなかったら確実に殺されていたのよ」
「今のが? そんなまさか」
「そのまさかなの。そうでしょポチ」
「まあ、本気って程ではないけど、あれは確実に命一つは頂けていたと思う」
「何でそんな危ないのを……」
「今のカエデなら避けられると思ったからだよ」
「今の俺なら?」
確かにさっきの一撃は一秒でも反応が遅れていたら、確実に斬られていた。だけどそれを避けられるような力は、元から持っているはずがない。ほぼ奇跡だから、それが成長の証だと言われても、やはりうんと頷けない。
「どうしてかは分からないけど、カエデには何か不思議なものを感じた。だからこうして教えているわけだし、それを試したくて今のをやったんだ」
「不思議な力……この俺にそんなものが……」
「まあ、まだ分からないけどね。でも、その力があればいつかは……」
「いつかは?」
「ううん。何でもない」
ポチが不思議な言葉を残すが、それについて言及はしなかった。
「まあ、まだまだ私には及ばないけどな」
「お前は一言余計だ!」
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
「島長、例の調査の報告書こちらに置いておきますね」
「おお、ありがとう」
所変わって島長カグヤの部屋。彼女の元には少し厚めの紙の束が置かれていた。それは少し前から行われているとある調査の、一時的な報告書だった。
(ふむ、やはりか)
一通り目を通し終わったカグヤは、ため息を一つ吐く。
(やはり彼を呼んだのは、正解だったのかもしれぬな)
その報告書の一部に人の名が書かれている。
山村楓。
その続きには、更にこう書かれていた。
かの者は、この世界において要注意人物である。
その名はカグヤが呼び出した一人の青年と、名前も性別も年齢も合致していた。
(これは偶然なのか、それとも必然か……)
カグヤはまた一度ため息をついた後、その報告書を机の中にしまった。
「俺が一日かけて作った家具達がぁ」
「よしよし、泣かないの。今度私が手伝ってあげるから」
「手伝うって言ったって、肝心の家が奪われたんだぞ」
「大丈夫。絶対に取り返してあげるから」
「ルチリア〜」
悔しかった。
家が奪われたことではなく(勿論それもあるが)、傷一つあいつにつけることができなかった事が。分かりきっていた事とはいえ、あまりに不甲斐ない結果に、俺は涙が止まらなかった。
「カエデ君、悔しいんでしょ? 今日の結果が」
「ああ……。すげえ悔しかった」
「だったら、もっと訓練しよう。明日はポチから剣術を教えてもらって、明後日は……うん、頑張って」
「何で急に見放した?! なあ、俺この後本当に死んだりしないよな? 死因が薬によるものとか、すごく情けないからな!」
何故周りはあれが危険だと分かっているのに、どうにかしようとしないのだろうか?
「しばらくは居候か……」
「仕方がない話よ。家を取り戻すには強くなるしかないんだから」
「強く、か」
今までそんな努力はしたことがなかった。運動と勉強、どちらかといえば勉強だった俺は、何か努力して一番を取ろうなんて考えなかった。だからその言葉は俺にとって、初めて身に沁みる事になるものだった。
「さてと、カエデ君お腹減ったでしょ? そろそろ夕飯の時間だから、手伝って」
「あ、はーい」
再びルチリアの家に居候する事になった俺は、新たな目標を見つけ、今日の一日を終えるのだった。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
翌日。
「なるほどなぁ。まあ、そういう事もあるよ」
「ポチも経験あるのか?」
「まあ少しね」
ポチに昨日の事を話すと、彼女はそんな事を言った。
「まあ、敗戦は誰にだってある事だから、そんなに気を落とさなくても大丈夫だ」
「一応そこまでは気を落としてないけど、俺勝てるかな彼女に」
「何を弱気になっているんだよ。お前が勝てるようになる為におれ……私達が鍛えているんだろ?」
「そうだけどさ。俺にそういう素質があるかって言われたら微妙だし」
「ルチリアも言ってたけど、まだ数日しか特訓していないのに、お前はかなり成長している。それは私も保証する。だから重ねればきっとあの馬に勝てるはずだよ」
「うーん……」
昨日の敗戦の影響か、先ほどからネガティブな考えばかりが生まれてくる。ポチやルチリアからここまで言ってくれるのは嬉しいし、自信に繋がるはずなのにどうしてもマイナス思考になってしまう。
そんな俺を見てポチは、突然俺に向かって剣を振りかざして来た。
「って、おわっ!」
俺は間一髪の所でそれをかわす。予備動作も何もなかったので、避けられたのは奇跡に違いない。ほんの少しでも反応が遅れていたら、真っ二つになっていた
「い、いきなり何するんだよ」
「ほら、今の動きで充分成長してるよ」
「は?」
何がなんだか分からず、頭にはてなマークを浮かべる。
「今の反射神経は、普通の人間は持っていないって事だよ。ましてや私の剣をかわせる人間なんて、一度も見たことがない」
「どんだけ自分の腕に自信を持っているんだよお前は」
たかだか一撃かわせたくらいで、ここまで称賛されるとは思っていなかったので、何とも微妙な反応をする。
「す、すごいよカエデ君」
その様子をいつから見てたのか、ルチリアが拍手しながら現れる。
「ルチリアまで大袈裟だって。こんな小さな事で」
「何を言っているのよ。今のはポチの本気の一振りよ。避けていなかったら確実に殺されていたのよ」
「今のが? そんなまさか」
「そのまさかなの。そうでしょポチ」
「まあ、本気って程ではないけど、あれは確実に命一つは頂けていたと思う」
「何でそんな危ないのを……」
「今のカエデなら避けられると思ったからだよ」
「今の俺なら?」
確かにさっきの一撃は一秒でも反応が遅れていたら、確実に斬られていた。だけどそれを避けられるような力は、元から持っているはずがない。ほぼ奇跡だから、それが成長の証だと言われても、やはりうんと頷けない。
「どうしてかは分からないけど、カエデには何か不思議なものを感じた。だからこうして教えているわけだし、それを試したくて今のをやったんだ」
「不思議な力……この俺にそんなものが……」
「まあ、まだ分からないけどね。でも、その力があればいつかは……」
「いつかは?」
「ううん。何でもない」
ポチが不思議な言葉を残すが、それについて言及はしなかった。
「まあ、まだまだ私には及ばないけどな」
「お前は一言余計だ!」
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
「島長、例の調査の報告書こちらに置いておきますね」
「おお、ありがとう」
所変わって島長カグヤの部屋。彼女の元には少し厚めの紙の束が置かれていた。それは少し前から行われているとある調査の、一時的な報告書だった。
(ふむ、やはりか)
一通り目を通し終わったカグヤは、ため息を一つ吐く。
(やはり彼を呼んだのは、正解だったのかもしれぬな)
その報告書の一部に人の名が書かれている。
山村楓。
その続きには、更にこう書かれていた。
かの者は、この世界において要注意人物である。
その名はカグヤが呼び出した一人の青年と、名前も性別も年齢も合致していた。
(これは偶然なのか、それとも必然か……)
カグヤはまた一度ため息をついた後、その報告書を机の中にしまった。
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