異世界の村で始める獣人とのハーレム生活

りょう

第18話三人と一人と一人

 翌日の朝食時に俺は昨日の事を三人に詫びた。ただ、昨日カグヤと一体何を話したのかまでは言わず、謝罪の言葉だけを述べた。

「今度また何も言わずに、こんな事あったら許さないからな。カエデ、あんたもこの村の一員なんだから、何かあったらまず誰かに相談するのが常識だろ。それを共有して解決して行くのが、私達の、ううん、この村のやり方なんだから」

「悪かったよ。俺も突然の話だったから、なんか動揺してさ。でももう大丈夫だから」

(この村のやり方……か)

 朝食を取りながら俺はポチの言葉について考えた。彼女の言う通り、一人で抱え込むのは良くないことだし、折角同じ村の仲間がいるのだから、相談をするのが村のやり方なのかもしれない。 
 何せこの村には(一応フォルナも含めて)五人しか住んでいないわけだから、誰か一人でも落ち込んでいればそれを無視なんてできない。

(それは俺だけに限った話じゃないしな)

「カエデ君、箸が止まっているよ?」

「あ、悪い」

「悪い、じゃないよ。やっぱり大丈夫じゃないんでしょ」

「いや、そうじゃないんだけど。さっきのポチの言葉を考えててさ」

「私の?」

「俺さ今まで、そういうことはしてこなかったんだよ。困っている誰かに手を差し伸べるようなことをさ」

 ふとこの二十年を振り返ってみる。別に友達がいなかったとかそういうわけではないのだが、今の彼女達みたいに団結力みたいなものはなかったし、誰か一人が困っていても親身になって相談に乗ってあげるようなそんな仲でもなかった。だから少しだけ自分には、今の言葉が新鮮だった。

「別に不思議な話ではないでしょ? 同じ時を長く過ごしてきたんだから、そういう気持ちが湧いたっておかしくない話だし、それに」

「それに?」

「ポチもミルフィーナも私も、同じくらい傷を受けてきたの。だからその分、お互いに理解できる所がある。そうだよね?」

「ルチリアちゃんの言う通りですね。同じ時間を過ごして、同じ傷を受けてきました。だから団結力は深いんですよ私達はぁ」

「そうだな。でもお前も今はその仲間の輪の中にいるんだから、少しくらいは話してくれたっていいんじゃないかな。昨日の事」

 ルチリアの言葉とともに、二人も言葉を添える。だがその言葉に俺は、少しだけ疎外感を感じていた。
 決して踏み入れられない壁の向こう側、そこに三人がいて俺はその外側にいるようなそんな感覚。その感覚はいつしか俺の不安を煽るようなものになりそうな気がして、それに恐怖すらも覚えた。

「ほらまた辛気臭い顔している。早くしないと皆朝食食べ終わっちゃうよ」

「ご、ごめん」

 結局俺は、ずっと考え事をしていてまともに朝食を取れなかった。

 ◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
 正午。昼飯を食べ終え俺は、今日の訓練の相手のポチの家を訪ねていた。

「って、あれ? 留守かな」

 何度もノックしてみるが返事はなく、家の中からも人の気配がしていなかった。

「おかしいな。昼の時はいたのに」

 彼女が訓練をすっぽかすとは考えにくいし、誰かの家にでもいるのだろうか?

「あ、カエデ君。言うの忘れてたけど、今日はポチ昼から出かけてていないよ」

 どうしたものかと考えていると、丁度近くを通ったルチリアが教えてくれた。

「何だよ留守なら教えてくれよ」

「ごめんごめん。今日はあの日だったのをすっかり忘れてたの」


「ん? 今日何かあるのか?」

「うん。ちょっとね」

 何か意味ありげにルチリアが言うが、それ以外に言葉を述べようとはしなかった。

「じゃあ今日はどうするんだ?」

「うーん、今ミルフィーナも家にいないし、私は昨日教えたから……」

「フォルナは論外だろうし、下手に村を出て何かあったら困るよな」

 というかミルフィーナも留守ってサラッと言ったけど、彼女も何か特別な用があったのだろうか?

「そうなのよね。じゃあ折角二人きりだから今日はお話でもしようか」

「お話? 何だよそれ」

「そんなの勿論決まっているでしょ。昨日の話」

「え? いや、俺は話す気は」

「朝の言葉忘れたの? ほら早く早く」

「お、おい引っ張るなって」

 最終的にたどり着いた結論が、俺が今最も避けたかったことなので、何とかそれは回避しようとしたが、半ば強引に集会所へと連れ込まれてしまった。

(何でいつもこうなるんだよ、俺は……)

 ◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
『二十歳の学生、未だ行方掴めず』

 連日テレビではこのニュースで持ちきりだった。

 行方不明の学生の名は山村楓。

 彼女はその名をよく知っていた。

「もう、あの馬鹿は本当にどこに行ったのよ。帰ってきたら絶対死刑なんだから」

 彼女の名は花村雫。小学生からの知り合いで、高校まで同じ所を通っていた、いわゆる幼馴染だ。大学は違うけどそれでも、家が近所なだけあって今でも仲が良かったりする。

(折角新年を一緒に迎えようと思ったのに)

 只今一月一日。一緒に迎えようと思っていた新年は、思わぬ形で一人での新年になってしまった。

(本当に許さないんだから、あの馬鹿)

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