フィアちゃんとボーパルががんばる短編集始めました
冬の童話祭企画 ウサギさんの大冒険始めました。 その1
むかしむかしあるところに、それはそれはかわいいウサギさんが親子3人仲良く暮らしていました。
ある日ウサギさんは夢を見ました。
封印されていた魔王が復活して世界中の人に悪さをする夢です。
夢の最後に女神様が出てきて言いました。
「このお告げは夢ではありません。近いうちに起こりうる未来です。あなたの力で世界を救ってください・・・」
夜中に飛び起きたウサギさんは両親を叩き起こして言いました。
「あたちは世界を救う為に魔王を倒しに行くの!」
気持ち良く寝ていたところを起こされた両親は言いました。
「あなた・・・疲れてるのよ」
「明日も忙しいから寝かせてくれ」
両親がまた寝てしまったのでウサギさんは書置きを残して旅に出ることにしました。
魔王を倒す大冒険の始まりです。
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「お前、うまそうだな」
「えー?」
ウサギさんが森へやってくると後ろから突然声を掛けられました。
ウサギさんが後ろを振り返ると大きなオオカミさんが居ました。
「まだガキだから喰えるとこは少なそうだが、ガキは柔らかくてうまいんだよな」
どうやらオオカミさんはウサギさんを食べるつもりのようです。
「オオカミさん。オオカミさん。あなたはあたちを食べるつもりなの?」
「ああ、そうさ。逃げても無駄だぞ?地の果てまでも追いかけてお前を喰ってやる」
「オオカミさん。オオカミさん。オオカミさんは・・・悪いオオカミさんなの?」
「ああ、そうさ。俺はわる~いオオカミさ。だからお前を殺して喰っちまうぞ!」
「ていっ」
キラーン
ウサギさんの飛び蹴りをくらって悪いオオカミさんはお星様になりました。
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ウサギさんの旅はまだ続きます。
「おい。あんなところにうさぎがいるぞ」
「ん?だーれ?」
ある日ウサギさんが山道で道草を食べていると声が聞こえました。
ウサギさんが顔をあげるとツギハギだらけのボロボロの服を着た薄汚れた男の人が3人居ました。
男の人は言いました。
「俺達は狩人だ。この近くの洞窟に他の仲間と一緒に住んでいるんだが一緒に来ないか?藁の布団とキャベツの芯をご馳走するぞ?」
「ホント!わ~い!」
ウサギさんは一も二もなく狩人さんの提案に飛びつきました。
狩人さん達の格好は昔お父さんに教えてもらった悪い盗賊さんにそっくりでしたがウサギさんは狩人さんの事を疑わずに信用しました。
ウサギさんは人を見た目で判断しない、良いウサギさんだったのです。
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狩人さんがたくさんの仲間と住んでいる洞窟に案内されたウサギさんはお腹いっぱいご飯を食べさせて貰って藁のベットも貸してもらいました。やっぱり狩人さんたちは良い狩人さんたちだったのです。
「う~、お腹が苦しいの~ちょっと食べ過ぎたかも~」
お腹がポンポンに膨らんだウサギさんは久しぶりの藁のベットの上で目を覚ましました。
急におトイレに行きたくなったのです。
「あれれ?」
目を覚ましたウサギさんは困ってしまいました。
寝ている間にいつの間にか扉に鍵が掛かっていて部屋から出られなかったのです。
いつもは使わない部屋だったらしいので誰かが間違えて鍵をかけたのでしょう。
戸締りは大事なのです。
「だれか~いないの~?」
ウサギさんは大きな声をだして人を呼びますが誰も答えてはくれません。
しかたないので扉を蹴破ったウサギさんはおトイレを探して洞窟をさまよいます。
すると、扉の隙間から光の洩れている部屋を発見しました。
あそこなら誰か居るでしょうから、おトイレの場所を聞くことが出来ます。
ウサギさんがトビラに近づくと中から声が聞こえてきました。
「それで?あのうさぎはどうなった?」
「ヘイお頭。あのうさぎのガキならここが盗賊のアジトとも知らずに気持ちよさそうに寝てやがりますぜ」
「そうか、次に町へ行くのは確か明日だったな。うまい事言いくるめて売り払ってこい」
「ヘイ。了解でさぁ。なーに、町に行けばおいしいものでも食べられるとでも言えばホイホイ付いてくるでしょうや」
何と良い狩人さんたちは実は盗賊さんでウサギさんを町に売り払うつもりだったのです。
ですがまだ盗賊さん達が悪い盗賊さんかどうかは分かりません。
盗賊さんたちはウサギさんにご飯と寝床をくれました。町に売り払うと言うのは何か理由があるのか、もしくは聞き間違いかも知れません。
明かりのついた部屋に入って、ウサギさんは聞きました。
「狩人さん。狩人さん。狩人さんは・・・悪い盗賊さんなの?」
突然部屋に入ってきたウサギさんにビックリしていた盗賊のお頭さんはウサギさんが盗賊さんたちの話を聞いていた事に気がつくとガハハと笑って言いました。
「そうだ。俺達は悪い盗賊だ!お前さんを拐って町で売り払うのさ!」
「えいっ」
ガリガリガリガリ!!
ウサギさんのたつまき蹴りをくらった盗賊のお頭さんは回転しながら洞窟の天井にぶつかり、そのまま頭の天辺で洞窟の天井をガリガリ削っていき、下半身が天井から垂れている愉快なアートになりました。
口をあんぐりと開けてアートになったお頭さんとウサギさんの間で視線を行ったり来たりさせていた盗賊さんたちにウサギさんは聞きました。
「盗賊さん。盗賊さん。盗賊さんたちは・・・悪い盗賊さんたちなの?」
部屋にいた盗賊さんたちは揃って首をぶんぶん振りながら答えます。
「「「いえ!俺達は良い盗賊です!!」」」
「なら、いいの」
良い盗賊さんたちの返事に満足したウサギさんは近くにいた良い盗賊さんにおトイレの場所を聞くと部屋を出ていきました。
ここの盗賊さんたちはこれからは人を見た目で判断しない良い盗賊さんに成ることでしょう。
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