フィアちゃんとボーパルががんばる短編集始めました

テトメト@2巻発売中!

異世界でサモナー始めました 2


「―――と言うわけで勇者様に、この国を。私達を救っていただきたいのです」

場所は変わって応接室っぽい部屋。今度は明確に動く姿を見た甲冑に囲まれる中で、俺達4人の対面に座る姫さんが両手を組んで俺達へと頭を下げている。

明らかにヤバイ指輪の効果で言葉が通じる様になった姫さんに連れられ埃っぽい地下室を脱出した俺達は姫さんへと現状の説明を求めたんだが、聞かされたのはこの国の酷い現状ばかり。

やれ、土地が痩せていて民達が満足に食べる事も出来ない。やれ、神の力が弱まっていて流行り病が流行している。やれ、周辺全てが仮想敵国で貿易もふっかけられる。やれ、この国の危機は周りの国が仕掛けた策略でこのままでは国民全員が皆殺しにされてしまう。

と言った事を時に涙しながら。時に我が身の無力さを嘆く様に淡々と。はたまた静かなる怒りに身を震わせながら、姫さんは熱弁した。
それはもう。未知の体験をして心が揺らいでいる時に、(外見は)美少女の姫様から「あなたにしか出来ない」とお願いされた少年が二つ返事で答えてしまうには十分な大義名分と説得力が宿るように。

もちろん指輪を渡される前の姫さんの会話を聞いていて、最初から疑ってかかれば所々矛盾しているというか違和感の有るポイントは見つかるんだが・・・

「もちろんです!困っている人を放ってなんておけませんから!なぁみんな!」

見るからに純情そうなこの少年には見抜けなかったらしい。

というか、お前が個人的に協力するのはいいんだけど、俺達まで協力するのが決定事項みたいな言い方止めない?
まぁ、クエストの進行上俺も協力するけどさ。
クエストのクリア条件が協力と敵対のどっちか分かんないけど、裏切るにしても今じゃないだろ。

「でもさ、助けるって言ってもどうするのよ。言ったらなんだけど国家レベルの危機にあたし達4人が協力した所でなにか変わるとは思えないんだけど?」

俺の隣に座っている勝気な少女。カレンがそう少年に反論する。その向こうでは内気な少女。ソラがコクコクと頷いている気配もするな。ちなみに少年の方の名前はセイギとかユウキとかなんかそんな感じだった。

「むぐっ・・・そ、それは・・・」
「それなら何も心配いりませんわ!」

カレンの正論に押し黙る少年へと助け船を出したのはにっこにこと作り物の様に完璧な笑顔を浮かべる姫さんだった。
いいことを思いついたとばかりに胸の前でパンと手を打った姫さんは小首を傾げて笑みを深めながらこう続けた。

「勇者様はこの世界に召喚されるにあたり、偉大なる神様より特別な力を授かると文献にありましたもの。皆様ご自身のステータスをご確認くださいませ」

え?マジで?クエスト限定スキルとか付与されてんの?どれどれ・・・んん?特に変わってないと思うんだが・・・

「す、ステータス・・・?それってゲームみたいなあれの事か?どうやって見れるんだ?」
「はい。やりかたはとっても簡単ですわ。『ステータスオープン』と口にすれば自分にしか見えない自分のステータスが見れますの」

ん?ステータスはメニューから見るか鑑定するかして見るものだと思ってたんだが音声認識もあったのか。ついでだし試してみるか。

「「「「ステータスオープン!」」」」

うん。普通にメニューから開いたのと同じだな。いちいち口に出すより鑑定するほうが早いわ。

「えっと・・・なんか色々数字が出てきたけど高いのか低いのかイマイチ分からないっていうか・・・」
「そうですね。では簡単にステータスの見方を説明いたしますわ」

そうだなぁ。俺も今回おそらく姫さんとは違って完全に協力NPCであろう少年君のレベルは気になる。ちょっとマナー違反だけど鑑定しちゃうか。

御方みかた 正義せいぎ 勇者
Lv 1
体力 5
筋力 5
敏捷 4
器用 3
魔力 3
精神 2

スキル
剣術 光魔法

え?なんでステータスまで見れるんだ?普通はNPCのステータスでも鑑定じゃ見れないはずなんだが・・・これもイベント限定の変更か?確かにこのフィールドに俺しかプレイヤーが居ないなら問題ないかもだが・・・
というかこの少年めっちゃ弱くね?なんか予想の10分の1ぐらい弱いんだけど。しかもレベル1だし。スキルも2個しかないし。でも職業が見たことの無い”勇者”だな。もしかしたら大器晩成型なのかな?
だとしたらレベル上げにも付き合わないとダメか・・・これはしんどいぞ。

「では、上から順番に説明しますわ。一番上が名前と職業。名前の説明は要りませんわね?職業とは初期のステータス値や、スキルに関係している物ですわ。
次がレベル。これはその者がどれだけの経験を積んでいるのかを表記したものですわ。
体力から精神までの6つに関しては基本文字通りですわね。体力が高いほどスタミナがついたり、体が頑丈になりますわ。筋力が高いほど力が強くなり、敏捷が高いほど素早くなりますわ。器用は手先の器用さなどに影響を及ぼすステータスで、主に生産職と言われる者達がこの数値が高いですわね。魔力は高いほど魔法攻撃力や魔法を使える回数が増え、精神は魔法防御力や状態異常への耐性に影響しますわ。
最後にスキルとは、神様から与えられたギフトのことですわね。同じ行動をしてもこのスキルがある者と無い者では結果がまるで違うのです」

神様から与えられたギフトって大袈裟な・・・
いや、でもNPCがスキルリストを開けないんだとしたらスキルは最初に設定されたやつだけって事になるのか?それなら確かに天賦の才や神の贈り物ギフトって言われてもおかしくないのか?

「そしてこれらのレベルやスキルは全て五段階評価・・・・・で表されていますわ。例えば筋力ならば一般人が1。町の力自慢の者で2。レベルの高い冒険者や騎士が3。国一番の武芸者で4と言った感じですわね。筋力に限らずステータスが5の者は並び立つ者の無い強者という事になりますわね。残念ながら今この国にステータス5を持つ者は居ませんの・・・」

・・・ん?んん?なんかこの姫さん凄い変なこと言ってないか?レベルもスキルも全て五段階評価?つまり最高値が5?ちょっと何言ってるのか分からないですね・・・

「えっと・・・ボク体力と筋力が5なんだけど・・・」
「あ、アタシも魔力と精神が5ね」
「あの・・・器用―――」

「な、なんですって!!」

あ、姫さんのメッキが剥がれた・・・と、思ったら速効で修復された。この姫さん精神たけーな。いや、本当に高かったら動揺しないか。

「こほん。失礼。取り乱しましたわ。それはつまり勇者様は皆様レベル5と言うことでしょうか?」
「いや、レベルは1だな」
「ええ、そうね」
「は、はい・・・」

「つまり・・・まだまだ成長の余地があるレベル1の時点でステータスが5・・・これは・・・」

小声でボソボソと呟く姫さんだが、思わずにやけそうになるのを必死に抑えてるようにも見えるな。楽しそうでなによりだ。

「ちなみに皆はどんなスキルを持ってるんだい?ボクは剣術と光魔法だって」
「アタシは火魔法と回復魔法ね。職業も魔女だし完全に後衛ね」

ちなみにこの勇者とカレンの会話を聞いている姫さんは「だ、ダブルスキル・・・」と更に驚愕しているとも付け加えておこう。

「わっ・・・たしは・・・調合・・・と、鑑定・・・」
「へぇ!鑑定と言えば異世界物の王道スキルじゃん!やったね!」
「ふ~ん?凄いの?」

「うん。ボクが読んだことのある小説だとね―――」

と、恐らくラノベ知識っぽい鑑定の仕様を説明する勇者君。まぁ、大体合ってるからいいんだけど、後ろで聞いてる姫さんの顔色がどんどん悪くなってるのに気づいているのだろうか。多分気づいてないんだろうなぁ。
あ、ついに顔色が悪いを通り越して悪い表情になった。標的にされない様に目を逸らしておこう。

「―――と言うスキルなんだよ!」
「へぇ~。なかなか凄いじゃない!ねぇ、ちょっと何か鑑定してみなさいよ!」
「ぇ・・・う、ぅん・・・」

カレンの勢いに押されてビクッとしたソラが何か鑑定してみるのに丁度いい物が無いかとキョロキョロした後に、自分の指に嵌っている指輪へと視線を固定した。

うわ~・・・ピンポイントにアカン物を・・・

「・・・鑑定―――――ぇ?」

ボソっと呟いてスキルを発動したソラの顔が怪訝なものへと代わり・・・直ぐに驚愕に染まったかと思うとみるみる顔色が真っ青になっていった。

「み、みんな!こ、これ、これぇ!」
「―――眠りなさい」

「ぁ・・・」
「え?ちょ、ちょっと!大丈夫!?」

顔色を真っ青にしたソラに心配そうな視線を送る勇者君達の目の前で急に立ち上がったソラがふらりと糸の切れた人形の様にソファに崩れ落ちた。
隣に座っていたカレンが慌てて項垂れるソラの体を揺するも、完全に意識が落ちてるみたいだな。

「あらあら。急な環境の変化に疲れたみたいですわね。騎士達。彼女をお部屋にお連れしてあげなさい。いい?丁重におもてなしするのよ?・・・分かったわね?」
「「はっ!」」

姫さんに命令されて、いままで壁の花になっていた甲冑の内2人がテキパキと動き出し、あっという間にソラを担いで運び出してしまった。
なんというか・・・甲冑に背負われるって硬そうだな。俺ならゴメン願いたい。

「あの子大丈夫かしら・・・」
「まぁ、確かにいきなり見知らぬ場所に飛ばされて、今すぐ帰る事はできないって言われたらストレスも溜まるか・・・」
「心配は要りませんわ。この王城には私達王族の主治医も勤めているのですから。どんな病もすぐに良くなりますわ」

その姫さんの言葉にほっと息をつく勇者とちょっと不安げに視線を伏せるカレン。
まぁ、ソラも勇者の1人だし、そのうち帰ってくるんじゃないか?ただし、気づいたとバレたからにはそれなりの制約で縛られそうなものだけどね。
ん~、助けに行くべきかね・・・?でもイマイチ敵対関係がハッキリしないんだよなぁ・・・俺対国で戦うのはやっぱり避けたいところだしなぁ・・・

「・・・ところで聞きそびれてたけどアンタのスキルは何なのよ。私達も教えたんだから教えなさいよ」

若干暗くなりかけた空気を切り替えるためかカレンが俺に水を向けてきた。
ん~、なるべく(姫さんに)情報は出したくないけど、黙ってるのも不自然だよなぁ・・・
というか、勝手に喋っといてこっちも教えたんだから教えろって理屈は変だよな。テストの返却時とかには良く出てくる謎理論だけども。

「ん~・・・俺の初期スキルは火魔法と召喚魔法だな。ウサギとか召喚できるぞ」

嘘は付いてないからセーフ。実際レベル1のときのスキルはその2つだったしな。

「ふっ」

・・・おい、笑ったぞ。この姫さん俺がウサギを召喚できるって聞いて鼻で笑いやがったぞ。
つまりはボーパルを侮辱したって事で、すなわち俺の敵ってことだな。よし。コイツは敵だ。

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