E.P.O〜エルフのパパになった俺~

りょう

第6話 ピヨ

     第6話 ピヨ
1
「駄目ったら駄目だ」
「何でですか! 何もおかしい所なんてないですよ」
「いやいや、充分おかしいからな」
本格的に梅雨の季節になり始めた六月の始め、ミリアがおかしなペットを拾ってきた。というより連れてきた。
「私達の世界でこの子を飼うのは、一般的なんです」
「そっちの世界でじょうしきでもな…」
ペットを一匹飼うのは別に問題ないと思っていた。犬や猫は俺は大好きだからだ。だからといって…。
「こんなヒヨコみたいな動物飼えるわけないだろう」
「文句言わないでほしいピヨ」
「本当ですよ」
「あのなあ、普通のヒヨコなら問題ないよ。小さくて可愛いし、鶏になってくれれば卵だって産める。けど、何でこんな馬鹿でかいヒヨコを家で飼わなければならないんだ?」
俺の身長が165ぐらいとすると、このヒヨコ(?)は、それより少し小さいくらいだ。つまりローナよりは遥かに大きい。もう一つ大きな問題は、さっきも軽く口出しされたが、
「僕は可愛いヒヨコぴよ。なんでそんなに嫌がるんだぴよ?」
「平気で喋ってるからだよ! めちゃくちゃ怖いわ!」
このヒヨコ普通に喋りやがる。ルシア達は本当にどんな世界に住んでいるんだよ。
「エルフが住む世界だぴよ?」
「知ってるわ!」
その世界にエルフが居なかったら、色々おかしいわ!
「はぁ…」
何でこうもまた、俺には不幸しか訪れないんだ? 幸せ来ないかな…。
「幸せ逃げますよ?」
「誰のせいだと思ってるんだよ…」
こうして我が家にまた一人(匹)、新しい家族が増えてしまったとさ。
本当に幸せ逃げてるかも…。
2
翌日、昼から講義があった俺は電車に乗って大学へ向かっていた。
ブー ブー
その途中、誰かから電話がかかってきた。見知らぬ番号、出るべきか悩んだが、一応出てみることにした。
「もしもし?」
「もしもし? 雄一君?」
え…。
電話の主は、すごく聞き覚えのある声だった。忘れるはずがない、最近夢でこの声を聞いたばかりだったから。
「あれ? 私電話番号間違えたかな」
俺が反応しないから、一人つぶやく電話の主。
「間違ってないよ。千代」
「あ、やっぱり間違ってないの? 雄一君なんだね」
「ああ」
電話をかけてきたのは高山千代。高校まで一緒に同じ学校に通っていた幼馴染の一人。
「久しぶりだね」
「ああ。もう二年くらいか?」
「そうだね。雄一が私達の前から居なくなってもう二年だよ」
「そうだな…」
そして俺の元彼女。
俺が最も愛していた人。けど俺は、それをぶち壊したんだ…。
                                         続く

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