E.P.O〜エルフのパパになった俺~

りょう

第5話 梅雨の季節に

    第5話 梅雨の季節に
1
エルフの姉妹がやって来て早一ヶ月。今日から梅雨入りの宣言が出て、毎日のように降る雨に憂鬱になり始めた今日この頃、俺の家ではある戦いが行われていた。

「むむ、パパ、ハートのkわざと止めてますね」

「さあ?」

「あ、私あがりだ」

「まじかよ。姉貴ずるしてないか?」

「そんな訳ないでしょ!」

「ズルしてた」

「ローナちゃんは、突然口開いたと思ったら、何でそんな事言うのかな?」

「あ、やっぱりズルしてたのか」

「あんた、実の姉を信用できないわけ?」

「当たり前だろ」

『うんうん』

「まさかの皆意見一致?!」

折角の休日だというのに、この雨なので今日は柚木達を家に呼んでトランプ大会をしていた(ちなみにローナは参加してないが、眺めてはいる)。

「そういえばルシアさん、服装変わったよね?」

柚木の不正が発覚したので、もう一度やり直そうとしていると、陽介がそんな事を聞いてきた。

「ああ。いつまでも同じ服を着ているわけにもいかないから、この前一緒に買い物
をしたんだよ」

「似合っているでしょうか?」

俺が説明すると、ルシアは恥ずかしそうに二人に聞いた。ちなみにルシアが着ているのは、白いワンピースだ。どうやら気に入ってくれているらしい。

「すげえ似合ってるよ。流石はエルフ族だな」

「それは関係ないと思うけど、私も似合っていると思う」

「あ、ありがとうございます」

笑顔で喜んでいるルシア。うん、確かに似合っている。

その傍、ローナが「むぅ」と拗ねていた。

「どうしたローナ? お前も褒めてほしいのか?」

ちなみにローナにも服を買ってあげた。ルシアと色違いのワンピースだ。

「ち、違う」

「その割には動揺しているぞ?」

「っ! うぅ…」

顔を真っ赤にして動揺しているローナを可愛らしく思いながら、俺は次の準備をするのだった。
2
夕焼けに染まる学校の屋上に俺はいた。

『雄一君、私ねあなたの事が…』

これは告白?

『ああ。俺もお前の事が…』

いや、違う。これは…。

『待ってよ! どこへ行くの?』

『俺は…』

俺の記憶。

『行かないでよ雄一君!』

『ごめんな。俺にはもうここにいる事はできない』

そう、あの記憶だ。

『お前逃げるのかよ!』

『逃げねえよ。ただ俺は、自分の道を見つけたからそこに進むだけだ』

『それが逃げだろ!』

二度と思い出したくない記憶。

今はどうする事もできない俺の忌まわしき記憶。

『本当に、ごめんな二人とも』


「おい雄一、お前の番だぞ?」

「えっ?」

「えっ? じゃないですよ。知らない間に寝ちゃって」

「あ、ああ。悪い悪い」

俺、いつの間に寝てたんだ?

さっきまでは普通に起きてたのに…。
                                                                 続く

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