魔法少女はロジカルでマジカルに

チョーカー

ラストバトル

 虚空のトンネルの先。
 列車はトンネルを抜けると、光に覆われた。
 もちろん、これは錯覚であり、〈ニホン〉側の光源は〈日本〉とデータ上の変わりはない。
 今まで、僕らは暗闇を感じていなかった。そのことに気づかせられるほどに、世界は明るさを有していた。
 やがて、目が慣れていく。
 その場所は知っている。いや、僕らは知っている。
 漫画やアニメ、映画にドラマ。それに学校の授業で―――
 実物こそ初めて見る場所のはずが、その場所は、僕らの日常生活に必要な媒体に刷り込まれている。
 実物の富士山を見たことない人が、富士山を容易に思い浮かべれるように―――
 東京タワーを見たことがない人が、東京タワーを容易に思い浮かべれるように―――
 僕らは、この象徴的な場所を知っていた。

 〈ニホン〉と〈日本〉の交流。
 ここは初めの地。
 まるで神殿みたいだ。
 神聖な気。
 そんなものが実在していると仮定するならば、それが満ち溢れている。ここはそんな場所だ。
 もちろん、地面に敷かれた列車のレールが、台無しにしてる感は否めないけれども。
 見れば、ギリシャ神話の建物の用に石造りの柱が規則正しく並んでいる。
 いくつも、いくつも・・・・・・。
 目で追って数えるのは不可能なほどの数だ。
 考えてみれば、この場所は僕ら側の世界で言うならば、大型ハドロン衝突型加速器と対なす場所。
 となると、この建物の先まで約30キロというわけか。

 そして、今
 僕らの周囲に潜んでいる人間達がいる。
 数は・・・・・・
 24人。思っていたより少ない。
 僕は敵意を見せず、両手を挙げる。ホールドアップというやつだ。
 彼らは姿を現さない。警戒を解かないとの判断か?
 伝わってくるのは僅かな動揺のみだ。
 どうやら、彼らが警戒してるのは僕ではなく、天堂任だけなのだろう。
 そして、彼らには天堂任が戦闘不能だという情報はないらしい。
 考えてみれば、その情報を知っているのは限られた人間のみ。
 それを行った播代浪は基本全裸な人なわけで、他者との連絡を取るツールは持っていないと考えるのが普通だし―――
 いや、列車が破壊されているのだから、乗務員なり、列車関係者への連絡はついているはずだと思うのだが?
 いろいろと腑に落ちないが、彼らが僕をスルーすると言うならば、それでかまわない。むしろ、好都合。
 僕は両手を挙げたまま、歩き出す。
 彼らが戦闘不能の天堂任をどうするのかはわからない。
 しかし、腐っても元要人。
 いきなり殺されることはないだろう。
 このまま捕縛され、裁判なしの処刑が強行されたとしても、半日くらいの猶予はあるはずだ。
 まぁ、この状態、この現状。ここまでのお膳立て。
 この物語の決着がつくとするならば・・・・・・
 半日もかからない。

 僕は前進する。
 僕を監視していた24人の視線。48の瞳から逃れた辺りだろう。
 やっぱり、彼女がいた。
 まっすぐ、ただ、真っ直ぐに、僕を見つめている。

 尾形真理

 魔力の暴走により、肉体に魔を宿しているという少女。
 結果、暴君であり暗君となり、〈ニホン〉を掌握していると言う。
 けれども―――
 僕の目には、かつての尾形真理と、なんら変わりがなく写って見える。
 あえて異常性を感じるならば、彼女の服装だけだろうか?
 全裸にマントを身に着けているだけである。
 正直、目のやり場に困ってしまう。
 やれやれ。播代浪の件といい、こちら側の世界では全裸が正装なのか?
 身を清める的な?
 そんな事を考える僕に対して彼女は
 「久しぶりね」
 と普通に話しかけてきた。
 「そうだね。久しぶり」
 と返す僕。

 「ところで何でに来たの?」

 そう彼女に言われて、考えた。
 『列車で来た』とジョークが思い浮かぶが、使うわけにもいくまい。

 「さぁ?僕は何で来たんだろうね」

 本音だった。そういえば、僕の目的はなんだろう?
 簡単に言ってしまうと

 「君に会いに来た―――かな?」
 「・・・・・・そう」

 素っ気無い返答だった。割と勇気を出したつもりだったのだけれども・・・・・・

 「じゃ、貴方は目的を叶えれたわけよね?」
 「そうなるかね?」
 「なるわね」
 「そうか・・・・・・」

 気がつくと、歩幅を合わせ、横に並んで歩き始めていた。
 普通に世間話を交わし、散歩をしていた。
 

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