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魔法少女はロジカルでマジカルに

チョーカー

最強狂乱劇

 「起きろッ」
 僕の目前で眠りこけている天堂任を起こす。
 余程、寝起きが良いのか、それとも寝ていなかったのか、天堂任は静かに目を開ける。
 「どうかしたか?」
 「敵だ。窓の外に人がいた」
 「・・・・・・そうか」
 妙に天堂任の反応が薄い。不自然さを感じる。
 「予想していたのか?」僕はそう聞かずにはいられなかった。
 その質問に天堂任は、頷いた。
 「否。こういう事ができる奴を知っているだけだ」
 「やっぱり、お前が〈日本〉に送り込んできたテロリストメンバーだった連中の一人か?」
 「うむ。最強の二つ名を持つ男だ」
 「最強?それってテロリストメンバーの中で最強って意味か?」
 「違う。〈二ホン〉で一番強い男と言う意味でだ」
 「―――ッッッ!?」
 魔法の強弱が、〈二ホン〉のヒエラルキーの位置づけが決定するはずで、その中で大統領の地位まで上り詰めた天堂任が最強・・・・・・のはずだが?
 「私と奴では強さのベクトルが違うのだよ」
 「ベクトル?強さの方向性が違うって意味か?」
 天堂任は頷き肯定する。
 「例えばライオン相手に素手で勝つ男がいたとして、その男をルールのある戦いで倒した所で『ライオンより強い男』になるわけではないだろ?」
 「うん。なるほど。そうだな」と返事を返すが、例えがイマイチ理解できていなかった。
 どういう事だろ?
 平然を装い、わかったふりをしていていたが、見抜かれていたみたいだ。

 「魔法というジャンルでは私の方が、奴を遥かに上回っている。
 だが、戦いが1対1で殺し合いまで展開したとすれば・・・・・・
 おそらく、私は奴に勝てぬであろうよ」
 「・・・・・それほどの相手なのか?」
 「あぁ、奴―――播代浪は、それほど―――
 いや、最強だ」

 断定口調。言い捨てるほど言葉の説得力。
 それほどの相手が来ているのか。
 僕は再び窓から外をのぞき込む。いくら、目を凝らしても人影は見えない。
 そもそも、あれは現実の出来事だったのか?
 「外は虚空の世界。それでも人間が存在できるのか?」
 「私も外がどういう環境になっているのかは、詳しく知らぬ。
 だが、2つの日本を繋いでいる以上、互いの干渉を受けている空間のはず
 空気ぐらいならあるだろうが・・・・・・」
 「だろうが?」
 「そうだな―――
 聞いた事あるか?超ひも論の中、ブレーンワールドシナリオによると我々の世界の重力は、高次元空間へ向かって放出されているという話を?」
 「いや、ぜんぜん。言葉の意味がわからない」
 超ひも論??ブレーンワールドシナリオ?それって知ってて当たり前の知識なのか?
 「つまりだ。測定ができない重力の渦ができていて、外に出れば四方八方に引っ張られて、体が破裂する可能性があるという話だ」
 「・・・・・・じゃ、外にいる奴はどんな魔法で、重力に耐えているんだ?」
 当然、かつての雇主であった天堂任ならば、かつて部下だった播代浪という男の魔法、その正体をしているだろう。そう思っての質問だったが―――
 「うむ、違うぞ。お前は勘違いをしておる。播代浪が最強だと言われている理由は魔法によるものではない。どんな過酷な任務、環境でも対応する強靭な肉体。
 一切の駆け引きを真っ向勝負の腕力頼みで生き抜いてきた生粋の化け物よ」

 ミシッ ミシッと列車の後方。
 金属が捻じられ、こじ開けらる異音が聞こえてくる。
 「来るぞ」と天堂任は短く言う。
 ドアのガラスに映る影。ドアを一枚隔てて人がいる。
 そいつは、ごく普通にドアを開いて、入ってきた。
 そいつの第一印象は・・・・・・全裸。
 ソイツは服を身に着けず、局部を隠すことすらせず、堂々と入室してきた。
 髪の毛は肩にまでかかるほどの長さ。パーマ?ウェーヴ?がかかっている。
 体は鍛えられているのが一目瞭然だった。
 筋肉が自己主張を行い、体のシルエットは筋肉の膨らみによって構成されている。
 そして顔は、意志の強さが滲み出ている。
 整った眉。眼光の鋭さ。中々、綺麗に鼻筋も通っている。
 口は左右均等に上がり気味で・・・・・
 あぁ、コイツは今の状況を楽しんでいるんだ。ハッキリとそれがわかってしまう。
 視線が一度、僕を捕え、次に天堂任に向かう。
 一瞬、黒目が大きく開き、口元が吊り上がっていく。
 「天堂任・・・・・・」
 そいつは天堂任の名を呟き―――
 駆け出した。

  

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