話題のラノベや投稿小説を無料で読むならノベルバ

魔法少女はロジカルでマジカルに

チョーカー

疑惑

 走る。廊下を走る。
 僕らは、病院の廊下を3人で走るという暴挙を行っていた。
 宝田十三雄の魔法。他者を操る魔法。
 これ病室に留まって迎え撃つのは、戦法として心許無い。
 いくらでも無限に襲い続けれる相手に待ち戦術は、論外だと結論付けて、僕らは病室から飛び出した。

 「コラッ!病院の廊下を走らないでください」

 そう言い、僕の行く手を阻んだのは、まだナースキャップも初々しい看護婦さんだった。
 あっ、看護婦さんって職業は、もう存在しないのか。
 えっと、看護師さん?看護士さん?
 僕は平謝りをしながら、それでも早足で立ち去ろうと―――
 立ち去るの止め背後を振り向く。
 背後を見れば、看護婦さんが間合いを詰め、腕を振り上げている。
 その手に握られているものはメス。
 そのまま、振り上げられた手が勢いよく僕へ向かって下ろされていく。
 だが、メスを握る腕を片手で止める。残った手を看護婦さんの首へ。
 そのまま壁へ看護婦さんを押しやり、親指と人差し指の2本で首の頚動脈を圧迫させる。
 看護婦さんの動くを止めて、数秒後。
 意識を失った看護婦さんは床へと倒れこんだ。

 「お見事ですね」と長谷川さんが声をかけてくる。
 「流石に5人目になると慣れてきますよ」と僕は返した。
 そう、すでに5人目。病院の外へ出るまでの僅かな距離で5回も襲われたのであった。
 時には、患者が―――
 時には、医者が―――
 時には、見舞い客が―――
 波状攻撃で襲ってくる。
 せめてもの救いは、その操る人間を強化してるわけではないという点だ。
 場所が病院ということもあって、最初に襲ってきた戦士のような相手はほとんどいない。
 それどころか、病院にいる人間のほどんどが、体のどこかを患っていて、戦闘能力がない人間が過半数を占めている。病院だから当たり前を言えばそれまでだが・・・・・・
 しかし、無関係の人間を巻き込むのはいい気がしない。
 早く外に出ないければならない。
 そう考える一方で、どこかに違和感を感じている。
 それがどこから来ているものか、うまく見当がつかず、苛立ちが浮かんでくる。
 そして、その苛立ちは不信感という形に変化して、ある人物に向かっていく。
 天堂任。彼の不自然さ。
 宝田十三雄の出現から、彼の口数が減っている。激減してるとすら言ってもいいかもしれない。
 僕は、天堂任に対して疑いを抱いている。
 何に対しての疑いなのかすらわからないけれども・・・・・・ 
 またしても背後から襲ってくる6人目を処理しながらも、僕はそんな事を考えていた。
 

「その他」の人気作品

コメント

コメントを書く