VSソフトチェーン

　空気が変わる。語りは終わり戦いの空気へと変化が行われる。
　こちらに向けていた掌。手の平に変化が生じてくる。
　何らかの攻撃動作。反応した瞬間に横へ飛んで避ける。
　不可視の攻撃を回避に成功した。だが、衝撃の余波が空中にいる僕を叩き、着地の瞬間に倒れそうになる。何とかバランスを整え、転倒を免れた。追撃が来ないのは、連射が効かないのか？余裕なのか？
　さっきまで立っていた場所を見ると攻撃の痕跡によって地形が変化していた。
　何かが通過してた跡がくっきりと見える。
　地面が削り取られて、周囲の木々が消え去っている。
　火力。今まで見た魔法使い達の中で最大の火力を保有している。
　絶対的な恐怖心。それを無理やり原動力へ変換させ、ソフトチェーンに向けて走り出す。
　短距離走の走りでありながら、攻撃が来ても瞬時に左右へ飛ぶ事を想定したステップワークで距離を詰めていく。
　どんな火力を持っていても、攻撃時に掌を向けるモーションがあるならタイミングが読める。
　ならば、インファイトで攻撃を避けながら戦えばいい。
　直ぐに間合いの距離が5メートルを切る。
　ソフトチェーンは僕に向かい、手を伸ばしている。攻撃のモーション。
　僕は、攻撃が発されるよりも速く、身を反転させて飛ぶ。
　またも衝撃の余波を受けるも、今度はバランスを崩さず着地。それと同時に加速する。
　2発目は打たせない。極限まで接近して見せて横へ動きを変化させる。
　僕の動きを目で追えていないのは確認すると、背後に回り込み、勢いのまま拳を放つ。
　後頭部への不意打ち。決まれば一撃KOコース。
　だが、僕の拳はソフトチェーンの体に届かなかった。
　何かがある。体が接触するほど近づいてみて始めてわかった。
　ソフトチェーンの体に薄らと何かが覆っている。
　それが反発力を有していて、僕の拳を遮ったのだ。
　驚愕するも一瞬、僕に向けてソフトチェーンの腕が向かって来る。
　回避運動を開始するも、完全には避けきれない。
　僕は両腕で自身の体を抱きしめるようにガードを固める。

　衝撃

　そして、浮遊感

　下から上へと体が舞い上がっていく。
　攻撃を受けた両腕は、想像を超えたダメージにより感覚が紛失している。
　そこにあるはずなのに削り取られたかのような錯覚。痛みすら感じない。
　もし、直撃していたら・・・・・・
　僕は湧き出た最悪のイメージを強引に頭の外へと追いやる。
　何とか空中で体を捻りながら着地するも前のめりに倒れそうになった。
　何とか踏ん張り、転倒を拒否。僕は再び前へ駆け出す。
　目前に薄ら笑いを浮かべたソフトチェーンの表情。
　そして来る攻撃のモーション。それをギリギリでしゃがみ込みやり過ごす。
　頭をかすめてくる衝撃の余波。当たれば死のプレッシャー。
　攻撃をやり過ごすと、僕はその場で飛び上がった。