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魔法少女はロジカルでマジカルに

チョーカー

ソフトチェーン 成る

 『ソフトチェーン』はシステムである。
 それを覆し、自らをソフトチェーンと名乗る男が目の前に1人。
 虚ろな表情はそのままに、目の光も薄い。
 だが、それの歩みには力強さが内容されている。
 滲みて出ているのは強者としての自信か?
 強い。間違いなく強い。
 恐怖からか?体に一瞬の震えが走る。
 それを無理やり押さえ込む。自分自身を誤魔化すために雄叫びを張り上げる。
 冷静さが欠けていく。どうする?どう戦う?
 考えれば、考えるほどに思考能力が欠如していく。
 逃げ出したい願望。それが相手を排除したいという欲望に転換される。
 逃げたい。でもそれはできない。させてもらえない。
 だから―――

 しかし、僕は飛び出さずにいた。
 ソフトチェーンが行っている動作にある。
 僕に片手を向け、指を広げて手の平を見せている。まるで猛る犬を抑える『待て』のポーズ。
 ただ、それだけで攻撃のタイミングを殺している。

 「そう猛り狂うなよ。私は気分がいいんだ。世の中の真理にたどりついた数学者もこういう感じなのだろう」

 笑う。ソフトチェーンは笑う。狂ったように笑い声を張り上げる。
 自分が成し遂げた功績を自慢するように語り始める。

 「本来の『ソフトチェーン』は魔力の相互利用によって魔法を使用するさいの補助、強化を行うシステム――― しかし、この戦いの最中に他人の魔力を送受信していく動き、パターンがある事に気がついたのだ」

 まだ、ソフトチェーンの言いたい事が理解できない。
 魔法のメカニズムについて、短期間で頭に叩き込んでいるが、専門外の知識と言わざる得ない。
 困惑している僕を横目にソフトチェーンは楽しげに続ける。

 「貴様が倒した『ソフトチェーン』の面々。意識を失うと魔力の供給が停止すると思い込んでいただろ?意識を失ったくらいで魔力の放出が止まると?違うね。それが大きな間違いなのさ。本来、それぞれに供給される魔力。そのコントロールを奪い、私一人に集中させたのさ」

 笑う。ソフトチェーンは笑う。狂気を秘めた笑い声、周囲に響いていく。

 「傑作なのは、『ソフトチェーン』というシステムを作り上げたリーダーですら、意識を失えば魔力の放出が止まると勘違いしてというところだ。ここまで追い込まれた経験がなかったってのもあるのだろうが――― その点だけは貴様に感謝しているぞ。私が魔法の真理にたどり着けたのは貴様のおかげだからな」

 笑う。ソフトチェーンは笑う。


   

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