魔法少女はロジカルでマジカルに

チョーカー

『ソフトチェーン』の謎 その⑧

 残り7人? いや、ここでリーダー格を仕留めれば終了じゃないか。
 この間合いなら、射程距離なんて関係ない。

 「中盤を厚く、ディフェンダーは左右のラインを上げろ」

 危うく聞き逃すほどの小さな呟き。
 意味を理解するより早く、何者かが近づいてくる音が聞こえる。
 救援を呼んだのか? 僕は素早く判断する。
 駆けつけてきた2人も、はやり格好は迷彩服のロン毛。
 現れるや否や、2人とも両手の掌に炎の塊を浮かべている。
 同じ魔法。いや、少なくとも同質の魔法といったところか。
 その炎が放たれるよりも早く、地面を蹴り上げる。
 巻き上げられた砂の塊を顔面に食らった1人が仰け反る。
 もう1人も、砂の残りが目に入ったのか、両手で顔を覆い攻撃を中断している。
 遠距離攻撃は遠距離だから強いのだ。
 姿を現した段階で敗北必至。
 否、それを言うならば、森という遮蔽物が大量にある場所が戦いのフィールドに選んだ段階で敗北必至か?
 まぁ、大人数を投入して秘密裏に戦う場所は限られているのだろうがな。
 あっさり、2人の意識を刈り取った僕は、再びリーダー格の男と対峙す・・る・・・。
 リーダー格の男。その姿を再び確認した瞬間に脳がフリーズする。
 男が手にしている黒い金属の塊。

 銃火器 銃器 拳銃 回転式拳銃 リボルバー

 それは銃。
 その先端をこちらへ向けている。
 漫画やアニメ、映画にドラマ。幼少期から刷り込まれた知識。
 それは・・・・・・
 撃たれたら死。
 そのリアルティが僕の思考を停止させた。

 「まさか、こんなおもちゃの方が魔法よりも怖いとは、最初に聞いた時は冗談だとばかり思っていたが・・・・・・。どうやら、本当らしいな」 

 くそッ!
 心の中で悪態をつき、逃げようとするが体が動かない。
 本能レベルで植えつけられた恐怖感が体を封じる。

 「もう1つ。なぜ、お前のような素人が魔法使い相手に勝ち抜いてこれたのか?その理由の1つがこれだ。こちら側の人間は魔法に対する恐怖心がまるでないからだ」

 確かに・・・・・・
 魔法による攻撃。
 例えば、周囲に火炎を立ち上げる魔法使いとの戦い。
 その魔法を喰らえば、確実な死が待っている。
 だが、そのことを僕はリアルに認識できていたのだろうか?

 いや、それより分かりやすいことがある。
 閃光の魔法使いに背後を取られた時、あれが後ろから拳銃で脅かされていたら、僕は動けていただろうか?
 いや、そんなはずはない。
 なぜなら、今まさに正面から拳銃を向けられて動けずにいるのだから・・・・・・ 
 

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