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魔法少女はロジカルでマジカルに

チョーカー

第2章 プロローグ 再起

 学校が終わり、放課後。
 自宅に帰った僕は、すぐに着替え自転車に飛び乗った。
 自転車。
 貯金していたお年玉と入学祝いのお金。そして、日々の小遣いを貯めて購入したロードバイクだ。
 10万を越える価格だが、残念ながらロードバイクでは安物の部類に入る。
 欧州のブランド品には違いないが、この金額の物は、大抵が台湾の工場で作られている。
 有名ブランドと無名ブランドのロードが同じ台湾の工場で作られ、別々の値段で販売されているという話を聞いた時には、流石にショックで寝込んでしまった事もある。
 今は、そんな事はどうでも良いかもしれない。
 僕は自転車を走らせる。
 僅かな傾斜。
 サイコン。サイクルコンピュターという、計器で自転車の時速を確認すると30キロを切りそうになっている。
 本当に鍛えている人は、僅かな坂道など、40キロをキープして駆け上がっていく。
 僕は足の回転数を上げ、加速していく。
 こうして走る事、30分。目的地に到着した。
 サイコンで走った距離を平均速度を確認する。自己最高とはいかなかったが、そこそこのペースを維持できた。

 こうして、息を切らせた僕がたどり着いたのはジムだ。
 ジムと言っても、量産型のモビルなんとかでもない。
 スポーツジムだ。
 時計を見ると5時ジャスト。仕事帰りのサラリーマンやOLで混雑する時間よりは早くつけたようだ。
 僕は安堵すると、すぐに受付を済ませ、更衣室で着替える。
 そして、簡単なストレッチを済ますと、スミスマシンに向かう。
 スミスマシン。
 トレーニングにはビック3と言われる種目がある。
 ベンチプレス。スクワット。デットリフトだ。
 スミスマシンとは、これらのハードトレーニングでアクシデントから怪我をしないために守ってくれるものだ。
 バーベルのバーをレールで固定。これにより、大きくフォームが崩れることがない。
 さらにワイヤーで自由落下を防いでくれる。

 僕はスミスマシンのベンチ台に横になり、ベンチプレスを開始する。
 ベンチプレスは、横になり真上にバーベルを上げることで、胸と腕の筋力を高めてくれる種目だ。
 僕の体重は65キロ。
 ベンチプレスで自分の体重と同じ重さを持ち上げれれば、それなりに鍛えれているという目安になる。
 だが、僕が挑むのは、倍の130キロ。
 これが持ち上がればトレーニングの上級者と言ってもいいレベルだ。
 僕が準備をしているとチラチラと視線を感じる。
 ここにいる男達はトレーニングに興味がある人間しかしない。
 他人が高重量に挑むと、自然に目で追ってしまうものなのだ。
 僕はギャラリーをよそにベンチ台に横になる。
 そのまま、目を瞑り集中力を高めていく。
 幾度となく失敗してきた130キロ。 今日は、今日こそは勝たせてもらう。
 目を開き、バーを握る。
 そのままゆっくりを130キロのバーを胸に向けておろしていく。
 胸にバーがつくと、次はバーを持ち上げていく。
 だが、腕が伸びきる前に止まってしまう。
 失敗かッッッ!?
 ギャラリー達が反応が伝わってくる。
 だが、僕は誓ったんだ。
 もう、二度と負けないと。

 僕は後頭部と首に力を入れる。 後頭部と首で背中を浮かせるブリッジという技術だ。
 再び腕に力が宿る。止まっていた腕が徐々に伸びていく。
 歯が軋む音。頭に血が登って行く感覚。自然と口から声が漏れる。
 そして、真っ直ぐ、一直線の伸びた腕。
 それまで遠巻きに見ていたギャラリーからも歓声が沸く。
 だが、僕は止まらない。
 再びゆっくりと下ろす。胸の位置まで。
 そして2レップス目を持ち上げた。

 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・
 ・・・・・・・・・・・・

 僕はベンチプレスを終わらせると、拍手を送るギャラリー達に反応せず、そのままシャワー室へと向かった。
 いつ来るのか? シャワーで汗を流し、普段着へ着替える。
 いつ来るのか? 受付へ戻り、鍵を返してジムを出る。
 いつ来るのか? ジムの出口。
 来ないつもりなのか?

 ジムから出て2歩、3歩と歩き、そして、振り向いた。
 男がいる。背後からぴったりついて来ていたのはわかっていた。
 顔を見ると、僕のトレーニングを見ていたギャラリーの一人だとわかった。

 「なんのようですか?」
 「・・・・・・」

 男は答えない。ただしのその鋭い眼光が答えを示している。
 僕は、何を言わずに先導していく。
 自分の自転車を通り過ぎ、しばらく歩く。
 すぐ近くにある大きな公園を目指して歩く。

 公園。
 幸いにも人気はない。
 男は、今だに言葉を発しない。

 「・・・・・・」
 「・・・・・・」

 互いに沈黙を繰り返すと、男は諦めたように声を出す。

 「立会いたい」
 「アハッ」 

 僕はこらえきれずに笑い声を出してしまった。
 怒るかなぁ? そう思い相手の表情を伺うが、表情に変化がない。
 強い者を見たら挑みたくなる。そういう考えが存在しているという事くらいは知っている。
 だが、高校生である僕を強者だと認めてくれて立会いを望む人間がいるとは・・・・・・
 つい、嬉しくて笑みがこぼれても仕方がないだろう。
 僕は黙って構えを取る。
 心が震え、魂が呼応する。
 肉体の制限が解き放たれていく。
 そして、僕は正面の男とぶつかった。

 嗚呼、これが僕の・・・・・・
 天王寺類の再起だ。

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