魔法少女はロジカルでマジカルに

チョーカー

夜の帳に包まれて

 
 「これ、どうするんだ? 結界は解けてるんだろ?」

 僕は、ゴロンと倒れているタイトを指して言った。

 「心配しなくても、すぐに協力者が来てくれて処理してくれるわ」
 「処理か。処理ねぇ・・・・・・」

 僕には、あまり実感がわかなかった。なんとなく、コイツは殺されちゃうのかなぁって、曖昧な感想を抱くだけだった。

 「そんな泣きそうな顔しなくても大丈夫よ。別に殺すわけじゃないわ」

 僕は驚いて顔を上げた。

 「そんなに泣きそうな顔に見えた?」
 「見えたわよ」
 「そう・・・・・・」

 その後、わずかな時間で黒ずくめの集団が現れて、タイトを回収していった。
 彼らも魔法使いなのだろうか? それにしては、物質文化の恩賞に慣れ親しんでいる感じがする。
 例えば、僕の目の前の彼女、尾形真理は機械などに慣れているフリをしているが、おっかなビックリ感は隠しきれていない。それに比べて、黒ずくめの連中は車や携帯電話をスムーズに使いこなしていた。

 「あの協力者って何?」

 彼女は少し考えてから説明を始めた。

 「この戦いは、私たちの国〈ニホン〉が貴方たちの国〈日本〉に侵略を目論んでいて、それを止めるための戦い。これは説明したわよね?」

 僕は頷く。

 「これは、〈ニホン〉の内閣総理大臣である天堂任の独断であって、〈ニホン〉の総意ではないわ。あくまで天堂任が秘密裏に行っている戦争工作なのよ」
 「なるほど、今の世の中に利益だけを求めて戦争を行おうとしても反対派に拒まれるだけ、それはそちら側の世界でも同じで、戦争には大義名分が必要なのか」
 「その通り。軍を動かすには、そのために理由づけが必要なの。シナリオとしては、〈日本〉は自然災害によって国としての機能が停止。その救援として〈ニホン〉政府は軍を派遣。どさくさに紛れて、実効支配を計画しているの」
 「救援と言いながら、攻撃を開始。内容も酷い自作自演ってやつだな」
 「そんな計画を事前に察知して、反戦主義の政治家も動いているのよ。〈ニホン〉も〈日本〉にも」
 「なるほど、それが協力者。というより、そう言う組織に君自身が所属してわけか」
 「大まかには、その認識であってるわ。だから、安心しなさい」
 「え?なにが?」
 「タイトみたいに派遣されたテロリストは、個人でありながら軍力の1つなの。だから、彼は殺されるなんてことはないわ。 拘束され、国会での追求で利用されるか、水面下の交渉に利用されるかのどちらかよ」
 「嗚呼、優しいんだね」
 「優しい?何を持って、そう評価したのかしら?」
 「いや、僕のことを気にして教えてくれたんだろ?」
 「そうね。否定はしないわ」

 夜の帳に包まれて、彼女の表情は見えなかった。
 今、彼女はどんな表情を浮かべているのか? わからないのが、少しだけ悔しい思いをした。


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