魔法少女はロジカルでマジカルに
侵略者 タイト
「これは、これは、ご機嫌よう。わざわざ異世界まで応援に駆けつけてくださいましたか?光の姫」
予想外。タイトは丁寧な言葉使いで挨拶を返し、最上礼で迎えてきた。
って、光の姫って呼ばれてるの?この子。
「逆よ。真逆よ。私の目的はただ1つ。自身の利益がため、世界を乱さんとする貴方たちを打破する事だけ」
「お戯れを、戦争に善悪を持ち出すなど拙い考え。姫と言えども、我らが大義に立ちはだかるは砕くのみ」
「ならば、私は私の正義を貫くまで。魔の法に乗っ取り、貴様に沈黙を約束する」
「しからば・・・・・・」
そう答えた、タイトの体は炎に包まれた。
タイトが帰宅するまでの間、尾形真理が話してくれた内容を思い出す。
タイト。原始の魔法使い。
その由来は、あちら側の〈ニホン〉で誰よりも炎に精通した魔法使いだからだそうだ。
僕たちの世界で最初に使われた道具は何か?木の枝や石など、そこら辺の物を武器として使ったが最初かもしれない。だが、明確な目的を利便性を持って使った道具は炎ではないか?
雷が木々に落ち、燃える枝を最初の道具と考える説がある。
それは、あちらも同じ事。 ただ、違うのは最初に使われた魔法は何か?そう置き換えられ、炎こそが最初の魔法だと考えられてるそうだ。
ゆえに『原始の魔法使い』と二つ名を持つ最強クラスの魔法使いらしい。
全身に炎を身に纏うタイト。
それに対して、尾形真理は腕を輝かせ、光人形を召喚する。
「お見事。こうも魔力濃度の低い地で、人形を完全再現するお手前、見事と言う他にありません」
「見くびるな。戦う相手に賛辞を贈るは格上のみ許された特権」
「ほう、我を同格とみなしますか。今も変わらぬお転婆ぶりは、幼き日を思い出しますな」
「黙れ」
その一言で光人形がタイトに向かう。
僕と戦った時より、遥かに眩い光を身に纏い
僕と戦った時より、遥かに速いスピードで
僕と戦った時より、遥かに力強い動きを魅せる。
しかし、いかなる攻撃も分厚い炎に守られた、タイトの防護服を突き破るにはいかない。
長い長い光人形の攻撃もガス欠のように失速を始め、攻撃が途切れた瞬間にタイトの周囲から火柱があがった。
デフォルメされたボクシング漫画でアッパーカットを食らった人のように光人形は空へ舞い上がる。
3メートルほど吹き飛んだ後、地面に叩きつけられた。
よろよろと立ち上がる姿は、最初のように眩しい光度を維持できなくなっていた。
「ただの一撃でその姿。いくら、光人形を量産してもジリ貧だと思いますがな」
タイトの言葉は本当なのだろう。あからさまに狼狽した表情を尾形真理は見せている。
というか、無計画で挑んでいたのか?
僕は、タイトに見つからないように四つん這いで、そっと彼女に近づき告げた。
「なーなー、一度、引かないか?」
「嫌よ、勝てないから逃げ出すような、弱い信念は持ってないわ。」
「そうか、少しだけ準備する時間と君の協力があれば、あいつに勝てるんだけどな」
「え?」
その時、驚いた顔をした彼女を見て、不覚にも可愛いと思ってしまった自分がいる。
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