魔法少女はロジカルでマジカルに
待ち伏せ
あれから3日・・・・・・。
何事もなく、僕は日常生活を送っていた。
あれ以来、尾形真理から話しかけてくる事もない。
もしかしたら、夢か幻だっただろうか?
いや、あれは間違いなく現実だった。じゃ、どういうことなのか?
きっと、僕よりも適任者が見つかり、僕はお払い箱にでもなったのだろう。
高校生の僕が、魑魅魍魎悪鬼羅刹の魔法使いと戦う事自体が無謀だと考えたのかもしれない。
ホッとする反面、少しくらい残念だったりもする。
そんな下校時の通学路。彼女は待っていた。
「最初のテロリストの居場所がわかったわ。来なさい」
「え?いきなり? なんの準備も説明もなしで?」
予想外の言葉に狼狽してしまった。
「当たり前よ。問答無用、先手必勝、先制攻撃あるのみよ」
尾形真理は僕の腕を掴んで、ずんずんと歩いて行く。
こうして、僕、天王寺類は、何の覚悟も準備もなく戦場に舞い降りる事になった。
電車の揺られる事、1時間。到着した場所は今時珍しい木造のアパート。
すぐ近くに電車の線路が通っていて、電車が通過する事に建物が揺れてる気がする。
建築法とか問題ないのか?人が住む場所として問題があるように思うけど。
「ここがテロリストの1人が隠れてるアジトよ。今は留守のようだけど、帰宅時に即アタックを仕掛ける」
「いや、即アタックって言われても・・・・・・」
「貴方は、初の実戦だから後方支援を頼むわ。私が危なくなったら、投石でもして助けて」
「・・・・・・」
そりゃ、そこら辺の石でも全力投球すれば、かなりのダメージになるだろうけど。
なんだろう?この戦力外通知を受けた気分は?
それから、しばらく僕らは電柱に身を隠し、テロリストの帰宅を待つことになった。
「そう言えば、なんで隠れ家をアジトって言うのか調べてみたのだけど、英語のアジテーティング・ポイントとロシア語のアギトプンクトを略した言葉なのよね」
尾形真理は、割とどうでもいい豆知識を披露してきた。
「全く違う世界から来たわりには、無駄に博識なんだな」
「パラレルワールドだからよ。文化の違いが大きいだけで基本は変わらない世界なのよ」
「へぇ~」
そんな無駄話を続けていると、不意に空気が変わった。
線路の下、高架下をゆらゆらと歩いている人物が1人。
僕は、それが目的の人物だと認識する。
それが魔法使い全員に共通するものかわからないが、なんとなく雰囲気が尾形真理と似ているものがある。
「あれがテロリスト?」
「そう。あれが原始の魔法使いと言われてる男。名前はタイト」
タイト。見た目の印象は、しがないサラリーマンの格好をしている。
メガネとスーツ姿。オフィス街に自然と溶け込めそうな服装。
しかし、その目はギラギラと獲物を狙う猛禽類のようだ。
そして、その目が僕らを捉えた。
タイミングよく、電車が通り、周囲が揺れる。
『ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・』
妙に電車の音が大きく聞こえた。
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