絶望世界の最強機≪インフィニティ≫ ~三十五歳、異世界に立つ。~
第三百三十八話 客人(後編)
レーヴアジトの入り口は洞窟めいている。それはこの入口がレーヴのアジトへとつながる道であるということを悟られないためでもある。
今、崇人とコルネリアは洞窟を歩いていた。とはいえ、それはあくまでもカモフラージュされたものに過ぎない。ついさっきまではコンクリートの通路だったのが、岩石に偽装したコンクリートの通路を歩いているだけに過ぎないのだから。
「それにしてもうまく偽装出来ているなあ……。これなら解らないかもしれない。何かの拍子でここに立ち寄ってもただの鍾乳洞にしか見えないよ。それこそ、きちんとした検出キットでもあれば話は別だが」
「そんなものを常日頃持ち歩いている人間なんて、物資が枯渇しつつある現状で居ないよ。いても物好きな研究者くらいだろうね。……その研究者も殆ど残っていないわけだけれど」
「というか、こんな砂漠の中心、誰も来たがらないのが現状じゃないのか?」
「その通り」
コルネリアは頭を叩いて笑みを浮かべる。
参った、とでも言わんばかりのポーズだ。
「まあ、実際のところそれを狙っているのだけれどね。この岩山自体カモフラージュしている。実際にある岩山をなるべく外見で気にならない程度に改造して、中身を私たち一色に染め上げる。それがアジトの計画であり、そして成功した」
「成功していなかったら、今ここに僕とコルネリアが居ないだろうが」
「それもそうね」
コルネリアはポケットからカードキーを取り出した。
カードキーは薄茶色に染められており、彼女の手のひら大のサイズだった。
「コルネリア、それで扉を開けるのか?」
「そうよ。このカードキーは私以外には限られた人間しか常に所有していない。それに、貸与するときは必ず私の許可を得る必要があるし、カードキーにはコピーガード機能も入っているから、コピーして入ろうとすると、セキュリティキーの唯一性が崩れるとしてアラームが鳴って、そのまま入ることは出来ない」
「そんな厳重な警備にして、何の意味がある?」
「この世界は、それ程に治安が最低になってしまったということだよ。タカト」
彼女の言葉は、間違いなくその通りだと――は思わなかった。別に今の世界も十年前の世界とあまり変わりないと思ったからである。
「まあ、そんなことはどうだっていい。今は客人を出迎えることをしなければならない。客人は待っているだろうからな。私たちのことを」
「客人、だって? リリーファーを連れてきていて、客人なわけがないだろ」
「どうしてそこまで断言できる?」
「だってリリーファーは戦争の代名詞と言っても過言では無い、戦闘マシンだ。それが数機も来ているということは、戦争か、或いは戦力を背後に置いて有利に交渉を進めるかの何れかに落ち着くはずだ」
「……成る程、そういう考えね。エイムスが慌てているのも、もしかしてそういう理由だったのかしら?」
ゆっくりと落ち着いて話すコルネリアに、若干の怒りを募らせながら崇人は話を続ける。
「そうだよ。そうだからこそリリーファーの出撃許可を求めたんだろ。そうじゃないと、いつ狙われるか解らないからな。何しろ、人間にとってみればリリーファーの武器は『規格外』だから」
「規格外、ねえ……。まあ、あなたがそう思い込む理由も解らないでも無い。けれど、一番の規格外はほかならぬあなたよ、タカト?」
「僕が?」
言葉を聞いて、崇人は肩を竦める。
「まさか。そんなことは」
「有り得ない、って? そんなことは無いはずよ。あなたは規格外、それも最強のリリーファーを操縦していた。それが、世界のバランスを崩すようなインタフェースを利用していたからと言って、その事実が変わることは無い。あなたは、それを自覚していないのよ」
「そう……なのかなあ?」
未だ崇人は認識していない。
コルネリアは頭を掻いて、話を続ける。
「インフィニティは最強のリリーファーだった。だからこそ、誰が使うのかは解らなかったし、使うことによって、操縦者たるあなたが何らかの被害を受けることも解っていたはず、認識していたはずよ。インフィニティは最強のリリーファー。いくらあなたでもそれだけは……認識しているはずだけれど?」
「まあ、それはな。リリーファーというシステムはあまり理解できていない部分が多いけれど……、それでも、インフィニティが最強のリリーファーということは、それくらい僕だって知っているよ」
崇人とコルネリアは並んで歩く。
道はまだ長く、等間隔に置かれた蝋燭――正確には蝋燭めいた照明オブジェクトが通路を煌々と照らしている。
「……それにしても、長い通路だな。少しは短くしようって考えは無かったのか?」
「レーヴ自体がテロ組織と世界に認定されてしまっているからね。それを考えると、強固にせざるを得ないのさ。レーヴのアジトは強固にしておき、最悪アジトが崩壊したとしても、その崩壊が進んでいるうちに兵力たるリリーファーを出動させる。……どうだい、完璧な作戦だろう?」
「ああ、そうだな。アジトに関しては時間稼ぎとしか考えていないこと以外は」
「だったら、君はどう考えるというのだい? インフィニティも加わって、正真正銘レーヴはリリーファーの兵力だけならば最強の軍隊が完成したと言えるだろう。けれど、そこを守るアジトがすぐに壊れるようでは大変だろう? だから、このようにしているというわけ。実際は細長い通路がアジト本体にくっついているようになっているのだよ。少々、面倒な造りにはなっているけれどね」
「けれど、その通路が崩落してしまったら出ることは出来ないんじゃないか?」
崇人の素人質問に溜息を吐くコルネリア。
「あのねえ……。幾ら何でも、一つの通路だけでは危険予知が出来ていないと言えるだろう? 考えてみれば解ることだ、普通、外の世界へとつながる通路は一つだけ用意しておくわけではない。緊急性を鑑みて、二つ以上用意する。それが、このアジトということだよ」
コルネリアの質問に頷く崇人。
崇人は未だ納得していないようにも見えるが、正直なところ、彼女にとってそれを気にしているわけでは無いので――その質問を重要としているわけではない、とでも言えばいいだろうか――あまりその反応について気にすることは無い。
通路を進むと、扉が見えてきた。
また扉か……と崇人は思った。
対してコルネリアは別のカードキーを壁にタッチした。
電子音とともに、扉はスライドしていく。
刹那、眩い光が彼らを包み込んだ。
はじめ、それが何であるか解らなかった。
しかし、目が慣れてきて――辺りを見わたして――そこが漸くどこであるか理解した。
「ここは……外か?」
同時に――彼の目に一台のトラックが入った。
トラックの隣には、三人の男女が立っている。
その一人が、ヴィエンス・ゲーニックであることに、崇人はすぐに気が付いた。
ヴィエンスも崇人であることに即座に気付き、崇人の方に駆けていく。
「タカト!」
「ヴィエンス!」
崇人とヴィエンスは、身体を強く抱き合った。
再会の抱擁である。
僅かばかりの再会の喜びも束の間、中に割り込むようにコルネリアは言った。
「ヴィエンスが居るということは、やはり君たちはハリー騎士団……いや、今はハリー傭兵団だったかな? 君たちということになるね」
「……正直なところ、俺たちはハリー騎士団だろうがハリー傭兵団だろうが、そのネーミングについてあまり気にするところでは無いと考えている。なぜなら、名称が変わろうとも、そのイメージ……コンテンツには何の変りもないからだ」
「ふうん。相変わらず、面倒な表現ばかり好むのね。装飾ばかり凝っても、本心は変わらない。ほんとうに、昔から変わらない」
「コルネリア、それは君も同じだろう? レーヴの代表になっているのは驚いたが、所詮その程度だ。君の実力を国で使えない、そう思ったから君は国から逃げてレーヴを立ち上げた。そうだろう?」
「だとしたら、どうする?」
コルネリアはヴィエンスの言動を鼻で笑った。
「コルネリア、今はこういうことを話している場合では無かった。今回は、あることをするためにここに来たのだから。……レーヴ代表として問う。今から、交渉の場を設けたい。突然のことではあるが、大丈夫か?」
「交渉、だと?」
ああそうだ、とヴィエンスは言った。
「詳細は敢えて省き、結論だけ述べるとしよう。協力しないか、レーヴ? 君たちと僕たちの目的は、アプローチこそ違うが合致する。協力するには、いい機会だと思うのがね」
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