絶望世界の最強機≪インフィニティ≫ ~三十五歳、異世界に立つ。~
第二百五十六話 第一回戦Ⅱ
キュービック・ガンナー。
立方体のステージで戦う、言うならばガンマン同士の撃ち合いだ。簡単にいえばたったその一言で片付けられてしまうが、しかし、実戦は難しいものである。そう簡単にうまくいくものではない。百聞は一見に如かず……なんて言葉があるくらいだが、それはまさにそのとおりだと思い知らされる。
「さぁ、やってまいりました。キュービック・ガンナー第一試合! 北ヴァリエイブル対西ヴァリエイブルの対決となります!」
それを聞いて、崇人たちから見て一番右端に居た、向かい合っている二機が一歩前に出る。
北ヴァリエイブルはパワータイプのドゥブルヴェ、西ヴァリエイブルはバランスタイプのアッシュだ。それぞれが前に出た途端、一層凄みが増した。まるでお互いが睨みあっているようにも見えた。
リリーファーに表情を変えることなど、出来ないというのに。
「それではルールを再確認しておきます。……とは言っても非常に単純でベーシックなルールです。持てる武器はライフル類のみ、それだけで戦っていただきます。それ以外はほぼ互角の戦いと言ってもいいでしょう! しかしながら、そんなシンプルなルールだからこそ、多彩な戦闘が行うことが出来ます。ルールが少ないということは、転じて縛られるものが少ないということになりますからね。そして、その後は一対一タイマンです!! 肩と頭に付けられた風船が凡て割られたら負けとなり、勝者は最終的に残った風船の数に応じてポイントが配分されることとなります。一見難しそうですが……まぁ百聞は一見に如かずとも言いますから、実際にやってみましょう!」
後半の解説があまりにも適当めいていた解説の女性の話は程々に聞いておくとして、崇人は改めてルールの精査に入った。
崇人が事前に聞いていたルールと今発表されたそれは若干ながら差異があった。その一番の例と言えば、『勝者へのポイント配分』だろう。
崇人が事前に聞いていたルールではそれについて詳細には記されていなかった。だから、勝者については一律にポイントが付与される――そう思っていたのだ。
だが、違った。
即ち、同じ『勝ち』でも風船一個での勝者と風船三個での勝者では後者の方がポイントは高く付与される。
そのルールによって、自動的に選手には『何があっても自分の風船を減らしてはならない』という制約が課せられることとなるのだ。
「これはあまりにも厄介だな……」
崇人はそう呟いて、小さく舌打ちした。これが急遽なのか予定調和なのかは彼が解ることではないが、だとしても酷かった。
どのチームも殆どはそう思っているに違いない。そして――一番辛いのは紛れもなく今から戦わされる二人、だ。二人は今、正式なルールを理解した。だから作戦もそのように組み立て直さねばならない(だけなら未だ何とかなるかもしれないが可能性によってはゼロから作り直すことだって考えられる。その場合は……最低最悪の状況とも言えるだろう)。
「……おっと、前置きが長くなってしまいました。失敬失敬。それでは第一試合、開始です!!」
声と同時に右手を上げる。
そして会場は再び喚声に包まれた。
◇ ◇◇ ◇◇ ◇◇ ◇◇ ◇◇ ◇
その頃。
ある暗闇にて。
「……大会の試合が、どうやら正式に始まったようだな」
暗闇、とはいったがそこに光源が無いわけではなかった。唯一そこにあった光源はテレビだった。テレビの音量は耳を澄ませば漸く聞こえるであろうくらいのボリュームに調整されており、そして画面には大会の様子が映し出されていた。
「一年前……我らの『同志』が行動を失敗した。諸君、それはいったい何が原因だろうか?」
「それは勿論、インフィニティでしょう。彼は……あれを利用しようと考えた。あれは普通の人間に使えるわけがないことは、我らの中でも通説になっていた。だから、彼の意見に反対する声も、勿論多かった。だから私はあそこを……『赤い翼』を離れた」
「それは確かに解ります。インフィニティは伝説級の代物だ。そしてそれを操ることが出来るのも……ただ一人しかいない、最強のリリーファー。故に皆その存在を欲する。解る、解るぞその気持ちは……」
「でも実際にそれをやろうとして失敗したのが赤い翼だった……。そうでしょう?」
ニヤリと笑みを浮かべた男の顔が、テレビから発せられる光に照らされる。
その顔は――。
「ケイス、その通りだ。お前も知っている通り、赤い翼はそれによって瓦解した。一部の残った人間は残党として新たな赤い翼となり再興を誓ったが……、まぁ、そう簡単に行くなら今までの苦労など考えられないわけだがな」
ケイスと呼ばれた人間はこの組織の中でも一目置かれた存在になっているようだった。
ケイスと呼ばれた男は頷く。
「さて……それじゃこれからどうします? インフィニティを手に入れる訳にはいかない。かといってパイロットを手に入れても呼び出される可能性がある……」
「だったら、簡単だ」
ボスと思われる男は笑みを浮かべる。
「そいつを殺してしまえばいい。起動従士とはいえ、そいつはただの人間だ。殺すのは簡単だよ。噂によれば武術の経験もない、素人だって話じゃないか。だったら簡単だ。簡単に殺すことが出来る。現に一年前のティパモール内乱では銃撃で殺すことに『一度は』成功したのだからな」
そう。
崇人――インフィニティの起動従士は一度こそ死亡した。しかしながら、なぜか復活している。どういうメカニズムでそうなったのかは今や誰にも解らない。
だからこそ、メンバーの多くは疑問に思っていた。
一度死んでしまった男を、もう一度殺すことは出来るのだろうか? ということに。
「……確かにメンバーの中にも、あの起動従士をほんとうに殺すことが出来るのか? ということについて疑問を抱いている人間が多いかもしれない。私もはっきり言って半信半疑だ。ほんとうに出来るのだろうか? 倒すことが出来るのだろうか? そう思っているよ」
一息。
「だがやらねばならないんだよ。我らの野望……ティパモールの真の再興を果たすためには」
それはそのとおりだった。彼らの目的はずっと虐げられ続けているティパモールを復興させること。そして、ヴァリエイブルから独立すること――であった。
しかしながら、そんなことが簡単に行くわけもない。下手すれば一年前の二の舞になってしまう。だからこそ、今回は入念に作戦を練り上げた。
「さあ……諸君、とうとうこの時はやってきた。出撃の時だ。作戦は前回話し上げたとおり。諸君……健闘を祈る」
そしてその人間たちは、闇から完全に姿を消した。
◇ ◇◇ ◇◇ ◇◇ ◇◇ ◇◇ ◇
その頃。
大会では第一試合の決着が早くもつこうとしていた。最終戦の相手はスピードタイプのイクスとバランスタイプのアッシュ。イクスに乗るのは北ヴァリエイブルのレックス・ハフリギー、アッシュに乗り込むは西ヴァリエイブルのリザ・カノーセルであった。両者の戦闘技術はほぼ互角と言っていい。それでいて風船は両者ひとつも欠けていない状況であった。
二戦終えた現状、北ヴァリエイブルが二つ勝利を手に入れているため、リザはどうしてもこの試合で勝っておきたかった。でないと、ますます今後西ヴァリエイブルが不利になってしまうからだ。
対してレックスは冷静だ。既に二本勝利を手に入れているからかもしれないが、焦りなど見られない。それが一番戦闘中ではいいテンションなのかもしれないが、かといって油断は禁物だ。
目指すのは完全勝利。レックスはそう考えていた。前の二人がいずれも勝利しているのだから、ならばここでレックスも続いて存在感を見せつけるべきだ、と考えていた。
この大会で優勝するのも確かに重要なことであるが、それ以上に王様に才能を見出してもらい、起動従士になる――。それも彼らにとって重要なことであったのだ。
「だからね……負けてもらうよ。これは僕のためでもあり、北ヴァリエイブルの威光のためでもあるんだ」
イクスはライフルを構える。
対してアッシュはまだ逃げるのみだ。どうするか考えるための時間稼ぎとも言えるだろうが、観客からの反応は冷たい。
「おらー、もっとドンパチやれえい!」
「そうだそうだー! リリーファーってもんはドンパチしてナンボだろー!」
観客からの声が立方体ステージ内部にいるアッシュとイクスに聞こえるかどうかは解らない。だが、アッシュのコックピットで考え事をしているリザには何となくその反応が聞こえてくるようだった。実際に聞こえてくるわけでは、まったくもって無いのだが。
「お互いに疲弊しているのは確か……」
リザはコックピットに常備されている時計を見て、言った。もうこの試合が始まって五分以上経過している。通常、学生がリリーファーを動かす時間は二分、多くて十分であると言われており(主に肉体面での理由による)、それを考えるとあと五分程しか時間がない。
ならば、引き分けに持ち込むか? 彼女は考えたがすぐに首を振った。十分しか長くても駆動を許されない学生のため、十分経過すると自動的に引き分けとなる。だから戦闘技術に自身のない学生はそうするのもひとつの作戦とも言えるのだ。
だが、それをしても結果は一緒だ。即ち、このまま引き分けに持ち込めば両者四十ポイントが課せられる。それでも差は縮まらないに等しい。だったら風船を凡て割ってしまって、せめて差を少しでも縮めた方がましである。
考えていくあいだにも、時間は刻一刻と過ぎ去っていく。決断するにはあまりにも短すぎる時間だが、戦場ではそうも言っていられないし、こんな考える猶予ですら与えられないだろう。
リザは決断した。
「……こうなったら、やるしかない!!」
イクスから放たれた弾丸が、アッシュを掠めたのは、ちょうどその時だった。
「くそっ、外した!!」
アッシュのコックピット内部にいるレックスはそれを見て舌打ちした。
彼は焦っていた。なぜか? それは『時間』が関係している。五分が経過してもまだ戦闘に進展が見られないこと、これを彼は焦っていたのだ。どうにかせねばならないと思っていたのだ。
「だが……どうする?」
かといって効果的な作戦が考えついたわけでもない。引き分けに持ち込むなど言語道断。出来ることなら、勝利に持ち込みたかった。たとえ、自分の風船が一個しか残っていなかったとしても。
立方体のステージで戦う、言うならばガンマン同士の撃ち合いだ。簡単にいえばたったその一言で片付けられてしまうが、しかし、実戦は難しいものである。そう簡単にうまくいくものではない。百聞は一見に如かず……なんて言葉があるくらいだが、それはまさにそのとおりだと思い知らされる。
「さぁ、やってまいりました。キュービック・ガンナー第一試合! 北ヴァリエイブル対西ヴァリエイブルの対決となります!」
それを聞いて、崇人たちから見て一番右端に居た、向かい合っている二機が一歩前に出る。
北ヴァリエイブルはパワータイプのドゥブルヴェ、西ヴァリエイブルはバランスタイプのアッシュだ。それぞれが前に出た途端、一層凄みが増した。まるでお互いが睨みあっているようにも見えた。
リリーファーに表情を変えることなど、出来ないというのに。
「それではルールを再確認しておきます。……とは言っても非常に単純でベーシックなルールです。持てる武器はライフル類のみ、それだけで戦っていただきます。それ以外はほぼ互角の戦いと言ってもいいでしょう! しかしながら、そんなシンプルなルールだからこそ、多彩な戦闘が行うことが出来ます。ルールが少ないということは、転じて縛られるものが少ないということになりますからね。そして、その後は一対一タイマンです!! 肩と頭に付けられた風船が凡て割られたら負けとなり、勝者は最終的に残った風船の数に応じてポイントが配分されることとなります。一見難しそうですが……まぁ百聞は一見に如かずとも言いますから、実際にやってみましょう!」
後半の解説があまりにも適当めいていた解説の女性の話は程々に聞いておくとして、崇人は改めてルールの精査に入った。
崇人が事前に聞いていたルールと今発表されたそれは若干ながら差異があった。その一番の例と言えば、『勝者へのポイント配分』だろう。
崇人が事前に聞いていたルールではそれについて詳細には記されていなかった。だから、勝者については一律にポイントが付与される――そう思っていたのだ。
だが、違った。
即ち、同じ『勝ち』でも風船一個での勝者と風船三個での勝者では後者の方がポイントは高く付与される。
そのルールによって、自動的に選手には『何があっても自分の風船を減らしてはならない』という制約が課せられることとなるのだ。
「これはあまりにも厄介だな……」
崇人はそう呟いて、小さく舌打ちした。これが急遽なのか予定調和なのかは彼が解ることではないが、だとしても酷かった。
どのチームも殆どはそう思っているに違いない。そして――一番辛いのは紛れもなく今から戦わされる二人、だ。二人は今、正式なルールを理解した。だから作戦もそのように組み立て直さねばならない(だけなら未だ何とかなるかもしれないが可能性によってはゼロから作り直すことだって考えられる。その場合は……最低最悪の状況とも言えるだろう)。
「……おっと、前置きが長くなってしまいました。失敬失敬。それでは第一試合、開始です!!」
声と同時に右手を上げる。
そして会場は再び喚声に包まれた。
◇ ◇◇ ◇◇ ◇◇ ◇◇ ◇◇ ◇
その頃。
ある暗闇にて。
「……大会の試合が、どうやら正式に始まったようだな」
暗闇、とはいったがそこに光源が無いわけではなかった。唯一そこにあった光源はテレビだった。テレビの音量は耳を澄ませば漸く聞こえるであろうくらいのボリュームに調整されており、そして画面には大会の様子が映し出されていた。
「一年前……我らの『同志』が行動を失敗した。諸君、それはいったい何が原因だろうか?」
「それは勿論、インフィニティでしょう。彼は……あれを利用しようと考えた。あれは普通の人間に使えるわけがないことは、我らの中でも通説になっていた。だから、彼の意見に反対する声も、勿論多かった。だから私はあそこを……『赤い翼』を離れた」
「それは確かに解ります。インフィニティは伝説級の代物だ。そしてそれを操ることが出来るのも……ただ一人しかいない、最強のリリーファー。故に皆その存在を欲する。解る、解るぞその気持ちは……」
「でも実際にそれをやろうとして失敗したのが赤い翼だった……。そうでしょう?」
ニヤリと笑みを浮かべた男の顔が、テレビから発せられる光に照らされる。
その顔は――。
「ケイス、その通りだ。お前も知っている通り、赤い翼はそれによって瓦解した。一部の残った人間は残党として新たな赤い翼となり再興を誓ったが……、まぁ、そう簡単に行くなら今までの苦労など考えられないわけだがな」
ケイスと呼ばれた人間はこの組織の中でも一目置かれた存在になっているようだった。
ケイスと呼ばれた男は頷く。
「さて……それじゃこれからどうします? インフィニティを手に入れる訳にはいかない。かといってパイロットを手に入れても呼び出される可能性がある……」
「だったら、簡単だ」
ボスと思われる男は笑みを浮かべる。
「そいつを殺してしまえばいい。起動従士とはいえ、そいつはただの人間だ。殺すのは簡単だよ。噂によれば武術の経験もない、素人だって話じゃないか。だったら簡単だ。簡単に殺すことが出来る。現に一年前のティパモール内乱では銃撃で殺すことに『一度は』成功したのだからな」
そう。
崇人――インフィニティの起動従士は一度こそ死亡した。しかしながら、なぜか復活している。どういうメカニズムでそうなったのかは今や誰にも解らない。
だからこそ、メンバーの多くは疑問に思っていた。
一度死んでしまった男を、もう一度殺すことは出来るのだろうか? ということに。
「……確かにメンバーの中にも、あの起動従士をほんとうに殺すことが出来るのか? ということについて疑問を抱いている人間が多いかもしれない。私もはっきり言って半信半疑だ。ほんとうに出来るのだろうか? 倒すことが出来るのだろうか? そう思っているよ」
一息。
「だがやらねばならないんだよ。我らの野望……ティパモールの真の再興を果たすためには」
それはそのとおりだった。彼らの目的はずっと虐げられ続けているティパモールを復興させること。そして、ヴァリエイブルから独立すること――であった。
しかしながら、そんなことが簡単に行くわけもない。下手すれば一年前の二の舞になってしまう。だからこそ、今回は入念に作戦を練り上げた。
「さあ……諸君、とうとうこの時はやってきた。出撃の時だ。作戦は前回話し上げたとおり。諸君……健闘を祈る」
そしてその人間たちは、闇から完全に姿を消した。
◇ ◇◇ ◇◇ ◇◇ ◇◇ ◇◇ ◇
その頃。
大会では第一試合の決着が早くもつこうとしていた。最終戦の相手はスピードタイプのイクスとバランスタイプのアッシュ。イクスに乗るのは北ヴァリエイブルのレックス・ハフリギー、アッシュに乗り込むは西ヴァリエイブルのリザ・カノーセルであった。両者の戦闘技術はほぼ互角と言っていい。それでいて風船は両者ひとつも欠けていない状況であった。
二戦終えた現状、北ヴァリエイブルが二つ勝利を手に入れているため、リザはどうしてもこの試合で勝っておきたかった。でないと、ますます今後西ヴァリエイブルが不利になってしまうからだ。
対してレックスは冷静だ。既に二本勝利を手に入れているからかもしれないが、焦りなど見られない。それが一番戦闘中ではいいテンションなのかもしれないが、かといって油断は禁物だ。
目指すのは完全勝利。レックスはそう考えていた。前の二人がいずれも勝利しているのだから、ならばここでレックスも続いて存在感を見せつけるべきだ、と考えていた。
この大会で優勝するのも確かに重要なことであるが、それ以上に王様に才能を見出してもらい、起動従士になる――。それも彼らにとって重要なことであったのだ。
「だからね……負けてもらうよ。これは僕のためでもあり、北ヴァリエイブルの威光のためでもあるんだ」
イクスはライフルを構える。
対してアッシュはまだ逃げるのみだ。どうするか考えるための時間稼ぎとも言えるだろうが、観客からの反応は冷たい。
「おらー、もっとドンパチやれえい!」
「そうだそうだー! リリーファーってもんはドンパチしてナンボだろー!」
観客からの声が立方体ステージ内部にいるアッシュとイクスに聞こえるかどうかは解らない。だが、アッシュのコックピットで考え事をしているリザには何となくその反応が聞こえてくるようだった。実際に聞こえてくるわけでは、まったくもって無いのだが。
「お互いに疲弊しているのは確か……」
リザはコックピットに常備されている時計を見て、言った。もうこの試合が始まって五分以上経過している。通常、学生がリリーファーを動かす時間は二分、多くて十分であると言われており(主に肉体面での理由による)、それを考えるとあと五分程しか時間がない。
ならば、引き分けに持ち込むか? 彼女は考えたがすぐに首を振った。十分しか長くても駆動を許されない学生のため、十分経過すると自動的に引き分けとなる。だから戦闘技術に自身のない学生はそうするのもひとつの作戦とも言えるのだ。
だが、それをしても結果は一緒だ。即ち、このまま引き分けに持ち込めば両者四十ポイントが課せられる。それでも差は縮まらないに等しい。だったら風船を凡て割ってしまって、せめて差を少しでも縮めた方がましである。
考えていくあいだにも、時間は刻一刻と過ぎ去っていく。決断するにはあまりにも短すぎる時間だが、戦場ではそうも言っていられないし、こんな考える猶予ですら与えられないだろう。
リザは決断した。
「……こうなったら、やるしかない!!」
イクスから放たれた弾丸が、アッシュを掠めたのは、ちょうどその時だった。
「くそっ、外した!!」
アッシュのコックピット内部にいるレックスはそれを見て舌打ちした。
彼は焦っていた。なぜか? それは『時間』が関係している。五分が経過してもまだ戦闘に進展が見られないこと、これを彼は焦っていたのだ。どうにかせねばならないと思っていたのだ。
「だが……どうする?」
かといって効果的な作戦が考えついたわけでもない。引き分けに持ち込むなど言語道断。出来ることなら、勝利に持ち込みたかった。たとえ、自分の風船が一個しか残っていなかったとしても。
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