今日お姫様始めました

りょう

第49話 今日家族始めました

第49話 今日家族始めました
1
産まれて来た子は女の子だった。俺とミッシエルはその子に『ハル』という名前をつけた。理由は、彼女を春風が運んで来たような気がしたからだ。くだらない理由だけど、俺達はそれがいいと即決した。女の子らしい名前だから、問題はないだろう。
「ねえユウさん」
「ん? 何だ?」
「私達は今日から家族になったんですよね?」
「ああ。俺達は今日から立派な家族だ」
『家族』
俺がこんな言葉を発する日がくるなんて、思ってもいなかった。でもそれはこれ以上にない幸せの言葉。これから大切にしていくべき言葉。
俺は今、最高に幸せなのかもしれない。
2
時と共に俺達家族は成長していく。
一ヶ月
「おっとっと」
「ちょっとユウさん、気をつけてください。ほら、赤ちゃんが泣き始めてしまいましたよ」
「わぁぁ、ごめんよぉ。パパがちゃんとしかっりしなくて。よしよし」
「ユウさんが、パパとか言うと気持ち悪いですね」
「それ本人を目の前に言わないでくれよ!」
半年
「どうや子育てのほうは?」
「あ、アルクさん。ほらハル、これがアルクさんだよ。すごく怖い人なんだよぉ」
「いらん事言うなや!」
「否定はしないんですね」
そして一年
「誕生日おめでとう、ハル!」
「おめでとう」
「って言っても、まだお前には言葉を理解出来ないか」
「それでもちゃんと私達の想いは伝わっていますよ」
「だな」
少しずつだけど、時間は進んで行く。
「姫、出撃や」
「何故それを俺に言う」
「? 何がおかしいんや?」
「いやいや、俺はもう姫じゃねえからな」
おかしな人達と、
「ゆ、ユウさん。今ハルが歩きましたよ!」
「見た見た」
「パバ」
「ん? 何だい…って、今お前俺をパパって…」
「良かったじゃないですか。パパって呼んでもらえて」
「ああ。すげえ嬉しいよ」
大切な家族と、この変わった国で…。
そして時は更に流れて、
「パパ抱っこ」
「ったくしょうがねえな、ほら」
「わーい」
ハルが産まれてから、六年が経った。
「なあミッシェル、今日は天気がいいし、どこか出かけようぜ」
「あ、それいいですね。でもどこに行きましょうか?」
「そうだな…」
この国には何気に名所が多いし、大体全部回った。ミッシェルも姫として色々やったりしてるから、しょっちゅう行く事は出来なかったが、それでも時間があればこうして出かけていた。
「そうだ。いい場所を思いついた」
「どこですか?」
「あの泉へ行こう」
そこは俺とミッシェルが初めてデート(?)した場所。あそこなら静かで、ゆっくり過ごせるだろうし。
「そうですね。私も賛成です」
「わーい、お出かけだぁ」
                                      続く

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