今日お姫様始めました

りょう

第45話 母と娘

     第45話 母と娘
1
俺達が知らない所でサラも戦っていた。未来を変えたいという気持ちとは裏腹に、今回の事は彼女を悩ませてしまったのかもしれない。ステラを生かせば、同じ未来を歩む事になるかもしれない、かと言って見殺しにしたくなかった。その二つの思いの中で、彼女は葛藤していたのかもしれない。それなのに俺は、彼女を責めてしまった。何にも知らないくせに俺は…。
「悪いサラ、俺お前の事何にも考えないで…」
「いいよ。何も言わなかった私も悪いもん。それに」
「それに?」
「私お兄ちゃん達に会えてすごく幸せだった。これで安心してこの世界から消えられる」
「消えるってお前、何を言って…」
そして俺は気づいてしまった。サラの体が消えかかっている事に気づいた。
「っ! サラちゃん、体が…」
「今日二人を呼んだのは、この事を話すためだったの。私はもう、居られないから…」
「居られないって、未来に戻るのか?」
「違うの。私は未来に戻る事すらできない…」
「何でだよ! お前は未来を変えたくてここに来たのに、戻らなくちゃ意味が…」
「いいの。 私の本当の目的は…」
もう声も聞こえなくなり始める。そんな、何でだよ…。彼女が未来に戻る事が出来ないなんて…。
『この世界に呼ばれた者は、もう戻る事ができない』
「まさかお前、戻れないのを知ってて…」
でも消えるなんておかしい。この世界に居続けられないなんて…。
「まさかお前…」
「ユウさん?」
俺は気づいてしまった。こんな残酷な運命があるのだろうか?
「お兄ちゃん…、気づいちゃったんだね…」
「馬鹿野郎! 何でこんな馬鹿な事をするなよ!」
「いいの……私幸せになれたから……だから……」
彼女を包んでいた光が消える。もうそこには、サラの姿はなかった。
2
「おい、嘘だろ…」
「サラちゃん! サラちゃん!」
涙が溢れ出す。こんな悲しい親子の話があるかよ。俺は本当に無力すぎる。
「こんなのありかよ…」
「ねえユウさん、サラちゃんは何で消えたの? ねえ何で?」
ミッシェルについイラっとしてしまう。何で気づかねえのかよ。
「分からないのか? サラは…ステラの…ステラの…」
「え? もしかして…」
「そうだよ! サラはステラの子供だったんだよ! あいつはもう一度家族を作ったんだよ。自分の幸せを再び手に入れるために。だけど、今回の戦いでステラが死んだ。これが何を示してるか分かるよな?」
「あ…」
「本来生まれるはずだったサラは、生まれなくなってしまう。未来を変えてしまった事によって、彼女は存在する事ができなくなったんだよ!」
「そんな…」
俺は大切な二人を、殺してしまったんだ。俺が世界に来なければ、捕まる事もなかった。戦いも起きなかった。平和なまま時間が進んだはずだったのに、俺は世界を変えてしまったんだ。俺が…。
「ユウさん?」
「ははっ、全部俺が悪いんだ。俺が…」
俺が悪いのか全部。
何で姫なんかやってんだ俺。
                                                         続く

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