今日お姫様始めました

りょう

第44話 避けられなかった未来

 第44話 避けられなかった未来
1
ステラの死から約二週間が経った頃、ようやく止まっていた時が動き出した。きっかけはミッシェルが俺の部屋を訪ねてきた事だった。
「ユウさん、ちょっと話をしたいので、外に散歩に行きませんか?」
「構わないけど、こんな時間から大丈夫か?」
外はすっかり真っ暗になっている。
「構いません。この国は寧ろ安全ですから」
「そっか…」
そうかもしれないな。
「で、何でお前も来てるんだ? サラ」
ミッシェルの後ろの小さな影に話しかける。勿論そこにいるのはサラだ。
「サラちゃんも私達に話があるんだって」
「話? 何か大切なことか?」
「うん…」
少し元気のない返事が返ってくる。やっぱり彼女も、ステラが亡くなった事にショックを受けているのだろう。でも何故だろう、違和感を感じる。そもそもサラは未来から来た人間だ。ならこいつ本当は…。
「どうしたんですか? ユウさん」
「あ、いや、何でもない。危なくなる前に行こうぜ」
「はい!」
2
夜の城下町は静かだった。この前の戦いで直接的な被害は受けていないが、まるで何事もなかったのように、ゆっくりと時間だけが進んでいた。
そんな中を俺達は三人並んで歩いている。
「それで、話ってのは何だよ」
一番最初に聞くべき人物に俺は話を振る。
「やっぱり私だよね?」
「ああ。お前に丁度聞きたい事もあったしな」
「私に聞きたい事?」
サラの質問に一拍開けた後、俺は口を開いた。
「なあサラ、お前本当はステラがどうなるか分かってたんじゃねえのか?」
「っ! えっとそれは…」
「なあサラ、答えてくれ! お前の住む未来ではステラは生きてたのか? なあ!」
「ユウさん! 落ち着いて下さい!」
「落ち着いてられるかよ。だって分かっていたらステラは…」
「ステラお姉ちゃんは、私のいる未来では既に亡くなっていました」
「だったら、回避する事だってできたんじゃねえのか?」
「そんなの無理だよ。だって私のいる未来は…」
「お前がいる未来は?」
「国に恨みを持ったステラさんが反乱を起こして、そのせいで滅びてしまった未来だもん!」
「え?」
ステラが反乱?
『私はこの国に恨みを持っていました。私から全てを奪ったこの国を』
そうか、俺達が止めなきゃステラは恨みを持ち続けた。それが、反乱を起こした。
「じゃ、じゃあどちらにせよ…」
「そう。 未来を守るにせよ、守らないにせよステラお姉ちゃんは…」
「そんな…」
結局何をやってもステラを助ける事が出来なかったって事だったのか。
「だから私にはどうする事もできなかった。戦いに行かせなくても、反乱を起こすかもしれなかったから…」
                                                                続く

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