今日お姫様始めました

りょう

第43話 幸せをくれてありがとう

第43話 幸せをくれてありがとう
1
ステラが撃たれたという知らせを聞いて、慌てて彼女の元へ向かった。
「ステラ!」
アルクさんに連れられてやって来たのは、丁度戦場のど真ん中。そこにステラは倒れていた。胸辺りは血で染まっており、既に彼女は息絶え絶えだった。
「姫…ミッシェルさん…ごめんなさい私…」
「いいから喋るな! 医者呼んできてやるから」
「さっき…来ました…もう…助からない…ようです…」
「そんな…」
嘘だろ? もう助からないだって。
「嫌ですよステラさん! 何で…何でそんな事言うんですか!」
ミッシェルが泣き叫ぶ。
「自分の…死ぐらい自分で…分かるんですよ」
「ステラ、頼むから諦めないでくれよ!」
「姫、そんな声だしたら、男だってばれちゃいますよ?」
「今はそんな事関係あるか!」
「もうすっかり…姫らしくなくなっちゃいましたね…」
「うるせえよ。この大馬鹿が!」
涙が止まらない。折角戦いが終わったのに、こんなのってありかよ!
「ステラさぁん…」
「もう、泣き虫ですね。ミッシェルさんは…」
「だって…だって…」
ステラが優しくミッシェルの頬を撫でる。本当お母さんみたいだ。
「私…二人と一緒に明るい未来を歩めないようですね…ごめんなさい…」
「こんな時に謝るなんて、お前は本当に大馬鹿だよ…カステラ…」
「そのあだ名…久々に聞きましたよ…」
「散々お前は否定していたけどな」
「そうでしたっけ…?」
人が死にそうだってのに何を話してんだよ俺は! これじゃあまるで、もう覚悟したみたいじゃねえか。
「姫…ミッシェルさん…私あなた達に会えて…幸せでした…。あなた達ならきっと、明るい未来を掴めます…だから最後に一言…」
「最後なんて言わないで下さいよ、ステラさん!」
「私に…幸せをくれてありがとう……」
最後にそれだけを言ったステラは瞳を閉じ、そしてミッシェルの頬にかかっていた手が、力をなくしてゆっくりと落ちていった…。
2
あれから一週間が経った。俺もミッシェルもステラを失ったショックから立ち直れず、ずっと部屋にこもっていた。
「誰も失わずに終えられると思ったのに…何で…何でステラだけが……」
こんな結末を誰が望んだんだ。こんな悲しい結末を。
「ちくしょぉぉ!」
俺は叫んだ。どんなに嘆いても意味がないと分かっているのに、ステラが戻ってこないと分かっているのに。
「何なんだよ! 」
何かに怒りをぶつけたいが、そんなの何の意味もなさない。だからただ叫ぶ事しかできないんだ。情けねえよ俺。
ステラ…。
俺、お前も守れなくてごめんな…。
                                                              続く

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