今日お姫様始めました

りょう

第42話 君を離さない

     第42話 君を離さない
1
「終わった…か?」
ミッシェルに一発かました俺は、既に立つことすらできずに、その場に座り込んでしまった。
「うぅっ…まだ…終わってない」
しかしミッシェルは再び立ち上がった。駄目なのか、俺には彼女を止めることは出来ないのか?
立ち上がったミッシェルは、フラフラになりながらこっちにやって来る。
「わたしは…ゆうさんを…助けたい…」
「馬鹿、お前が探しているのは俺だ! 目を覚ましてよく見ろ!」
「え…?」
再びミッシェルの足が止まる。
「ゆう…さん?」
「そうだ。俺はユウだ。本名は違うけど、お前が探しているのは俺だ! だから目を覚ましてくれミッシェル!」
コトン
ミッシェルの手からあの刀が落ち、虚ろだった目に光が灯る。どうやらお目覚めらしい。
「ユウさん…私、何をして…」
「やっと目が覚めたかミッシェル」
さっきまでのミッシェルとは違い、いつものようにオドオドしたミッシェルに戻っている。
「目覚めたって私…」
「お前はさっきまで鬼の力を使って暴走していた。それを俺が目覚めさせてやったの」
「鬼の力を…使った?」
「ああ。大暴走してたけどな」
「うそ…わたし…」
「嘘じゃねえ。お前はその力を使って、そこの兵士やマルーシャを倒したんだよ!」
「嫌…何で…私…」
フラフラしながら、屋上の端へ移動していくミッシェル。あの馬鹿、まさか…。
「私は…やっぱり鬼でしかないんだ…だったら死んだ方が…」
そう言ってミッシェルは、身を投げようとする。
ガシッ
「馬鹿野郎が!」
勿論俺はそれを阻止する。
「ユウさん、離して下さい!」
必死に手を振りほどこうとするが、そうはさせない。
「離すかよ! 絶対に!」
「どうしてですか? 私はやっぱり鬼でしかないんですよ! そんな私に生きる価値なんかない!」
「あるに決まってんだろ!」
「な、何で…」
俺は彼女を抱きしめた。これでもう落ちることはないだろう。
「俺がお前のことを好きだからだよ。言っただろ? 俺は命を張ってでもお前を守るって」
「ユウ…さん…」
肩に温かなものがかかる。
「私…生きていいんですか?」
「ああ。でなきゃ俺はこんなことしない」
「うぅっ…」
それは大粒になり、肩はすっかりビショビショになっているが、気にしない。
「結婚しようミッシェル。俺はお前を絶対に守ってやるから。どんなお前でも」
「はい…」
こうして、ラビダス軍との戦いは、ミッシェルの暴走によって幕を閉じた。
「大変や姫、ミッシェル! ステラが…」
はずだった。
                                       続く

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