今日お姫様始めました

りょう

第1話 勇者として呼ばれたかった

         『今日お姫様始めました』
第1話 勇者として呼ばれたかった

昔はよく勇者に憧れたものだ。
普段と変わらない日常を過ごしていた主人公が、突然異世界に呼ばれて勇者になって世界を救ってって頼まれ、出会いや別れを繰り返して成長して行くあの姿。そして最終決戦で見せるあの勇姿。
俺もいつかはなれないかなって、よく思ったものだ。
可愛い姫や数々の強敵、俺にはどれもが輝かしくて…。
いつかは叶うかなって思っていた。
そして今日、その夢が叶った。
俺は突然異世界に呼ばれたのだ。目が覚めたら見知らぬ場所、目の前には見知らぬ女性…じゃなくて、男性。この国の王から渡された物は剣や盾…ではなく、無駄に豪華なドレス。
王は俺に言う。
「お主にはこれから勇者になってもらい、この世界を救ってもらう」
……ではなく、
「お主にはこれからこの国の姫になってもらい、この世界を救ってもらう」
ん? 何か変ではないか?
「あ、あの、王様?」
「何だ?」
「俺男ですよ?」
「分かっておる。だから頼んだのだ」
「いやいや、色々間違っているような気がするんですが」
「なに、気にする事はない」
「いやそこは一番気にするところでしょう」
おいおい、何だよこれ。俺に勇者ではなく国の姫になれって、色々変だろうが。
「すいません、帰らせてください」
「それは無理な願いじゃ」
「何でですか?」
こんな世界、早く出たいのに!
「一度呼び出したものは、一生戻れないとこの本に書かれてるからじゃ」
「なっ…何だってぇぇ」
つまり俺は、この世界に一生姫として生活し続けろと。
「この世界の事情に関しては、後でお主のメイドになるステラにでも聞いてくれ。わしは部屋に戻って寝る」
「って、おい俺は一言もオーケーなんて言ってないぞ!」
俺の言葉を聞く前に王はどこかへ行ってしまった。
な、何てこった。勇者どころか男としてすら居られないのか俺は。最悪だ…
「あ、あの…」
一人絶望していると、メイド服を着た一人の女性が話しかけてきた。こいつが王が言っていたステラだろうか?
「何だよ」
「と、とりあえずドレス着ましょうか」
「着るか!」
                                         続く

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