天井裏のウロボロス

夙多史

Section6-4 無限の力

「ウロッ!?」
 グリフォンの魔力の異様な高まりに空を見上げた紘也は、そこで目撃した光景を数秒間信じられなかった。
 四体のドラゴンが一体のグリフォンに手も足も出せなかったのだ。
 正確にはウロボロスが一撃与えている。が、そのウロボロスはたった今紘也の見ている先でグリフォンに真っ二つに引き裂かれ、消し飛ばされた――ように見えた。
 ――冗談だろ? 規格外過ぎるぞ。
 青白い鬣を靡かせる鷲獅子の超然とした雄姿に、紘也は戦慄せざるを得なかった。
 ――……ウロ。
 ウロがまだ生きていることは魔力のリンクからわかる。もはや原子レベルまで分解された状態から〝再生〟しても驚かない紘也だが、果たしてそこにどのくらいの時間を要するかがわからない。下手をすれば紘也たちは全滅だ。
「く……私が人化を解いて」
「だ、ダメですヴィーヴル。その体で人化を解けばすぐ消滅してしまいます」
《この程度……吾の〝霊威〟を破ったあの術式に比べればなんでもない》
 ヴィーヴルもウェルシュもヤマタノオロチですら満身創痍である。グリフォンも傷を負っているが、それでもあの圧倒的な力を見せつけられては敵う気がしない。
「……どうすればいいんだ」
 紘也にできることは残りの魔力を契約幻獣たちに渡すことくらいだ。ウロに流しても意味があるかはわからないけれど、それでも〝再生〟が早まるかもしれない。
 ――ウロ、早く戻ってこい!
 魔力を流す。
 流す。流す。流す。
 ウロだけじゃなく、ウェルシュとヤマタノオロチにも紘也は魔力を配分している。ヴィーヴルは紘也の契約幻獣じゃないから無理だが、それは寧ろ幸いだった。
 もしこのペースで四体のドラゴン族に魔力を流し続けていたら、紘也は魔力が枯渇するしないに関わらずとっくにぶっ倒れていたのだから。
 ちらりと、白い粒子が視界の端にちらつく。
 まただ。さっきから紘也が魔力を流せば流すほど、白い粒子の舞う頻度が増えている気がする。
 ――なんなんだ? いや、今は関係ない。
 とにかく魔力を。ウロに。ウェルシュに。ヤマタノオロチに。
「なにをしているのやめなさい秋幡紘也!」
 香雅里が紘也の肩を強く掴んだ。紘也が魔力を幻獣たちに流し続けていることに気づいたらしい。
「あなたさっきもヤマタノオロチに与えたのよ! これ以上は体が保たないわ!」
「人間は魔力を失っても死なない。だったら今渡せるだけ渡した方がいいだろ!」
「もうフラフラじゃない! 私が戦うからあなたは下がってて!」
「それこそ無茶だ」
 あのグリフォンは人間にどうこうできるレベルじゃない。いや大魔術師の父親ならなんとかしてしまいそうな気もするが、生憎とここにはいない存在だ。宛てにならない。
 他に戦えるのは…………ユニコーンと目が会った。
「あ、俺様、旦那と戦り合う気ねえから。勝てない戦するくらいなら愛沙ちゃんと香雅里ちゃん連れて逃げるぜ、俺様は」
 プライドの高いグリフォンに対し、こっちは潔過ぎる。いっそ愛沙だけでもユニコーンに逃がしてもらった方がいいかもしれないが、たぶん、それは愛沙が頑なに拒むだろう。
 バサリ。
 羽ばたきの音が聞こえた。見ると、丁度グリフォンが際議場の中央に舞い降りたところだった。
 その巨体が光に包まれ、再び人間の――青白い髪を逆立てた青年の姿に戻る。
 ――人化した?
 やはりグリフォンも、この世界で元の姿に戻ることは相当なリスクがあるらしい。肩で息をし、少しよろめいた。
 だが、それでも紘也たちを見下すような嘲笑は消えていなかった。
「遊びは終いだ。そろそろ貴様らとの戯れには飽いた」
 ゴォオオオ、と。
 魔力を含んだ不自然な風がグリフォンを取り巻く。冷酷で、無慈悲で、淡々とした殺意。それだけにグリフォンは容赦も躊躇もなく紘也たちを皆殺しにするだろう。
「秋幡紘也! あなたは鷺嶋さんとこの島から逃げなさい!」
 言いつけるや、刀を構えた香雅里は無謀にもグリフォンに突貫した。
「ばっ、やめろ葛木!?」
 せめて一矢報いるとばかりに疾走する香雅里に紘也の声など届かない。彼女は風を突っ切り、グリフォンに冷気を纏った刃を振り下ろす。瞬速の一撃だったが、グリフォンはなんでもないようにゆるりとかわした。
「弁えろ。人間ごとき虫ケラの牙が俺に届くと思うな」
 と、グリフォンの右腕が鷲のそれに変化した。部分的に人化を解いたのだ。
「まずは貴様から死ね」
「くっ」
 鋭い鷲爪が香雅里の首に迫る。一瞬後、首を捥ぎ取られた香雅里の体が真っ赤な液体を盛大に撒き散らす――ことはなかった。
《退け。陰陽師の雌。己が足掻いたところで時間稼ぎにもならん》
 ぎりぎりで割って入ったヤマタノオロチが〝霊威〟を纏った体で香雅里の盾になったのだ。
「ヤマタノオロチ、あなた……」
《これは貸しだぞ。陰陽師の雌》
 ヤマタノオロチは〝霊威〟の衝撃を放ってグリフォンを遠ざける。さらにそこへ水を繰って追撃。だがその水流に先程までの威力はなく、グリフォンはつまらなそうに回避した。
 比較的まだ戦えるヤマタノオロチに魔力を割くべきか。
 ――いや、それよりも。
「ウェルシュ! 人化を解け!」
 紘也はウェルシュに向かって叫んだ。よくわからん理屈で人化を解きたがらない紘也の契約幻獣たちだが、今はそんなこと言っている場合ではないのだ。ほとんど紘也の魔力で賄っているヤマタノオロチは無理だが、自分自身の魔力も持っているウェルシュなら幻獣としての姿で戦える。
「ですが、マスター」
「俺のことは気にしなくていい! 魔力はまだなくならない!」
 そう、父親譲りの膨大な魔力は未だ底知れない。だからそこを心配する必要はない。紘也の体がついて行けるかだけが問題だ。
 ウェルシュもそこは理解していると思うが、それ以上はなにも言わず頷く。
「……了解しまし――」

「いいえ、その必要はありませんよ!」

 どこからともなく、その声は聞こえてきた。
 次の瞬間、ヤマタノオロチと交戦していたグリフォンが横向きに吹っ飛ばされた。砲弾と化したグリフォンはその身で石柱を砕いて際議場の外まで投げ出される。
「ウロ!」
 グリフォンを吹き飛ばしたのは言うまでもない。先程引き裂かれて粉々にされたはずのウロボロスだった。彼女の体に傷は一切なく、衣服まで完全に元通りになっている。
「貴様、もう〝再生〟したのか」
 際議場の外からグリフォンが舞い戻ってくる。呼吸は乱れていたが、それは人化を解いた影響で今の一撃は大したダメージではなさそうに見えた。
「ふふん、紘也くんの魔力のおかげで一瞬でしたよ。いやぁ、紘也くんの愛を感じましたね。キスした甲斐があったってもんです。てことであたしも〝永遠〟に愛することをここに誓いますね紘也くん!」
「こっちじゃなく敵を見ろ敵を!」
 んむちゅっと気持ち悪く投げキッスなんてしてくるウロから紘也はとりあえず視線を外した。思い出してしまったら直視できない。こんな時なのに頬が赤くなっている気がする。あとウェルシュが「キス……」と呟いたままフリーズしているが、あれはどうすれば再起動するのだろうか?
「それとまあ、ちょっと早めに〝再生〟できるように裏技を使いました。後が面倒ですけど、ぶっちゃけそうしないとあんたを処刑できそうになかったですし」
 意地の悪い笑みでニヤニヤと口元を歪ませるウロ。とても意味深だったが、グリフォンは特に動じることなく泰然と返す。
「なにをしたか知らんが、変わったようには見えんな」
 そこは紘也も同意見だった。事実、ウロは外見も魔力も変わっていない。どこがどう変化したのか契約者たる紘也ですら見分けがつかないのだ。
 ――ただのハッタリか?
 そう思った紘也だが、すぐにそうじゃないことを嫌でも理解することになった。
「まあ、一個体のあたし・・・・・・・としてはなにが変わったわけでもないですが――」
 ガシッと、グリフォンの背後に出現したウロが逆立った青髪の後頭部を鷲掴んだのだ。

 二人目のウロが・・・・・・・

「「「は?」」」
 複数の声が重なった。グリフォンや紘也はもちろん、当人以外の全員が同じように呆けた表情で口を開けている。
「あんたをぶっ殺すためにちょっと増えてみました!」
 二人目のウロが言いながら鷲掴んだグリフォンを顔面から地面に叩きつけた。凄まじい破壊音と共に地面が大きく円形に陥没する。
「なはっ!?」
 クレーターの中心でグリフォンが吐血した。そこに一人目のウロも加わり、二人して魔力弾を次々と連射。爆光と土煙が視界を完全に埋め尽くす。
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラッ!!」
「どうしたんですか? なんとかしないと〝無限〟に続きますよ!」
 二人のウロは嗜虐的に笑いながら光弾の雨を降らし続ける。だがその程度で動けなくなるグリフォンなら苦戦はしていない。光弾の雨を強引に押し退けて突破してくる。
「分裂とは驚いたな!」
「あんたがあたしを粉々にしてくれたおかげですけどね!」
「あそこまでされたら別々に〝再生〟した方が早いんですよ!」
「だが二分割した程度で王たる俺は倒せんぞ!」
「誰が二分割って言いました?」
「なに――がっ!?」
 二人のウロ相手に空中で激しく格闘していたグリフォンの後頭部に、空間から現れた三人目・・・が膝蹴りを喰らわせた。
「馬鹿な……」
 頭を押さえ、〝勇猛〟のグリフォンが悪夢でも見るように瞠目している。ただでさえ悪夢的チート能力に溢れたウロボロスが三人になってしまえば紘也だって頭が痛い。増えても魔力のリンクは一つだから、三人で一人という計算になるのか。自分でもなにを真剣に考えているのかわからない紘也だった。
「「「さてさて、このウロボロスさん三人衆相手に何秒持ちますかね?」」」
「くだらん!」
 グリフォンは腕を振るって三人のウロを風で薙ぎ飛ばした。
「三度奇襲に成功した程度でいい気になるな! たとえまだ増えようともこれ以上は不覚など取らんぞ! 下の連中共々、纏めて地獄まで吹き飛ばしてやろう!」
 グリフォンがさらに上昇する。その魔力が急速に高まり、上空に巨大な風の渦が発生した。青白いプラズマが迸り、風の渦は島全域を呑み込む勢いでさらに拡大していく。
 あまりにも、でかい。
「あのクソ鳥、本気でグリフォンの枠から外れてやがるよ。普通天災レベルの風魔術なんて上位精霊以上じゃないと使えねえっての。くそがっ」
 冷や汗を垂らしながらヴィーヴルが吐き捨てた。ウェルシュもハッと我に返ったようで、空を見上げて無表情を少し厳しくする。
「ありゃやべえな。愛沙ちゃん、できるだけ遠くに逃げっからしっかり俺様に掴まってな」
「ダメだよ、ユニコーンさん。わたしだけ逃げるなんてできないよぅ。わたしは足手纏いだけど、ヒロくんたちと一緒に最後まで見届けたいから」
「ぐ……女の子が覚悟決めてちゃ、俺様だけトンズラすんのはかっこ悪ぃな」
 離れた場所にいる愛沙とユニコーンも脱出は選択肢から消えたらしい。そもそも今から逃げようとしても間に合わない規模だ。
《己ら! もっと吾の近くに寄れ! できるだけ〝霊威〟で守ってやらんこともない!》
「秋幡紘也! 鷺嶋さん! 早くこっちへ!」
 ヤマタノオロチと香雅里が皆を呼ぶ。透明だから気のせいかもしれないが、彼女たちの周囲に薄らと〝霊威〟の結界らしきものが見えた。
「……ウロ、負けんなよ」
 空に浮かぶ三人のウロを見上げ、聞こえないほどの声で呟き、紘也はヤマタノオロチの下へと走った。

        ∞

「ええ、負けるもんですか」
 紘也の声が聞こえたわけではなかったが、なんとなくそう言われたような気がしてウロボロスは上空のグリフォンを睨んだ。
 三人に分裂したウロボロスは別に意識を共有しているわけではない。一人に戻ってそれぞれの記憶が混ざり合うまで分裂体がなにをしてなにを考えていたかはわからないのだ。
 だがそれでも、全部がウロボロス本人である。
 チームワークなど改めて確認する必要なんてない。グリフォンを屠る算段は分裂した時点でとっくに決定している。
 至ってシンプルに。
 それでいて一撃に全てを込められる方法を。
「所詮、貴様のそれは力を三つに分けた雑魚に過ぎん! これを防げるものなら防いでみるがいい!」
 渦巻く風とプラズマを背にグリフォンが告げた。あの風にも〝王威〟は練り込まれている。まともに受ければウロボロスとて無事では済まないかもしれない。
 だが、あんなのはただでかいだけである。
「力を三つに分けた?」
「あの鳥頭さんはなにか勘違いしてるみたいですね」
「知らないなら教えて上げますよ」
「なんだと?」
 怪訝に眉を曇らせるグリフォンへ、ウロボロス三人は一斉に右の掌を翳す。それぞれがそれぞれで底のない膨大な魔力を練り上げ、光線として撃ち放つ。

「「「〝無限〟はいくつで割っても〝無限〟なんですよ!!」」」

「――っ」
 分裂する前と変わらない威力の魔力光にグリフォンの表情が歪んだ。恐ろしさからではなく、鬱陶しさと面倒臭さから来たような歪みだった。
「ふざけるな! 貴様のお遊びにこれ以上付き合うつもりはない!」
 グリフォンは猛禽類の翼を大きく広げて腕を振るう。すると上空の渦が中心部から突出し、なにもかもを喰らい尽くす竜巻の槍となって降りかかる。
「島諸共に消し飛べ!」
 三条の魔力光が竜巻の槍と衝突し、巻き込まれ、一秒と保たずに消滅する。
 だがもちろん、本命はそれじゃない。
「遊びじゃないですよ」
「〝無限〟になにを掛けても〝無限〟ですが」
「その〝無限〟の力を溜める速度は三倍になるんです!」
 魔力光を放射しなかった方の手。
 そちらではウロボロス三人の魔力を一つに収束させていた。
 三人それぞれで練られ、高められた魔力を一点に集中し、炸裂した時の爆発力を何倍にも増幅させるためひたすらに圧縮する。

 圧縮。
 圧縮。圧縮。
 圧縮。圧縮。圧縮。
 圧縮。圧縮。圧縮。圧縮。
 圧縮。圧縮。圧縮。圧縮。圧縮。
 圧縮。圧縮。圧縮。圧縮。圧縮。圧縮。
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 その果てにでき上がったのは、ビー玉サイズしかない小さな光の球だった。
「「「消し飛ぶのはあんただけで充分なんですよっ!!」」」
 ビー玉サイズの光弾が目にも留まらぬ速度で撃ち出される。それは迫り来る竜巻の槍の切っ先に触れ――

 空一面を真っ白に塗り潰すほどの大爆発を引き起こした。

 拮抗はない。グリフォンの放った竜巻の槍は規模に似合わず呆気なく光に呑まれた。
「なん……」
 避ける場所などなく巻き込まれたグリフォンは、それでも爆光の中で抵抗していた。
「王たる俺が、こんなところでこんなふざけた奴に敗れるものかッ!?」
 爆発の威力はなおも続いている。まるでグリフォンが消滅するまで〝永遠〟に苦しめる地獄のように。
「足掻けば足掻くほど無様ですよ。潔いのも王じゃあないんですか?」
「く……そ……」
 およそ生物など生きていられない光と熱と衝撃は、グリフォンが纏う防御の風を恐ろしい速度で蝕んでいく。
「俺は! 俺は負けるわけには」
 そしてついに、グリフォンの風の防護は完全に光に喰われた。

「く、そ、がぁあああああああああああああああああああああああああああッッッ!?」

 悔しみに満ちた断末魔の絶叫は、白く染まった空に痛々しく響き渡った。
 魔力の光が消えた後、ウロボロスはグリフォンがいた場所を見上げながらぽつりと呟く。
「敗北を知らず粋がるだけのクソガキが、王になんてなれるわけねえんですよ」
 その一言は、三人の内誰が言ったのかウロボロス自身にもわかっていなかった。

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