転生ヒロイン、今日もフラグを折るために奮闘する
貴族子息、それぞれの捉えかたの違い
筍が自生しているところをみた面々は、言葉を失っていた。
まさか、うっそうとした竹林の土を掘れば出てくるとは思っていなかったのだ。
元々この竹林、燕の国から贈られてきたもので、一時は貴族の館で植えるというのが流行った。
今では下火になっており、植えている貴族は少ない。
「アーデ姉ちゃん! これは!?」
「それ駄目。もう大きくなってる。食べると固いよ」
「ヤダ」
「ブラム、ここ掘ってみな」
そう言ってアーデルヘイトは、ブラムと呼ばれた少年に指示を出し掘り方を教えていく。
「うおぉぉぉ!! これが筍!!」
「そ。灰汁抜きしないといけないから、あと二つほど取ったらおしまい。セースは院長先生の手伝いをして竹伐採して」
「ほいほーい」
もう一人の子供も素直に従っている。
「……で、先輩方? いつまでぼさっと立ってるつもりですか?」
とどのつまりは筍掘りを手伝えということだ。
ロビンは嬉々として手伝うつもりでいるようだが、アンドリースは土にまみれることに躊躇していた。
「ヴィッテリック先輩! それじゃ筍傷つけます! 食べれなくなりますよ!!」
「じゃあ、どうしたらいいの!?」
「これは……こうしてですね……」
「なるほど。でも燕の国から輸入された筍と全く違う!」
「……灰汁抜きして輸入されてるんでしょう。採りすぎると生えなくなるみたいなので、一月で三本が限度です」
「そうか! いいことを聞いたよ! 実家の領地に大きくなりすぎた竹林があって、父上もどうしようか悩ませていたんだ」
「……あ~~。竹林は広がりますからねぇ。こうやって手入れが必要なんです」
「だからヤン先生は少し伐採してるのか」
ロビンが感心したように言う。
いつの間にかロビンだけが馴染んでいた。
「ヤン先生! 父上が了承したらここを出た子供たち数人を竹林の管理人に雇いたいです!」
「……それは筍のためかな?」
「それもありますけど、あなたの伐り方は何かに使う為のものですから」
「さすがお父上譲りの観察力だ。
その通りだよ。ただそれをされると孤児院の収益に関わってきてしまう」
それを聞いたロビンが悔しそうに顔を歪めた。
「……やはり母上の慈善事業は形だけですか」
「何もあなたの母上だけではない。貴族のほとんどが、と言っておこう」
ヤンの言葉は、アンドリースたちをも驚かせた。
「何だ、ドミニクス先輩もご存知なかったんですか? 僕は母上の動きからそうだろうなと思っただけですけど」
「知っていてここに来れるというのが素晴らしいね」
「そんなことよりも筍です! どうやったらあの姿になるのですか!?」
「貴族の兄ちゃん、そっち!?」
「そっちの方が優先!
母上の慈善事業が間違っているってのはここで半ば確定下のようなものだ。父上に報告しよう」
さらりと優先事項を筍に戻したロビンが、子供たちと一緒に筍を持って行く。
「……面白い子だねぇ。アーデ」
「あの方、料理が趣味みたいです」
さらりとアーデルヘイトも言う。
「ははは。じゃあ早速灰汁抜きしないとね」
ヤンが竹を担いで歩き出す。それを当たり前のようにアーデルヘイトが手伝っていた。
「私も手伝おう」
ドミニクスがそう言い、結局アンドリースも手伝う羽目になった。
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